日本時間3/16(木)の未明にFOMC(米連邦公開市場委員会)の結果が発表されて以降、日経平均株価は下落気味の展開となっています。2017年の米政策金利は4回引き上げられるとの見方が後退し、円高・ドル安が進んだことが要因です。
しかし、テクニカル的にみると日経平均株価の下げは一巡している可能性もありそうです。今後、米国の金利に対する強気な見方が回復し、我が国の企業業績の拡大を織り込む流れが強まれば、日経平均株価は上昇に転じる可能性もあります。であれば、今は押し目買いチャンスと言えるかもしれません。
FOMC後の円高が逆風に |
日経平均株価は3/13(月)に終値ベースで年初来高値を更新しました。日本時間3/16(木)未明に結果発表が予定されていた米FOMCで、2017年における年4回の利上げが示唆される可能性があるとの見方から、米長期金利が上昇し、円安・ドル高が進んだことが背景です。図2に示されたように3/14(火)には米10年国債の利回りが2.629%まで上昇し、外為市場(図3)では一時1ドル115円前後まで円安・ドル高が進んでいました。
その後、米FOMCでは市場の予想通り、政策金利の上限が0.75%から1.00%に引き上げられたものの、イエレン議長の発言からも、そしてFOMCメンバーの金利見通しからも、「年4回利上げ説」は否定されたと理解され、米長期金利は低下に転じ、外為市場の流れも円高・ドル安に転じてしまいました。これを嫌気する形で東京株式市場は売り優勢の展開となり、日経平均株価は下落に転じました。3連休明け後の3/21(火)には、ドル・円相場が一時112円台前半まで円高・ドル安となったこともあり、日経平均株価は25日移動平均線を割り込む場面も見られました。
なお、米FOMCの結果が発表された3/16には、EU(欧州連合)が解体への道を進むのか、世界的なポピュリズム(大衆迎合主義)の動きが加速するのか等を占う意味で注目視されていたオランダ議会選挙の結果発表では、極右勢力の自由党が敗退するという結果となりました。また、同じ日の昼頃には日銀金融政策決定会合の結果が発表され、市場の予想通り、金融政策の現状維持が発表されました。このように、重要日程を相次いで消化し「一安心」となった形の東京株式市場でしたが、前項で述べた円高・ドル安という逆風を跳ね返す程の好材料にはなりませんでした。
図1:日経平均株価(日足)〜押し目買いチャンス到来か!?
- ※当社チャートツールもとにSBI証券が作成。データは2017/3/21取引時間中。
図2:米10年国債利回り(日足)・過去3ヵ月
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2017/3/20(現地時間)現在。
図3:ドル・円相場(日足)・過去3ヵ月
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2017/3/21取引時間中。
当面のタイムスケジュール〜いよいよ年度末が意識される局面に |
前項でもご説明したように、日本時間の3/16(木)はまさに重要日程が目白押しでした。それに比較すると、今後3月末くらいまでは、株式相場に大きな影響を及ぼす日程は見当たらないのが現実です。ただ、中古住宅販売(3/22)や耐久財受注(3/24)など今後の米国経済を占う意味で重要な経済指標の発表はあるので、注意は必要です。また、イエレンFRB議長の講演(3/23)については、今後の米金融政策に対する見方に微妙な変化を生み出す可能性があり、やはり注意が必要です。
こうした中、3/28(火)には3月末を決算とする企業の「権利付最終日」を迎えることになります。配当取りはもちろん、最近は株主優待が個人投資家に人気となっていることもあり、権利取りを目指した「駆け込み需要」的な動きが出る可能性も残るので、個別銘柄ごとの需給の変化にも注意が必要です。2016年は「権利落ち」の日から7営業日続落していますが、その反動安にも配慮する必要がありそうです。
なお、3/25(土)は1957年に「ローマ条約」が調印されてから60周年の記念日となります。ローマ条約によって誕生したEEC(欧州経済共同体)がマーストリヒト条約を経てEU(欧州連合)へと発展していきました。その60周年の年に、脱EUを画策する動きが増えるというのは非常に皮肉な話ですが、そもそも現在のEUは2度と戦争を起こさないという欧州の人々の思いによって誕生したものであり、この記念日はそれを想起するひとつの契機になりそうです。
表1:当面の重要なタイムスケジュール〜米経済指標の発表に注意
月日(曜日) |
国・地域 |
予定内容 |
ポイント |
---|---|---|---|
3/22(水) | 日本 | 2月貿易統計 | |
日本 | 日銀会合(1/31発表分)議事要旨 | ||
米国 | 1月FHFA住宅価格指数 | 米国連邦住宅金融庁から発表。信用度の高い物件が多め | |
米国 | 2月中古住宅販売件数 | コンセンサスは前月比-1.8% | |
3/23(木) | 米国 | 2月新築住宅販売件数 | コンセンサスは前月比+0.9% |
米国 | イエレンFRB議長が講演 | ||
3/24(金) | 米国 | 2月耐久財受注 | 米民間設備投資の先行指標 |
3/25(土) | 欧州 | EU首脳会議 | ローマ条約調印60周年 |
3/27(月) | 日本 | 日銀会合「おもな意見」(3/16分) | |
ドイツ | 3月IFO企業景況感指数 | 約7千社のドイツ企業に現況と今後6ヵ月の先行きをアンケート | |
3/28(火) | 日本 | 3月決算銘柄権利付最終日 | |
米国 | 1月S&PケースシラーCS住宅価格指数 | 12月は前年同月比5.6%上昇 | |
3/29(水) | 米国 | 2月中古住宅販売仮契約 | 中古住宅販売の先行指標 |
3/30(木) | 米国 | 10〜12月GDP確報値 | 改定値は前期比(年率)+1.9% |
3/31(金) | 日本 | 2月失業率・有効求人倍率 | 1月はそれぞれ3.0%、1.43倍 |
日本 | 2月全国消費者物価指数 | 1月は生鮮食品を除き前年同月比+0.1% | |
日本 | 3月東京消費者物価 | 2月は生鮮食品を除き前年同月比-0.3% | |
日本 | 2月鉱工業生産速報 | 1月は前月比0.4%減 | |
中国 | 製造業PMI | 2月は51.6 |
表2:日米欧中央銀行会議の結果発表予定日(2017年以降)
2017年 | |
---|---|
日銀金融政策決定会合 | 4/27(木)、6/16(金)、7/20(木)、9/21(木)、10/31(火)、12/21(木) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 5/3(水)、6/14(水)、7/26(水)、9/20(水)、11/1(水)、12/13(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 4/27(木)、6/8(木)、7/20(木)、9/7(木)、10/26(木)、12/14(木) |
※各種報道、日米欧中銀Webサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合がありますので、あくまでもデータ作成段階のものです。なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しました。日付は現地時間を基準に記載しています。
【ココがPOINT!】押し目買いチャンス到来か!? |
力強さにかける日経平均株価の動きですが、冒頭の図1のチャートをご覧いいただくとおわかりいただけるように、3/21(火)には一時25日移動平均線に接触する水準まで下げています。また取引時間中の安値は3/9(木)の高値19,350円を下回る水準になっており、テクニカル分析上は「窓埋め」形になっています。日経平均株価は短期的な調整が一巡している可能性もありそうです。
なお、足元は円高・ドル安傾向が株価の逆風になっていますが、図4のドル・円相場(週足)の一目均衡表が示すように、クモの上限が1ドル111円台半ばにあり、円高・ドル安方向に対して分厚い支持ラインになっているように見受けられます。そもそも、FOMCの年内利上げに対する見方が4回から3回に「下方修正」されただけで、米金融政策の方向性が利上げであることに変化はないと考えられます。当面は緩和的金融政策を指向している日銀とは、そもそも金融政策の方向感が異なると思います。円高・ドル安は長く続かないと考えるのが妥当でしょう。
今回のFOMCを経て、FOMCメンバーの2017年末予想政策金利水準は、中央値では「年3回利上げ」が「想定ラインですが、加重平均でみるとわずかながら上昇しています。FOMCメンバーの金利見通しが弱くなった訳ではないと考えられます。今後の米経済指標やFOMCメンバーの発言を経て再び年4回利上げ説が復活する可能性も十分あり、ドル・円相場は円安・ドル高方向に反転する可能性もあるとみられます。
少なくとも為替相場が落ち着けば、今後は来期拡大予想の企業業績にスポットが当たり、それを株価が織り込みにいく可能性が大きいとみられます。年度末にかけて日経平均株価が20,000円大台をクリアする可能性はまだ残っており、現在は押し目買いチャンスと言えるかもしれません。
図4:ドル・円相場(週足)・一目均衡表〜円高方向に分厚い支持ライン
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2017/3/21取引時間中。
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