豪ドルの見通し
前回(9月2日)のRBA理事会ではややハト派に戻ったか?
9月2日に開催された前回のRBA理事会では政策金利は維持されました。声明の中では、「商品価格は歴史的にみて依然高いものの、豪にとって重要な品目の一部は今年下落している」「失業率が継続的に低下するには時間を要する見込みだと中銀は引き続き判断している」と述べた事が伝わっており、依然として緩和的な政策が必要と考えていると解釈できます。しかし、翌3日にスティーブンスRBA総裁は「既に高水準となっている住宅価格を更に膨張させるのは、失業率低下を達成するための経路として賢いものではない」と述べた事が伝わっており、更なる金融緩和には否定的であると見ることができます。以上より、金融政策は目先維持される見込みが強いと考えられます。
住宅価格は上昇基調
スティーブンスRBA総裁が述べていた住宅価格と失業率に注目してみると、失業率は上昇(すなわち、雇用を取り巻く経済情勢は悪化)しているにも関わらず、住宅価格は上昇しています。住宅価格の政策金利を比較してみると、2011年第2四半期から2012年第1四半期までは、政策金利引き下げに伴い失業率が抑えられている傾向にあり、2012年第1四半期以降、失業率は上昇し住宅価格も上昇しています。この様な状況下では更なる金融緩和を期待する事は難しく、今後はこれらの経済指標と中央銀行のコメントに注目する事が出来そうです。
豪州失業率・住宅価格・政策金利の推移(四半期ごと)
左軸:住宅価格(2009年4Qを100として算出)、右軸:期間平均の失業率・政策金利
作成:SBIリクイディティ・マーケット社
今後発表予定の経済指標
作成:SBIリクイディティ・マーケット社
直近の豪ドル/円の動き
出所:総合分析チャート 4時間足
NZドルの見通し
4会合連続して金融政策の変更を実施
前回、7月24日に開催されたニュージーランド準備銀行(RBNZ)理事会は、事前予想の通り金融政策を変更、政策金利の0.25%利上げを実施し年率3.50%としました。声明文には「インフレ期待を引き続き抑制することが重要」と記すとともに、商品価格の下落を背景とした景気の減速がみられるとの見方を示し、今後の利上げは「これまでの利上げの効果と経済指標の強さによる」としながら、過去4会合連続して変更されてきた金融政策について今後は一旦見合わせる意向を示しています。また、現在の為替レートについて「現在のNZドル高は維持できない、今後NZドルが大幅に下落する可能性がある」と記し、NZドル高をけん制しています。
主要輸出品の価格下落は気になるが、景気は良好か・・・今後の見通しは?
足元の経済情勢は、第2四半期小売売上高は前期比1.7%増加し、前期改定値とともに市場予想を上回りました。また、雇用関連指標も若干の減少がみられましたが、労働参加率は史上最高水準にとどまり、リーマンショック以降は減少傾向だった第2四半期失業率も前回値から改善を見せました。一方で、ニュージーランドの輸出金額の構成比が2割強を占める乳製品価格が下落しており、続落する場合は少なからず為替相場へ影響することが考えられます。
今後複数回の会合では金融政策が据え置かれる見通しであるのに加えて、声明がNZドル高を強くけん制したことで、目先NZドル高をためらう材料として意識されることになりそうです。しかしながら、年末から利上げを再開するとの見方が複数の市場関係者の間で囁かれていることに加え、経済指標が示す景気自体は好調であることから、国内要因が発端となってNZドルが急落する事は考えにくいようにも思われます。ただ地政学リスクの高まりに加え、米国の金融政策の変化に伴うNZドル相場の影響は十分に注意する必要があるでしょう。
Global Dairy Trade - 乳製品価格インデックス(隔週)
出所:bloomberg
今後発表予定の経済指標
作成:SBIリクイディティ・マーケット社
直近のNZドル/円の動き
出所:総合分析チャート 4時間足