3月第3週に入り、日経平均株価は昨年来高値を更新してきました。米雇用関連指標の好調を背景に、米長期金利が上昇し、円安・ドル高が進んできたことが要因と考えられます。しかし、高値更新後は揉み合いに転じています。FOMCの結果発表やオランダの議会選挙等、重要日程が控えていることから様子見気分が強まっているためです。
ただ、これらの重要日程を境に株式市場が波乱になる可能性は小さいように思われます。3月後半の日経平均株価は上放れとなり、20,000円大台を目指す可能性が大きいと「225の『ココがPOINT!』」では予想しています。
上放れ直前? |
日経平均株価は3/2(木)に取引時間中ベースで、昨年来高値となる19,668円01銭まで上昇しました。しかし、その後は3/8(水)の19,198円78銭まで下落しました。米国時間3/15(水)に結果発表となる米FOMC(米連邦公開市場委員会)での利上げは織り込み済みとの見方が有力となり、3/10(金)の米雇用統計発表に向けて様子を見たいという空気が広がりました。東証一部の売買代金は3/6(月)に1兆7千億円台まで減少しました。
米国では「FRB(米連邦準備制度理事会)は2017年に、0.25%ずつ年3回の利上げを実施する」との見方が有力になっています。仮に3/15に結果発表のFOMCで利上げが決定されても、FRBによる年3回の利上げシナリオについて変化はないというのが株式市場の考え方のようです。ただ、債券市場の考え方は違うのかもしれません。図2に示した米10年国債利回りは2/24(金)の2.310%をボトムに上昇に転じ、3/13(月)には2.622%と12/15(木)以来の高水準まで上昇しました。米国の利上げが年3回以上になる可能性を静かに織り込み始めているのかもしれません。
米債券市場の見方を裏付けるように、3/8(水)に発表された米国のADP雇用統計(2月)では、雇用者数が前月比29.8万人増と2014/4以来の高い伸びを示しました。また3/10(金)に発表された米雇用統計(2月)では非農業部門雇用者数が前月比23.5万人増となり、事前予想(20万人増)を大幅に上回りました。こうした労働市場の強い数字を背景に、米10年国債利回りはジリ高傾向となり、それが外為市場で円安・ドル高につながりました。日経平均株価はこれらを好感する形で上昇し、3/10(金)には昨年来高値(終値ベース)を更新しました。
しかし、昨年来高値を更新した後の日経平均株価は再び様子見気分が強まっているように見受けられます。ここまでくると、米FOMCでの利上げはほぼ確実とみられ、逆に材料出尽くしを警戒する向きも少なくないようです。FOMCの結果が発表されるのは、日本時間では3/16(木)の予定ですが、この日はオランダ議会選挙の結果発表、日銀金融政策決定会合の結果発表、米債務上限引き上げ期限等、重要日程が目白押しです。本格的に動き出すのはその後と決めている投資家も少なくないようです。
ただ、これらの重要日程を境に株式市場が波乱になる可能性は小さいように思われます。3月後半の日経平均株価は上放れとなり、20,000円大台を目指す可能性が大きいと「225の『ココがPOINT!』」では予想しています。
図1:日経平均株価(日足)〜上放れ直前?
- ※当社チャートツールもとにSBI証券が作成。データは2017/3/14取引時間中。
図2:米10年国債利回り(日足)・過去6ヵ月
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2017/3/13(現地時間)現在。
図3:ドル・円相場(日足)・過去3ヵ月
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2017/3/14取引時間中。
当面のタイムスケジュール〜重要日程が目白押し |
これまで触れてきたように、当面は重要日程が相次ぐ予定となっています。特に3/15(水)から3/16(木)にかけては重要日程が目白押しになっています。改めて「日本時間」を基準に整理すると以下のようになります。(表1は現地時間)
(1)FOMC結果発表・・・・・3/16(木)午前3時に発表。政策金利は0.75%から1%に引き上げられる可能性が大きそうです。利上げ自体は織り込み済みとみられますが、FRBから今後の継続的な利上げを示唆する発言があるか否か注目されます。
(2)オランダ議会選挙・・・・・3/16(木)未明に選挙が終わり、午前中に大勢が判明する可能性が大きそうです。市場では極右の自由党(PVV)が第1党となることを懸念していますが、選挙終盤に中道右派の自由民主国民党(VVD)が巻き返しているようです。いずれにせよ単独政権の誕生は困難であり、連立政権の誕生が予想されますが、自由党と連立を望む政党はないと言われ、自由党の過激な主張が政策化される可能性は小さいとみられます。
(3)日銀金融政策決定会合・・・・3/16(木)昼頃に結果発表となりそうですが、今回は「無風」と予想されます。
(4)米債務上限引き上げ期限・・・・期限切れ後の3/16(木)以降も細かいやり繰りで債務上限を維持すると予想され、仮に問題が生じるにしても夏以降になるとみられます。大統領も議会も共和党で一致している現状では、そもそも問題は生じにくいと考えられます。
表1:当面の重要なタイムスケジュール〜重要日程通過へ
月日(曜日) |
国・地域 |
予定内容 |
ポイント |
---|---|---|---|
3/14(火) | 中国 | 2月の主要経済指標 | 小売売上高、固定資産投資、鉱工業生産 |
ドイツ | 3月ZEW景況感指数 | 6ヵ月先の景況感を機関投資家、市場関係者等350人に調査 | |
3/15(水) | 欧州 | オランダ議会選挙 | ウィルダース党首率いる自由党(反イスラム・反EU)が躍進? |
日本 | 2月訪日外客数 | 1月は2,295千人(前年比24%増) | |
日本 | ティラーソン米国務長官来日 | ||
米国 | 3月NY連銀製造業景気指数 | 2月は18.7 | |
米国 | 2月消費者物価指数(前年比) | 1月(食品・エネルギーを除く)は2.3%上昇 | |
米国 | 2月小売売上高 | 1月(自動車・ガソリンを除く)は前月比0.7%増 | |
米国 | FOMC結果発表(日本時間16日3時) | 政策金利(上限)が0.75%から1%へ引き上げられる可能性大 | |
米国 | 連邦債務上限引き上げ期限 | 16日以降も細かいやりくりで対応可能か | |
3/16(木) | 日本 | 日銀金融政策決定会合結果発表 | 今回は政策変更がない見通し |
米国 | 3月フィラデルフィア連銀景況指数 | 2月は43.3。ISM製造業景況指数の先行指標 | |
3/17(金) | 米国 | 2月鉱工業生産 | 1月は前月比0.3%減 |
米国 | 3月ミシガン大学消費者信頼感指数 | 2月は96.3 | |
- | G20財務省・中銀総裁会議(〜18日) | 米トランプ政権発足後初の主要国際会議 | |
3/20(月) | 日本 | ◎東京市場は休場(春分の日) | |
3/22(水) | 日本 | 2月貿易統計 | |
日本 | 日銀会合(1/31発表分)議事要旨 | ||
米国 | 1月FHFA住宅価格指数 | 米国連邦住宅金融庁から発表。信用度の高い物件が多め | |
米国 | 2月中古住宅販売件数 | コンセンサスは前月比-1.8% | |
3/23(木) | 米国 | 2月新築住宅販売件数 | コンセンサスは前月比+0.9% |
3/24(金) | 米国 | 2月耐久財受注 | 米民間設備投資の先行指標 |
表2:日米欧中央銀行会議の結果発表予定日(2017年以降)
2017年 | |
---|---|
日銀金融政策決定会合 | 3/16(木)、4/27(木)、6/16(金)、7/20(木)、9/21(木)、10/31(火)、12/21(木) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 3/15(水)、5/3(水)、6/14(水)、7/26(水)、9/20(水)、11/1(水)、12/13(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 4/27(木)、6/8(木)、7/20(木)、9/7(木)、10/26(木)、12/14(木) |
※各種報道、日米欧中銀Webサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合がありますので、あくまでもデータ作成段階のものです。なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しました。日付は現地時間を基準に記載しています。
【ココがPOINT!】3月後半、日経平均株価は20,000円に達する可能性も |
3/10(金)に発表された米雇用統計(2月)では、非農業部門雇用者数が事情予想を上回り、失業率も前回から低下。さらに賃金の伸びも前月より加速しました。またそれに先駆けて発表されたADP雇用統計(2月)では雇用者数が前月比30万人近く増加。一方、週次で発表されている新規失業保険申請件数も一時44年ぶりの低水準を記録しました。米労働市場は「完全雇用」に近い状態と言われていますが、発表される数字はそれを裏付けるように強い数字が目立ちました。
「完全雇用」状態にあるにもかかわらず、トランプ米大統領はインフラ投資や法人減税を通じ米国の雇用を増やそうというのですから、賃金の増加を通じインフレ率が高まる可能性は大きいでしょう。2017年の米国では3〜4回の利上げが実施される可能性が大きいと考えられます。仮に利上げを織り込みながら今後も米長期金利が上昇するならば、ドル・円相場も緩やかな上昇が予想されます。仮に3月いっぱい1ドル114円程度で推移すれば、企業の会計年度でいう17年3月期は1ドル108円前後の平均レートということで着地しそうです。
製造業の競争力回復を狙っているトランプ米大統領の政策を考慮すれば、今後円安・ドル高がどんどん加速するというシナリオは描きにくいかもしれません。1ドル120円〜125円が今の日米関係から考えると、円安・ドル高の限界ではないでしょうか。もっとも17年3月期の平均レートが1ドル108円台で着地すると、仮に今後1ドル114円前後のドル・円相場が続いても18年3月期の企業業績にはプラス要因として効いてくることになると考えられます。
同様に1ユーロ122円前後であれば、18年3月期はユーロ・円相場も企業業績に対しプラス要因になるとみられます。このように18年3月期は為替相場がトータルで、企業業績にとって追い風に転じやすくなると見込まれます。それを受けて製造業を中心に増益になる業種が増えそうです。各種調査を参考にすると、どうやら18年3月期の上場企業は2桁の経常増益になる可能性が大きいようです。純利益ベースでも最高益を更新してくる企業が多いとみられます。
これまでご説明してきたように3月第3週は、オランダ議会選挙、FOMC結果発表、米債務上限引き上げ期限等、重要日程が目白押しです。しかしそれを通過すると、こうした日本企業の業績にスポットが当たりやすくなるとみられます。上場企業の増益が見込める局面、特にそのペースが加速しそうな時、株価は上昇しやすいと考えられます。日経平均株価は年度替わりをはさんで20,000円台に乗せても不思議ではないと「225の『ココがPOINT!』」では予想しています。
図4:「完全雇用」状態を示す?米雇用統計
- ※米労働省公表データを用いてSBI証券が作成。失業率は逆目盛
図5:ドル・円相場(週足)・過去2年間
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2017/3/14取引時間中。
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