日経平均株価は10/11(火)に17,000円台を回復しました。米長期金利が上昇局面となり、ドル・円相場が円安・ドル高方向に上放れてきたこと等が追い風とみられます。しかし、9/5(月)の高値17,156円が意外に強力な上値抵抗ラインになっているように思えます。折しも、日米で決算発表シーズンを迎えるため、ここを上抜けるのは大変かもしれません。
ただ、7〜9月期の決算発表について、過度の懸念は不要だとみられます。9月の短観では、3ヵ月前に警戒していたほど業況が悪くなかった業種が少なくないからです。企業マインドを冷やす円高・ドル安も一巡しつつあり、仮に業績予想を下方修正してもその後に株価が上昇する企業も多そうです。決算発表が進むにつれ、日経平均株価の上昇ピッチが加速する可能性が大きそうです。
<今週のココがPOINT!>
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日経平均は上昇加速目前?ただ、意外な上値抵抗ラインも |
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日経平均株価は9/27(火)から10/11(火)までの間に4.8%上昇し、一時17,074円の高値を付けました。米国時間9/26(日本時間9/27)に実施された米大統領候補のテレビ討論会でクリントン氏が優位に立ち、政策が大幅に変更されるとの不安が後退したことが主因です。10/7(金)に米労働省から発表された雇用統計(9月)では非農業部門雇用者数の伸びが前月比15.6万人増となり、市場予想(18万人増)を下回りましたが、7〜9月の3ヵ月平均では19.2万人増の伸びを確保したため、あまり問題視されずに年内利上げ観測が維持されました。
こうした中、米国の7〜9月期決算発表の口火を切った非鉄大手アルコアの収益が市場予想を下回り、10/11(火)のNYダウが200ドル安したことを警戒し、10/12(水)の日経平均株価は184円安でした。続く10/13(木)には中国の貿易統計で輸出が予想外に減少したことを受け、日経平均株価は65円安となりました。しかし、米国の企業業績への不安が銀行決算には及ばなかったことや、米長期金利の上昇を伴った円安・ドル高(1ドル104円台を示現)を背景に、10/14(金)〜10/18(火)の日経平均株価は続伸になりました。
図1は過去3ヵ月の日経平均株価の推移を示したものです。日経平均株価は短期的に重要な25日移動平均や中長期的に重要な200日移動平均を上回ってきています。日足の75日移動平均や、それに近い週足の13週移動平均が上昇に転じていることもテクニカル面でのプラス材料とみられます。
図3にみられるように、米国の年内利上げ観測を背景に米10年国債利回りは上昇局面で、しかも三角保ち合いを上放れており、上昇が加速しても不思議ではない形状となっています。このため、ドルへの上昇圧力が強まっていますが、ドル・円相場(日足)も三角保ち合いを上放れているうえ、9/2(金)に付けた1ドル104円31銭も一時上回ってきたため、ドル高・円安が加速しても不思議ではないとみられます。
ただ、10月も半ばとなり日米とも決算発表シーズンに入ったことに加え、貿易統計で再燃した中国経済への不透明感がくすぶり、投資家にとっては再びポジションを取りにくい局面となってきました。「EU残留」が有力視されていた英国民投票で一転、離脱派が勝利した「トラウマ」から、市場参加者の多くは米大統領選挙への警戒心をあまり緩めていないように思われます。
日経平均株価は9/5(月)の高値17,156円を奪回できれば、5/31(火)の高値17,251円の回復も視野に入ってくるとみられますが、この上値抵抗ラインは予想以上に強力なようです。
図1:主要移動平均を「上放れ」〜9/5高値は予想外に強い上値抵抗ライン?

- ※当社チャートツールもとにSBI証券が作成。データは2016/10/18現在
図2:ドル・円相場(日足)・過去6ヵ月

図3:米10年国債利回り・過去6ヵ月

- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2016/10/18(日本時間)現在。
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当面のタイムスケジュール〜決算発表シーズンが本格化 |
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表1は、当面の重要なタイムスケジュールをご紹介したものです。日米ともに決算発表が本格的にはじまる時期になっており、マクロの経済指標以上に、ミクロの企業業績にスポットが当たりやすくなってくるとみられます。
こうした中、日本よりも早く、米国では主要企業の決算が本格化してきます。10/18(火)のインテルの決算発表では、その業績や設備投資計画等が我が国の半導体製造装置メーカーの株価に影響を与えることがあります。日経平均採用銘柄では東京エレク(8035)やアドバンテスト(6857)、信越化学(4063)等への影響に注意する必要があります。10/20(木)にはマイクロソフトが、10/25(火)にはキャタピラー、スプリント、アップルの決算発表が予定されています。このうち、建機で世界トップのキャタピラーの決算や見通しは、我が国のコマツ(6301)、日立建機(6305)の株価に大きな影響を与えることがあります。そしてアップルはファナック(6954)、日東電工(6988)、TDK(6762)等多くの銘柄の値動きに影響を与えることがあります。特にファナックは日経平均への寄与度が高い銘柄ですので、注意が必要です。
なお、経済指標では中国の主要経済指標に注目です。10/19(水)には7〜9月期GDPや9月鉱工業生産等の発表が予定されています。10/13(木)に発表された貿易統計で輸出が減少したことについては、8月末に韓国の海運大手「韓進海運」が破たんしたことによる荷動きの乱れや、9/4(日)・9/5(月)に中国・杭州でG20・サミットが開催されたことの影響を指摘する向きもあるようですが、この材料だけで中国経済の停滞を結論付けるのは早計と思われます。本質的には10月分くらいまでの経済指標をみて、総合的に判断すべきとみられます。
表1:当面の重要なタイムスケジュール〜日米で決算発表シーズンが到来
月日(曜日) |
国・地域 |
予定内容 |
ポイント |
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10/18(火) | 米国 | 10月NAHB住宅市場指数 | |
米国 | 9月消費者物価指数 | 食品・エネルギーを除いた部分では前年比2.3%上昇がコンセンサス。 | |
米国 | ◎決算発表〜インテル、GSなど | インテル決算は日本のハイテク企業の株価にも影響? | |
10/19(水) | 日本 | 9月訪日外客数 | 前年比で6月23.9%増、7月19.7%増、8月12.8%増と推移 |
中国 | 9月鉱工業生産 | 前年比6.4%増(8月は6.3%増)が市場コンセンサス | |
中国 | 9月小売売上高 | 前年比10.7%増(8月は10.6%増)が市場コンセンサス | |
中国 | 7〜9月期GDP | 前年比6.7%増(4〜6月期も6.7%増)が市場コンセンサス | |
米国 | 9月住宅着工数 | 前月比2.9%増が市場コンセンサス | |
米国 | ベージュブック | FOMCの重要な判断材料 | |
米国 | ◎決算発表〜モルガンS、アメックス、イーベイ他 | ||
米国 | 第3回米大統領候補テレビ討論会 | 米大統領選の趨勢が明らかに? | |
10/20(木) | 日本 | 9月日本製半導体製造装置BBレシオ | |
日本 | ★決算発表〜安川電機他 | 我が国で3月決算企業の決算発表シーズンが開始 | |
欧州 | ECB定例理事会・ドラギ総裁会見 | ||
米国 | 10月フィラデルフィア連銀製造業景況感指数 | 米企業のマインドは? | |
米国 | 9月中古住宅販売件数 | 米国住宅市場の9割は中古。 | |
米国 | ◎決算発表〜ベライゾン、マイクロソフト他 | ||
10/21(金) | 日本 | 黒田日銀総裁が挨拶(全国信用組合大会) | |
米国 | ◎決算発表〜GE、マクドナルド | ||
10/23(日) | 日本 | 衆院補欠選挙(東京、福岡) | |
10/24(月) | 日本 | 9月貿易統計 | |
日本 | ★決算発表〜日本電産他 | 永守社長の見方や方針にも注意 | |
米国 | シカゴ連銀全米活動指数 | ||
10/25(火) | 日本 | JR九州が新規上場 | 公開価格での時価総額は4,160億円の計算 |
独 | 10月Ifo景況感指数 | 7千社のドイツ企業を対象に現況と6ヵ月後の景況感をアンケート | |
米国 | 8月FHFA(米連邦住宅金融庁)住宅価格指数 | S&PコアロジックCS住宅価格に比べ信用度が高い | |
米国 | 8月S&PコアロジックCS住宅価格指数 | ||
米国 | コンファレンスボード消費者信頼感指数 | アンケート対象者が5,000人と「ミシガン大学」より調査規模が大きい | |
米国 | ◎決算発表〜スプリント、アップル他 | 2社とも我が国の企業に大きく影響も | |
10/26(水) | 日本 | ★決算発表〜LINE、キヤノン、任天堂他 | |
10/27(木) | 日本 | ★決算発表〜富士フィルム、富士通等133社 | |
英国 | 7〜9月期GDP | 1〜3月は前年比1.3%増、4〜6月は同2.1%増 | |
米国 | 9月耐久財受注 | 米国の設備投資を占う | |
米国 | ◎決算発表〜フォード他 | ||
10/28(金) | 日本 | 9月失業率・有効求人倍率 | |
日本 | ★決算発表〜コマツ、JR東等298社 | ||
米国 | ◎決算発表〜エクソンモービル、シェブロン他 |
表2:日米中央銀行会議の結果発表予定日
2016年 | 2017年 | |
---|---|---|
日銀金融政策決定会合 | 11/1(火)、12/20(火) | 1/31(火)、3/16(木)、4/27(木) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 11/2(水)、12/14(水) | 2/1(水)、3/15(水) |
※各種報道等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは2016/10/18現在。予定は予告なく変更される場合がありますので、あくまでもデータ作成段階のものです。
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【ココがPOINT!】決算発表が進捗し、株価上昇が加速する可能性も |
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10/20(木)に安川電機(6506)の決算発表が予定されています。同社の業績や先行き見通し自身も、設備投資の先行きを占う意味で重要ですが、株式市場にとっては「決算発表シーズンの幕開け」を意味します。
日銀短観によると、2016年度は全産業で前期比8.1%の経常減益が見込まれており、今回の7〜9月期決算も厳しいものになりそうです。四半期ごとの平均ドル・円レートは4〜6月が107円98銭(前年同期比11%の円高・ドル安)、7〜9月が102円37銭(同16.2%の円高・ドル安)と円高が加速しているので、輸出産業にとっては厳しいものになりそうです。輸出産業を中心に業績予想の下方修正が増えれば、予想EPSの低下を通じ、日経平均の下落が進む可能性があります。
しかし、過度の懸念は不要であると「225の『ココがPOINT!』」では考えています。心配されたほど悪くなっていない業種も少なくないためです。表3は、2016/9現在の業況が、3ヵ月前の時点で想定していた業況よりも「改善」している業種を取り上げています。中国経済の回復もあり、商品市況や原油価格が落ち着いてきたことで、素材・エネルギー産業で改善が顕著になっているようです。また代表的な輸出産業である自動車が「改善」していることは非常にポジティブだと思います。
無論、「電気機械」や「造船・重機等」等は逆に「悪化」傾向であり、下方修正に要注意で、すでに業績予想の下方修正を発表している企業も見受けられます。しかし、総じて「改善」している業種が多いうえ、不振の「小売」などは2月決算が多いため、この時期(10月下旬以降)に発表する企業は少数派です。したがって、決算発表が進捗するにしたがい、買い安心感が強まり、日経平均株価が上昇する可能性も十分あると考えられます。
図4:為替相場の影響を受ける企業マインド

表3:「短観」で「予想外」に好調だった業種
2016/6調査 | 2016/9調査 | |||
---|---|---|---|---|
最近(A) | 先行き(B) | 最近(C) | 先行き(D) | |
木材・木製品 | 29 | 18 | 41 | 29 |
鉄鋼 | -12 | -9 | 0 | 2 |
非鉄金属 | 3 | -6 | 8 | 3 |
食料品 | 29 | 17 | 28 | 16 |
金属製品 | 10 | 3 | 8 | -2 |
自動車 | -2 | 3 | 8 | 3 |
建設 | 36 | 31 | 39 | 30 |
不動産 | 32 | 28 | 35 | 29 |
物品賃貸 | 20 | 17 | 23 | 17 |
卸売 | 10 | 5 | 10 | 7 |
通信 | 44 | 28 | 44 | 33 |
表4:「短観」で「予想外」に不調だった業種
2016/6調査 | 2016/9調査 | |||
---|---|---|---|---|
最近(A) | 先行き(B) | 最近(C) | 先行き(D) | |
窯業・土石製品 | 3 | 12 | 5 | 7 |
はん用機械 | 14 | 12 | 6 | 14 |
電気機械 | -6 | 5 | -5 | 3 |
造船・重機等 | 4 | -3 | -18 | -18 |
小売 | 11 | 12 | 7 | 12 |
- ※Bloomberg、日銀データを用いてSBI証券が作成。データは2016/10/18(日本時間)現在。表3では、日銀短観の6月調査の時に想定した「先行き」(B)に対し、9月現在の業況を示す(C)が5ポイント以上「改善」している業種を、逆に表4では5ポイント以上「悪化」している業種を羅列しています。順番は日銀短観で示された業種の順番に従っています。
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