最初に、今回の熊本県を中心とした地震で被災された方々には、心よりお見舞い申し上げます。そして、一日も早い復興をご祈念申し上げます。
日経平均株価は4/18(月)に前日比572円安と急落し、終値は16,275円となりました。(1)G20会合で米国が日本の為替介入をけん制する発言を行い、再び円高・ドル安が進んだため、(2)ドーハで開催された産油国会合で増産凍結が見送られ、時間外で原油先物価格が下落したため、(3)熊本地震で製造業の生産供給体制が一部崩れたため、等が理由として考えられます。
しかし、翌日の4/19(火)には急反発し、日経平均株価終値は前日比598円高と、前日の下げ幅を取り戻す動きとなっています。なぜ、このような急落・急騰劇が起きたのでしょうか。株式相場の実態は強いのでしょうか、それとも弱いのでしょうか。今後の相場の方向感についてはどう考えるべきでしょうか。
底流で進む?「リスクオン」への変化 |
日経平均株価は4/8(金)に15,471円の安値を付けた後、4/15(金)には一時16,928円まで9.4%上昇しました。しかしその後は下落に転じ、週明けとなった4/18(月)は大幅安になっています。日経平均株価はこの日、前日比572円安と急落し、終値は16,275円となりました。理由はおもに以下の3点であると考えられます。
(1)G20会合で米国が日本の為替介入をけん制する発言を行い、それを受けて再び円高・ドル安が進んだため
(2)ドーハで開催された産油国会合で増産凍結が見送られ、時間外で原油先物価格が下落したため
(3)熊本地震で製造業の生産供給体制が一部崩れたため、景気・企業業績への悪影響が懸念されたため
しかし、翌日の4/19(火)には急反発し、日経平均株価終値は前日比598円高と、前日の下げ幅を取り戻す動きとなっています。上記の(1)に関し、外為相場では、ポイントとなる4/11(月)に付けた1ドル107円63銭を超えて円高・ドル安が進まなかったことから一転、ドルを買い戻して円を売る動きが増えることになりました。また(2)については「もともと増産凍結への期待はさほど大きくなかった」という見方もあり、結果的に増産凍結の原油先物相場への影響が限定的なものにとどまりました。(3)については、生産供給体制復興に向けた取り組みが記事になり、投資家の不安後退につながった面がありそうです。
それにしても、株式相場やそれに影響する外為相場、原油相場に対する見方がなぜこうも、強気と弱気の間でしかも短期間に大きく振れたのでしょうか。どうもその背景には、これらの相場変動の背景にある「本質」が見落とされている可能性のあることが大きな理由のひとつであると考えられます。
現在の株式相場、為替相場、原油(商品)相場の変動について、その背景にある最も重要なポイントはおそらく「日米欧主要3地域の金融政策の変化」で、特に「世界最大の金融・経済大国である米国の金融政策の変化」や、それに伴う「国際的な資金フローの変化」に求められると考えられます。
2015年末に米国が政策金利を引き上げましたが、これにより米国が名実ともに「金融引き締めモード」に入り、その結果として、新興国や原油(商品)市場、世界の株式市場から資金流出が本格化することが懸念されました。その過程で、リスク回避の円買いが進み、5兆円(年初から4/8まで)の日本株が売り越され、原油先物相場は売られ、多くの国で株価が下げる展開となりました。
逆に言えば「介入ができないから円高になる」とか「増産が凍結されないから原油相場が下げる」というのは、相場変動のひとつの断面しかとらえていない可能性があると考えられます。
こうした中、2016年に入り国内では東証マザーズ、海外ではブラジル、トルコなどの上昇率が大きくなっていますが、このことは投資家の姿勢が「リスクオン」に変化し始めていることを示していると考えることができます。通貨面では、ブラジルレアル、ロシアルーブル、豪ドルなどが対米ドルで上昇傾向に転じており、新興国からの資金流出が一巡していることを裏付けています。こうした世界的な資金フローの変化は非常に重要で、円高や原油先物相場の下落が続きにくいことを示していると思います。したがって、日本株についても、それほど弱気になる必要はないと考えることができます。
図1:日経平均株価(日足)
- 当社チャートツールもとにSBI証券が作成。
日米の金融政策の方向感を確認する |
前項でご説明したように、各国の金融政策について現状を確認し、国際的な資金フローに変化が生じるか否かを予想することは非常に重要であると考えられます。したがって、日米欧で金融政策の変更・現状維持が論議される今週から来週にかけては、非常に重要な時期であると思われます。
最も、欧州についてはドラギ総裁がすでにマイナス金利拡大に否定的な見解を示しているため、当面の金融政策は現状維持となる可能性が大きそうです。より注目度が高いのは日米の金融政策会合であると考えられます。
このうち、4/27(水)に結果発表のFOMC(米連邦公開市場委員会)については「現状維持」がメインシナリオになりそうです。米経済は着実に回復しているものの、世界経済の安定をより確実にするため、市場がメインシナリオに据えている「6月利上げ」説に乗るのが得策であると考えられるためです。
一方、日銀については追加緩和に踏み切る可能性がありそうです。為替相場への影響や実際の効果を見極める意味では、単純にマイナス金利の拡大は評価されない可能性があります。しかし、貸出支援基金をマイナスにするなど、銀行の資金調達サイドでコストダウンを考慮すれば、マイナス金利政策への評価を改善させることが期待できます。また、ETFの買取増額なども検討される可能性があります。
仮に政府が、予定通りの消費税引き上げを望んでいるならば、日銀の追加緩和と合わせ、政府が財政出動に踏み切るくらいの対策を重ねないと、景気が腰折れるリスクが高まると考えられます。逆に考えれば、今回、日銀が動く可能性は小さくなく、市場もそれを意識して動くと想定され、円高・株安は考えにくいと思われます。
表1:当面の重要なタイムスケジュール
月日(曜日) |
国・地域 |
予定内容 |
ポイント |
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4/19(火) |
独 |
4月ZEW景況感指数 |
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米国 |
3月住宅着工件数 |
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米国 |
◯決算発表〜GS、インテル |
インテルの決算は半導体設備投資のヒントになる |
4/20(水) |
日本 |
3月貿易統計 |
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日本 |
訪日外客数 |
1月は前年同月比52.0%増、2月は36.4%増。単月で過去最高が視野? |
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日本 |
◯決算発表〜安川電機 |
日本の決算発表シーズン到来 |
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米国 |
3月中古住宅販売件数 |
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米国 |
◯決算発表〜クアルコム、アメックス |
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4/21(木) |
欧州 |
ECB理事会(ドラギ総裁) |
前回利下げ拡大打ち止めを示唆しており、今回は現状維持か? |
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米国 |
4月フィラデルフィア連銀製造業共感指数 |
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米国 |
FHFA住宅価格指数 |
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米国 |
◯決算発表〜マイクロソフト、アルファベット他 |
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4/22(金) |
日本 |
◯決算発表〜中外製薬、ジャフコ |
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米国 |
◯決算発表〜GE、キャタピラー |
キャタピラーの示す業界動向でコマツや日立建機も動く可能性 |
4/24(日) |
日本 |
衆議院補欠選挙(北海道、京都) |
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4/25(月) |
日本 |
◯決算発表〜日立化成、日本電産 |
日本電産・永守社長の説明会コメントに注目 |
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米国 |
◯決算発表〜アップル他 |
今後のアイフォーン販売台数の見通しは? |
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米国 |
3月新築住宅販売 |
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4/26(火) |
日本 |
◯決算発表〜東京エレク、キヤノン他 |
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米国 |
◯決算発表〜3M、コーチ、P&G |
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米国 |
FOMC(〜4/27) |
「次の利上げは6月」がメインシナリオ |
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米国 |
3月耐久財受注 |
米設備投資の先行指標 |
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米国 |
4月消費者信頼感指数 |
カンファレンンスボード消費者信頼感指数 |
4/27(水) |
日本 |
日銀金融政策決定会合(〜4/28) |
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日本 |
◯決算発表〜141社が発表 |
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米国 |
3月中古住宅販売仮契約 |
中古住宅販売の先行指標。米国住宅市場の9割は中古。 |
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米国 |
◯フェイスブック他 |
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4/28(木) |
日本 |
日銀総裁会見、展望レポート |
「銀行にも優しいマイナス金利」を模索? |
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日本 |
3月失業率、有効求人倍率他 |
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日本 |
◯決算発表〜308社が発表(第1のヤマ場) |
最大のヤマ場は5/13(金)の予定 |
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米国 |
米1〜3月GDP |
ゼロ%台にとどまる可能性も? |
4/29(金) |
日本 |
◎東京市場休場(昭和の日) |
大型連休に突入 |
- 各種報道等をもとにSBI証券が作成。データは2016/4/19現在。
【ココがPOINT!】決算発表を経て「悪材料出尽くし」になる可能性も |
表1にもあるように、日銀金融政策決定会合の結果発表が終わる4/28(木)頃、東京市場は2016/3期決算の発表が第1のヤマ場となります。最大のヤマ場は5/13(金)で、959社が決算発表を予定しています。
足元での景況感の悪化や円高を背景に、2016/3期決算は着地するまで予断を許さない状態が続きそうです。増益率は限定的となり、下方修正する会社も増えるとみられます。また、2017/3期の業績予想についても、ドル・円相場が1ドル110円を切る水準になっているため、輸出企業を中心に減益計画を組む企業が増えそうです。このため、決算発表が進捗する期間は、日経平均株価が17,000円前後で一進一退になる可能性がありそうです。
ただ、今期巨額の一時的損失を計上した会社の業績回復(赤字減少を含む)が見込まれること、原油価格の下落が最悪期を脱しているとみられ、石油・石炭、商社等の業種で利益回復が予想されることから、実力値レベルでは全体として増益を期待できそうです。このため、慎重な会社側業績計画と市場の期待の間に乖離が生じ、期中にかけて上方修正されるというのがメインシナリオになるでしょう。決算発表が5月中旬に一巡すれば、悪材料出尽くしの形になり、日経平均株価は2月高値である18,000円直前程度の水準を取り戻してくる可能性もありそうです。
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