【特集】豪ドル・NZドルで利益を狙うためのポイント
昨今の外国為替市場では、ユーロ、日本円、英ポンド、スイスフランといった主要国通貨以上に、豪ドル、カナダドル、南アフリカランドを中心とする、いわゆる「資源国通貨」の取引量が年々増加傾向となっています。そこで、とりわけ自国市場の取引時間とアジアの主要市場の取引時間がほとんど重なるため、アジア時間での動きが大きくなりやすい「豪ドル」と「NZドル」の変動要因について記してみたいと思います。
(レポートでは、NZドルも資源国通貨のひとつと説明されていますが、ニュージーランドの主要産業は酪農、畜産、林業であり、一般的に資源、コモディティーとして定義される農産物、鉱物、エネルギーとは認められず、厳密には資源国通貨とみなされないこともあります)
資源国通貨とは
資源国通貨とは「豊富な資源を有している国の通貨」を意味し、国全体の輸出において資源輸出の占める割合が高い国の通貨が資源国通貨と呼ばれています。そのため、アメリカのように豊富な資源を有している国の通貨がすべて資源国通貨と呼ばれているわけではありません。 では、具体的に資源国通貨の国にはどのような国があり、どのような資源が生産されているかを確認しましょう。下の表は、代表的な資源国とその国で産出されている資源を表しています。
通貨 |
資源 |
---|---|
豪ドル |
鉄鉱石、石炭、石油、金、ボーキサイト、ウラン、農産物 |
NZドル |
農産物、畜産物 |
加ドル |
石油、天然ガス、石炭、金、ウラン、農産物 |
南アランド |
金、プラチナ、ダイヤモンド |
このように、4か国では様々な資源が産出されています。そして、この中で最も注目を集めている資源は「石油」と「金」であり、資源国通貨の変動にも大きい影響を与えています。その理由は、先述したように、輸出の中で資源輸出の占める割合が大きく、国際的に資源の価格が高くなればなるほど、輸出で稼げる利益が増え、国内経済に好影響を与えるからです。では、次章で実際に資源と資源国通貨の価格変動を確認してみましょう。
豪ドルで利益を狙うためのポイント
豪ドル取引のポイントですが、最初にひとつお話しておきたいと思います。それは、豪ドルの値動きと金の値動きに高い相関性があるのですが、昨年の夏以降その相関性が崩れる場面が増えており、中長期で金と豪ドルの相関性を頼りにした取引が現時点では適当ではない点です。その相関性の低下については下のチャートを参考にしてください。
図1 金価格と豪ドル/米ドルの値動き(2013年8月〜)
(出所:ブルームバーグ)
図2 金価格と豪ドル/米ドルの値動き(2014年1月〜)
(出所:ブルームバーグ)
いずれ金との相関性が回復する局面に戻ることもあると思いますが、下記のポイントについては、豪ドル取引を行う準備段階として、当面変わらない基本情報と思われますのでインプットしておいてください。
また、オーストラリア準備銀行(RBA)が長きにわたって政策目標の中心に掲げているのが物価の安定です。そのため、金融政策の維持・変更の決定のためには、消費者物価指数が最も重要な経済指標となっています。当然、豪ドルは敏感な反応をみせますが、問題はこの消費者物価指数の発表が3ヶ月に一度のため、消費者物価指数の発表を基に取引できる機会が年間4回しかないことです。
勿論、毎月(1月以外)開催されるRBA理事会も重要なイベントになります。次に注目度が高い指標が豪雇用統計です。今年も3月と4月の市場予想を上回った結果に、豪ドルが大きく上昇しました。その他、建設住宅関連、貿易収支など多くのオーストラリアの経済指標の発表がありますが、その時々の注目度や予想値と大きくかけ離れた場合には鋭く反応しますが、むしろ最大の貿易相手国である中国の製造業PMIや貿易収支の発表時に反応が大きくなることもあります。中国の経済指標に豪ドルが敏感に反応するのは、主要輸出産品の鉄鉱石や石炭の輸出量が中国景気の先行き展望に大きく比例することが主要因ですが、鉄鉱石や石炭価格自体の変化にはそれほど神経質な反応を見せません。また、ユーロ圏との貿易量もかなりのウエイトを占めており、ユーロ圏経済の動向に反応するケースもあります。
豪ドルは資源国通貨の代表格であると同時に、世界中の投資家から高金利通貨としての人気が高いことが特徴です。そのため、時として景気対策といった本来の目的とは少し異なり、単純に金利の上昇と下落による需給主導による豪ドル売買の影響を受け易くなります。外貨預金や豪ドル建ての債券、投資信託絡みの取引が多いのも特徴です。一旦こうした資産流失の噂が広がると、豪ドルの下落期間が長引くことにも注意が必要です。
オーストラリアは国の四方を海に囲まれ、地政学リスクが低いことも投資対象国・通貨として高く評価されている理由の1つです。指標の部分でも触れましたが、中国との輸出入依存度が高いのですが、これは同時にリスクでもあります。個人投資家の方々には情報が入り難い材料になりますが、10年位前から欧米のファンド勢は、ユーロと豪ドル、豪ドルとカナダドルをお互いにヘッジさせるポジションを持つことが多く、ユーロやカナダドルが大幅に変動した際には、豪ドルの持ち高調整をしてきます。これらの通貨の変動に注目してみても良いでしょう。
表1 豪ドルが反応を示しやすいイベント材料
イベント材料 |
重要度 |
---|---|
スティーブンスRBA総裁など金融当局者による為替レートへの言及 |
重要 |
豪雇用統計(原則毎月第2木曜日)、消費者物価指数(3ヶ月に一回) |
最重要 |
豪RBA理事会(原則毎月第1火曜日) |
最重要 |
中国製造業PMI、中国HSBC製造業PMI、中国貿易収支、中国GDP |
重要〜最重要 |
IMM通貨先物ポジション動向 |
やや重要 |
(出所:SBIリクイディティ・マーケット)
表2 オーストラリアの主要輸出入国(2012年)
輸出 |
輸入 |
||
---|---|---|---|
国・地域 |
構成比(%) |
国・地域 |
構成比(%) |
中国 |
29.5 |
ASEAN |
18.8 |
日本 |
19.3 |
中国 |
18.4 |
ASEAN |
10.4 |
EU27 |
17.6 |
韓国 |
8.0 |
米国 |
11.5 |
EU27 |
6.9 |
日本 |
7.9 |
(出所:オーストラリア統計局)
豪ドルで利益を狙うためのポイント:番外編
豪ドルは他の通貨に比べて、「高金利通貨」です。スワップ狙いのチャンス!どのような仕組みになっているのか、解説しています。 |
NZドルで利益を狙うためのポイント
隣国の豪ドル人気には及ばないものの、近年NZドル取引を手掛ける投資家が相当増えて来ました。NZドル取引は豪ドル取引と若干趣きが異なり、ニュージーランド準備銀行(RBNZ)金融政策会合の結果が午前6時に発表されるなど、自国中心の内向き相場となっています。勿論、世界中24時間主要通貨同様にいつでも価格提供が受けられ取引も容易に出来るようになってはいますが、東京勢が参入してくる前の時間に一勝負終えてしまうようなこともよくある点には気をつけたいところです。また、稀に流動性が低くなり価格提示条件が悪化する局面もあるので注意が必要です。
NZドルが一番敏感に反応する経済指標は、四半期消費者物価指数です。毎月発表される経済指標は、小売売上高、貿易収支、住宅建設許可などがありますが、消費者物価が重要視されていることからも窺えるように、食品価格指数の結果にNZドルが大きく変動する場面がままあります。
ニュージーランドはオーストラリア同様、先進国に比べ相対的に金利が高いことが特徴ですが、慢性的な経常収支赤字を埋めるために外貨の流入を拡大させる必要に迫られていることやインフレ懸念が常に高いことが理由になっています。そのため、どうしても金利動向には敏感な反応を見せます。
オーストラリアにとって、中国が貿易の主要相手国となっているように、ニュージーランドにとっては、オーストラリアが最大の貿易相手国となっており、NZドル相場はオーストラリア経済の好不調の波に大きく影響を受けます。また、オーストラリアと同様、中国も主要貿易相手国になっていますが、ニュージーランド経済の規模からは、オーストラリアほど大きな影響を受けるわけではないとの解釈によって、NZドルが極端な反応を示すことは多くありません。
ニュージーランドは日本と同じ地震多発国なため、地震直後にNZドルが下落する場面がしばしば起こっています。災難に際して当該国の通貨を売るのは自重したいものですが、既に買い持ちとなっている場合は気をつけたいところです。
表3 NZドルが反応を示しやすいイベント材料
イベント材料 |
重要度 |
---|---|
ウィーラーRBNZ総裁など金融当局者による為替レートへの言及 |
最重要 |
RBNZ金融政策委員会 |
最重要 |
四半期消費者物価(3ヶ月に1回)、食品価格指数 |
重要 |
豪貿易収支 |
やや重要 |
(出所:SBIリクイディティ・マーケット)
表4 ニュージーランドの主要輸出入国(2012年)
輸出 |
輸入 |
||
---|---|---|---|
国・地域 |
構成比(%) |
国・地域 |
構成比(%) |
オーストラリア |
21.5 |
中国 |
16.3 |
中国 |
14.9 |
オーストラリア |
15.2 |
米国 |
9.2 |
米国 |
9.3 |
日本 |
7.0 |
日本 |
6.5 |
韓国 |
3.4 |
シンガポール |
4.5 |
(出所:JETRO)
NZドルで利益を狙うためのポイント:番外編
NZドルは他の通貨に比べて、「高金利通貨」です。スワップ狙いのチャンス!どのような仕組みになっているのか、解説しています。 |
今後の注目ポイントカレンダー
表5 4月から5月のオーストラリアとニュージーランド関連の経済指標とイベント予定
日付 |
時間 |
国 |
主要経済指標・イベント |
---|---|---|---|
4月16日 |
7:45 |
ニュージーランド |
CPI(前期比) |
11:00 |
中国 |
小売売上高(年初来/前年比) |
|
鉱工業生産(年初来/前年比) |
|||
GDP(前年来/前年比) |
|||
4月17日 |
10:30 |
オーストラリア |
NAB企業信頼感 |
4月23日 |
10:30 |
オーストラリア |
CPI(前期比) |
10:45 |
中国 |
HSBC中国製造業PMI |
|
4月24日 |
6:00 |
ニュージーランド |
RBNZ政策金利発表 |
4月29日 |
7:45 |
ニュージーランド |
貿易収支 |
5月1日 |
8:30 |
ニュージーランド |
AiG製造業指数 |
10:00 |
中国 |
製造業PMI |
|
10:30 |
オーストラリア |
輸出・入物価指数(前期比) |
|
5月2日 |
10:00 |
オーストラリア |
HIA新築住宅販売(前月比) |
10:30 |
オーストラリア |
PPI (前期比/前年比) |
|
12:30 |
オーストラリア |
住宅建設許可件数(前月比/前年比) |
|
5月3日 |
10:00 |
中国 |
非製造業PMI |
5月5日 |
8:30 |
オーストラリア |
AiGサービス業指数 |
10:30 |
ANZ求人広告件数(前月比) |
||
10:45 |
中国 |
HSBC中国製造業PMI |
|
5月6日 |
10:30 |
オーストラリア |
貿易収支 |
13:30 |
RBA政策金利発表 |
||
5月7日 |
7:45 |
ニュージーランド |
失業率 |
雇用者数増減(前期比/前年比) |
|||
労働参加率 |
|||
10:30 |
オーストラリア |
小売売上高(前月比/前期比) |
|
10:45 |
中国 |
HSBC中国サービス業PMI |
|
5月8日 |
10:30 |
オーストラリア |
雇用統計 |
労働参加率 |
|||
- |
中国 |
貿易収支 |
|
5月9日 |
10:30 |
中国 |
PPI 前年比 |
消費者物価指数(前年比) |
|||
5月10日 |
10:00 |
オーストラリア |
消費者インフレ期待指数 |
5月12日 |
10:30 |
オーストラリア |
NAB企業信頼感/景況感 |
5月13日 |
10:30 |
オーストラリア |
住宅価格指数(前期比/前年比) |
14:30 |
中国 |
小売売上高(年初来/前年比) |
|
鉱工業生産(年初来/前年比) |
|||
5月14日 |
7:45 |
ニュージーランド |
小売売上高(前期比) |
(出所:SBIリクイディティ・マーケット)