日経平均株価は7/11(月)から始まった連騰が7/19(火)まで続いています。Brexit(英国のEU離脱問題)に対する過度の懸念が後退したことに加え、強い雇用統計を確認し、米国経済への楽観論が回復してきたこと等が要因です。外為市場でもドルやユーロが対円で値を回復しています。
今後はどうなるのでしょうか。円高で企業業績に対する不透明感が強まっているため、株価上昇に懐疑的な見方も少なくないと思います。しかし、テクニカル分析の面では、株式相場の「強気」転換を示唆する材料が続いています。現在の反発相場を過小評価すべきではないのかもしれません。
<今週のココがPOINT!>
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「Brexit」による下げを取り戻す |
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日経平均株価は先週(7/11〜7/15)、5営業日すべてにおいて上昇し、累計で1,340円上昇しました。7/8(金)に発表された米雇用統計が市場予想を大きく上回る強い結果となり、米国経済に対する不安が大きく後退したことが要因です。3連休明けとなった7/19(火)も続伸し、日経平均株価は6営業日連続高となりました。
英国のEU離脱(Brexit)問題に絡む市場の警戒感も後退し、世界的株高の中で値を戻す展開になりました。日本固有の要因として、7/10(日)に実施された参議院選挙において、自民党・公明党の与党が改選過半数を占める勝利を収め、大規模な経済対策への期待が高まったことも追い風になりました。欧州・米国が今後相次いで重要な選挙を予定し、政権の不安定化も警戒される中で、我が国の政治の安定がいち早く確認されたことも隠れた好材料になったとみられます。
図1は5月下旬以降の日経平均株価の動きを示したものです。英国民投票でEU離脱派の勝利が「警戒」され始めた6月以降、水色で示された上値抵抗ラインに頭を押さえつけられてきましたが、7/12(火)以降はそこを上放れる形になりました。また、この問題への懸念が深まり、日経平均株価は6/13(月)に窓を開ける形で下げを加速させましたが、7/15(金)にはそこを埋める形になっています。
株価的に、英国のEU離脱問題は織り込まれ、市場の関心は次第に企業業績や各国経済の現状(さらにその先の金融政策)に移っていくと考えられます。
図1:日経平均株価(日足)〜「窓埋め」完了の形

- ※当社チャートツールもとにSBI証券が作成。データは2016/7/15現在。
「ドル・円(日足)」(図2)、および「ユーロ・円(日足)」(図3)についてですが、双方とも英国のEU離脱問題を背景に下落してきた上値抵抗ライン(右肩下がりの直接)には再び届いてきた形となっています。ドル・円相場の場合はさらに、英国民投票の結果が判明した6/24(金)の水準も回復していますので、この問題は為替の面でも一巡したと考えてよいでしょう。
米国の金融政策については、英国のEU離脱問題を受けて一時は利下げ説まで飛び出しましたが、さすがに行き過ぎた見方になっていたようです。雇用統計の発表を契機に再び「年内利上げが可能」との見方が復活してきましたので、6/24(金)の1ドル99円は中期的なボトム(ドルの安値)になった可能性が大きそうです。
「震源地」である欧州については、Brexitのみならずテロの頻発など、まだ不透明要因が多く、追加緩和の可能性も残りそうなため、ユーロ・円相場が安定するまでには時間を要し、当面は振幅の大きい展開が警戒されます。ただ、再び1ユーロ109円はBrexitによる相当悪いシナリオまで織り込んだ水準とみられ、それを再び付ける可能性は当面は小さいと考えられます。
図2:ドル・円相場(日足)

図3:ユーロ・円相場(日足)

- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2016/7/19取引時間中
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当面のタイムスケジュール〜日米で決算(4〜6月期)発表が本格化へ |
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米国では「アルコア」、我が国では「安川電機」が決算発表を実施すると、いよいよ決算発表シーズンが本格的に幕を開けるというのが最近のイメージです。すでに米国では主力企業の決算発表が進捗しており、7/20(水)にはインテルの決算発表が予定されています。同社の重要度は一時に比べれば低下したと考えられますが、その決算動向や業績見通しは、日本のハイテク企業の業績や株価に大きな影響を与えることがあります。
同じ日に日本では安川電機の決算発表が予定されており、いよいよ3月決算企業の4〜6月期業績について、発表が本格化してきます。7/1(金)に発表された日銀短観では、2016年度の大企業・経常利益(全産業)見通しは、前回調査から6.5ポイント下方修正されて7.3%の減益見通しになっています。今年度に入って予想以上に円高が進んでおり、企業の前提為替レートも円高方向に修正されていることが下方修正の背景とみられます。
なお、日本の上場企業の4〜6月期決算発表は、発表社数ベースでみると550社の発表が予定されている7/29(金)がピークになりそうです。その後は8/5(金)に470社、8/10(水)に424社と、高水準の発表が予定されています。また、8/4(木)には我が国で時価総額トップのトヨタ(7203)が決算発表を予定しています。多くの企業が「お盆休み」に入る8月中旬までには、決算発表が一巡してくると考えられます。今回の決算については「期待」よりも「警戒」の方が強いとみられますので、8月上旬頃までは、決算発表が株価の下押し材料になる可能性もあり、注意が必要です。
現地時間7/27(水)(日本時間では7/28の午前3時頃)にはFOMC(米連邦公開市場委員会)の、7/29(金)には日銀金融政策決定会合の結果が発表される予定です。このうち、米国は当面金融政策の変更はないというのが市場コンセンサスですが、日本については、追加緩和の可能性が残っています。このため、月末にかけては円安・ドル高が進みやすい状態が続くとみられます。しかし、日銀金融政策決定会合を前に、市場が落ち着きを取り戻してきたため、実際に追加緩和に踏み切る可能性は小さくなっていると考えられます。
表1:当面の重要なタイムスケジュール/日米ともに決算発表と金融政策決定会合がポイント
月日(曜日) |
国・地域 |
予定内容 |
ポイント |
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7/19(火) |
日本 |
東証マザーズ指数先物上場 |
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ドイツ |
7月ZEW景況感指数 |
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米国 |
6月住宅着工件数・建設許可件数 |
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米国 |
★米決算発表 |
J&J、マイクロソフト、GS他 |
7/20(水) |
日本 |
◎決算発表6社〜安川電機他 |
日本の4〜6月期決算発表シーズンが幕開け |
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日本 |
6月日本製半導体製造装置BBレシオ |
5月まで6ヵ月連続で1を上回る。ただし、同月の受注は前年比マイナス。 |
|
日本 |
6月訪日外客数 |
5月は189.4万人(前年比+15.3%)、4月は208.2万人(同+18.0%) |
|
米国 |
★米決算発表 |
モルガン・スタンレー、クアルコム、インテル他 |
7/21(木) |
日本 |
◎決算発表8社 |
中外製薬、サイバーエージェント他 |
|
欧州 |
ECB(欧州中銀)理事会 |
ECBによる追加緩和の余地を探る? |
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米国 |
7月フィラデルフィア連銀製造業景況観指数 |
前回4.7から今回は4.8へわずかに改善の予想 |
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米国 |
5月FHFA住宅価格指数 |
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|
米国 |
6月中古住宅販売件数 |
6月は年率換算548万戸(前月比-0.9%)が市場コンセンサス |
|
米国 |
★米決算発表 |
パルト・グループ、D.R.ホート、GM、トラベラーズ他 |
7/22(金) |
日本 |
◎決算発表22社 |
日本電産、富士通ゼネラル他 |
|
米国 |
★米決算発表 |
GE他 |
7/25(月) |
日本 |
6月貿易収支 |
輸出が前年同月比で8か月連続の減少 |
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日本 |
◎決算発表29社 |
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7/26(火) |
日本 |
7月決算権利付最終日 |
|
|
日本 |
◎決算発表36社 |
キヤノン、信越化学他 |
|
米国 |
★米決算発表 |
マクドナルド、TI他 |
7/27(水) |
米国 |
FOMCの結果発表 |
利上げ観測が後退する中でのFRBの考え方は? |
|
日本 |
◎決算発表93社 |
アドバンテスト、日立建機、ファナック他 |
|
米国 |
★米決算発表 |
ボーイング他 |
7/28(木) |
日本 |
◎決算発表223社 |
三菱電機、村田製、三井住友トラスト他 |
|
米国 |
★米決算発表 |
フォード、アマゾン他 |
7/29(金) |
日本 |
日銀金融政策決定会合結果発表 |
追加金融緩和はあるのか? |
|
日本 |
◎決算発表550社 |
決算発表社数ベースで最多 |
7/31(日) |
日本 |
東京都知事選投開票 |
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- ※各種報道等をもとにSBI証券が作成。予想は市場コンセンサス。データは2016/7/15現在。
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【ココがPOINT!】テクニカルが「強気」転換!この反発相場を過小評価すべきではない!? |
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下の図4は日経平均株価の一目均衡表(日足)です。グラフ上に赤丸で囲った3つのポイントが示すように、一目均衡表上は株式市場が「強気」転換した形になっています。
(1)遅行スパンが日々線を下から上に突き抜ける形になっていること
(2)転換線が基準線を下から上に突き抜ける形になっていること
(3)日々線が「クモ」(2つの先行スパンに囲まれた色付き部分)を下から上に突き抜ける形になっていること
一目均衡表の分析ではこの3つの条件が揃うことを「3役好転」と称し、当面の株式相場が強気に転換する可能性が大きいと考えられています。ちなみに、「クモ」を形成する2つの先行スパンが交差する日は「要注意日」とされますが、今回はその「要注意日」(交差する日は7/20)近くのクモの薄い部分を突き抜けてきた格好となっています。
ちなみに、25日移動平均分析でも、日経平均株価は「強気」転換しつつあります。図5の日経平均株価・25日移動平均が先週までは下落していましたが、今週からは上昇に転じつつあるためです。このように、テクニカル分析上、複数の種類のチャートで「強気」転換していますので、現在の日経平均の反発相場は過小評価すべきではないと考えられます。
ただ、リスク要因もありそうです。図5における日経平均株価の25日移動平均かい離率をみると、5%近辺に達しているため、そろそろスピード警戒感が強まってくる可能性があります。日経平均のRSI(14日)がやはり7/15(金)時点で73%とやや過熱感が出てきているため、これについてもある程度の警戒が必要だと思います。ただ、騰落レシオが102%と過熱圏を示唆する120%前後の水準までは「距離」があるため、個別には上昇余地を残している銘柄が少なくないと思われます。
過熱感を指摘されながらも、今しばらくは上昇を続け、8月に入り「材料難」から調整に入るという展開が「メインシナリオ」になるかもしれません。
図4:日経平均株価の一目均衡表が「3役好転」で「強気」転換

- 日経平均公表データを用いてSBI証券が作成。データは2016/7/19取引時間中
図5:日経平均株価の25日移動平均が上昇に転じ「強気」転換!?〜ただしかい離率には注意

- 日経平均公表データを用いてSBI証券が作成。データは2016/7/19取引時間中
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