7月の東京市場はまさに波乱の展開でした。日経平均株価は6月末終値20,235円に対し、7/9には一時19,115円の安値を付けました。ギリシャ危機に加え、中国株の下落が深刻化したことが背景です。その後、中国当局による矢継ぎ早の株価対策が効き始め、更にギリシャも当面の危機を脱したことから、日経平均株価も徐々に落ち着きを取り戻しました。
結局、日経平均株価は7月末に20,585円となり、前月末比1.7%の上昇となりました。小幅上昇ではありますが、ギリシャ問題や中国株安の荒波を乗り越えての上昇です。その意義は大きいと言えるかもしれません。
今後の日経平均はどう推移するのでしょうか。「225の『ココがPOINT!』」では、8月上・中旬には揉み合いが続く可能性があるものの、8月下旬から9月にかけ上放れる公算が大きいと考えています。
8月中旬頃までは揉み合いが続く可能性も |
日経平均株価(図1参照)は7/9の安値19,115円を底値に反発し、7/21には20,850円まで上昇しました。ギリシャ問題が当面の危機を脱したことや、中国株が反発に転じたことが要因です。しかし、6/24の高値20,952円は抜けず、揉み合いの様相を呈しています。
日経平均株価が高値を抜けきれない理由のひとつは、中国株(図2参照)の反発が一巡してしまったことがあげられます。中国当局の株価対策は、当面の「止血」にはなったものの、ベースとなる中国経済自体の不透明感までは払拭しきれていません。7/31にIOC(国際オリンピック委員会)で2022年冬季オリンピックが北京で開催されることが決定されましたが、発表直後となる8/3の中国株式市場で目立った反応は見られませんでした。
もうひとつは、米国株式市場の動きが冴えないことです。NYダウは7/20の高値18,137ドルから7/27安値17,399ドルまで下げてしまいましたが、その後の動きも冴えません。ドル高を背景に国際企業の一部で業績不透明感が強いことが背景です。中国ビジネスの先行きを懸念されている企業もあります。5〜6月には1バレル60ドル前後で推移していた原油先物相場(WTI)が下げ始め、再び1バレル50ドルの大台を割ったことで石油株が下げたことも響きました。
このように、海外株安や原油相場の下落が日経平均株価の頭を押さえている形ですが、国内に問題がない訳ではありません。7/20から発表された2015年4〜6月期決算発表では、想定通りとはいえ、企業業績見通しの上方修正を発表する企業数はわずかで、むしろファナック(6954)が予想を下方修正するなど、ネガティブなニュースが目立ちました。日経平均株価の方向感に強い影響を与える日経平均予想EPS(一株利益)は7/9に1,273円まで増えた後、8/3には1,252円となっており、現状では企業業績が日経平均株価の押し上げ材料になっていないことを裏付けています。
例年8/20頃までは、夏休みの本格化もあり、機関投資家や海外投資家など、市場参加者が減りやすい傾向があります。主要な買い手が減ってしまうこの時期、日経平均を上昇に導く市場エネルギーも乏しいのが現実です。日経平均は当面は揉み合いを余儀なくされる可能性があります。
図1:日経平均は反発したものの、6/24高値は抜けず
図2:不安定な推移が続く上海総合指数
- ※Bloombergデータをもとに、SBI証券が作成
高寄与度銘柄が日経平均上昇にブレーキ? |
日経平均の頭を押さえている要因のひとつに、日経平均・高寄与度銘柄上位の値動きが冴えないことがあげられます。表1は、日経平均が7/9安値後の戻り高値20,841円(7/21)を付けてから8/3まで、平均株価及び高寄与度銘柄上位の値動きを追ったものです。この間、日経平均は293円下げましたが、高寄与度銘柄上位10銘柄でそのうちの141円分を占めていました。特に、業績予想の下方修正を発表したファナック(6594)は149円安分の影響を与えてしまいました。この他、日東電工(6988)も、決算発表後に大きく下げ、日経平均株価の頭を押さえてしまっています。日経平均が293円下げたうち、ファナックの影響は149円で、日東電工は50円ですから、2銘柄で日経平均株価下落分の3分の2が説明できてしまう形です。
このように、日経平均については、その値動きに影響しやすい銘柄の下落率が大きく、下げが増幅されてしまったという面がありそうです。7/21〜8/3の日経平均下落率は1.4%ですが、東証一部全体の動きを示すTOPIXの下落率は0.9%でした。その結果、日経平均をTOPIXで割って求められるNT倍率はこの間に低下してしまいました。(図3)
表1:日経平均寄与度上位銘柄が総じて軟調(7/21〜8/3)
- ※Bloombergデータをもとに、SBI証券が作成。2015/7/21と2015/8/3における日経平均及び採用銘柄寄与度上位10銘柄の動きを追ったもの。寄与度は、日経平均変動幅のうち、当該銘柄による変動額。
図3:高寄与度銘柄の不振でNT倍率も低下
- ※Bloombergデータをもとに、SBI証券が作成
【ココがPOINT!】日経平均の上放れに備える!〜日経平均採用銘柄の業績は拡大傾向 |
日経平均採用銘柄で、一部の高寄与度銘柄が業績不透明感等により、株価を大きく下げ、それが日経平均にも影響していることは確かです。しかし、過度の懸念は不要とみられます。
表2は、7/20から8/3までに決算を終えた日経平均採用銘柄(3月決算)について、営業利益をみたものです。99銘柄の集計では、第1四半期(2015年4〜6月期)の営業利益は前年同期比27.8%の増益となっています。また、通期(会社計画ベース)では18%程度の増益が見込まれています。これは、東証一部全体の主力企業の動向と同一です。企業業績の拡大は継続しており、株価はそれを反映して上昇するとみられます。
今年度、アナリストの予想では更に増益率が高くなるとの予想(表2)です。なお、表2の計算には含まれていませんが、8/4の取引終了後に決算発表を実施した時価総額トップ企業トヨタ(7203)の第1四半期営業利益は前年同期比9.1%増でした。通期も会社計画では1.8%増益の見通しです。
日経平均の予想EPS(一株利益)は一時1,270円台まで上昇した後、足元は1,250円台で伸び悩んでいます。しかし、多くの機関投資家や海外投資家が市場に戻る8月下旬以降は、EPSの上積みを期待し、日経平均株価が上昇に転じる可能性が大きそうです。
表2:日経平均採用銘柄(3月決算)
- ※Bloombergデータ、会社公表データをもとにSBI証券が作成。日経平均採用銘柄のうち、3月決算で8/3までに決算を終えた銘柄を対象に営業利益を集計した。会社予想・市場予想(コンセンサス)ともにデータが取れる企業を対象とした。
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