2019年7月前半1、2週目は日経平均のレンジが21754.27 - 21533.48 と、わずか220円強と極めて低水準。6月末のG20明け、7月1日(月)は大きく窓を開けてギャップアップスタートし、目先22,000円を目指すかと思いきや上値重し。では「窓埋め」するのか・・・といっても窓埋めもせず。現物株の出来高も2兆円割れが続き、早めの「夏枯れ相場」となっています。低調な地合いを活発な市場を期待したいものです。
「窓埋め」という言葉がでてきましたが、今回は「窓埋め」について日経平均の傾向を検証していきます。
まず「窓埋め」とは何かを簡単に説明します。下図をご覧ください。
図の右上付近に「窓」と書かれた、ローソク足とローソク足の間に値を付けていない価格帯があります。これが「窓」(ギャップ)と呼ばれます。その後、窓を開ける前の価格まで戻ることを「窓埋め」といいます。窓埋めのターゲットとなる価格は重要な節目となり、レジスタンス、サポートラインと考えられることが多いこと。そして「窓埋め」というチャートリーディングが一般的になっていることから、窓埋めは多くの市場参加者に注目され、多くの金融市場で短期売買から長期のトレードにも幅広く使われています。
- ※ハイパーSBI,日経平均日足チャート(ピンクラインは 25日単純移動平均線)を使用
「窓埋め」には大きく2つの考え方があります。1つは窓が埋まる位置を前のローソク足の「終値」とする場合、もう1つはギャップアップなら「高値」ギャップダウンなら「安値」とする場合があります。考え方の違いで、どちらが正しい、間違いというものではありません。以降は前者の考え方で話を進めます。
相場には「埋めない窓は無い」という格言があります。
多くのチャートを見れば埋めない窓は当然ながら存在しますが、そう言い切るほど、窓を開けると埋める傾向が高いと考えられていた、先人の知恵と推測されます。
しかしながら、「窓」が開くということは、窓を開けた方向の勢力が強く表れたとテクニカル分析的には解釈できるもので、本来は窓を開けた方向に順張りで仕掛けるというのがセオリーです。
では、窓はどのくらいの確率で埋めるのかを、日経平均過去10年のデータを使って検証してみます。まずは、窓を開ける確率(ギャップアップ、ギャップダウンの確率)を調べてみます。
ギャップアップの定義は、前日のローソク足が陽線で、前日終値より高く寄付いた場合、
ギャップダウンの定義は、前日のローソク足が陰線で、前日終値より低く寄付いた場合とし、窓埋めは当日の高値と安値の間に窓埋めの価格(前日終値)が含まれることを条件としています。
・ギャップアップ、ギャップダウンの確率検証
検証データ:日経平均株価指数10年
2008年1月4日(始値:15,155.73円)〜2017年12月29日(終値:22,764.94円)
検証日数:2451営業日
・結果
ギャップアップ:644日(26.3%)
ギャップダウン:611日(24.9%)
窓開け無し:1196日(48.8%)
約半数が窓を開ける確率となりました。ギャップアップとギャップダウンでは、ギャップアップする確率の方が高くなっています。これは日経平均が検証期間の2008年から2017年末までに、日経平均が約7,500円強上昇していることがその要因と考えられますが、検証期間の終了日を2014年7月11日(終値:15,164.04円)と、検証データの始値と変わらない期間にしても、ギャップアップ、ギャップダウンの比率はほぼ同じです。
これは、日経平均は前日終値と比べてギャップアップしやすい傾向があると考えられます。
次に、窓開け後、当日中に窓埋めした確率を算出します。
ギャップアップして当日中に窓埋めした日:644日のうち、273日(42.4%)
ギャップダウンして当日中に窓埋めした日:611日のうち、301日(49.3%)
当日中に埋まる確率は、ギャップアップ、ギャップダウン合算して45.7%になりました。
埋めない窓だらけです。当日窓埋めしなかった窓がいつ埋まるのか、窓開けした日から50日後まで、
窓埋めする確率をグラフにすると、次の図のようになります。
ギャップアップして5日目までに窓埋めする確率は444日(68.9%)、ギャップダウンは463日(75.8%)。50日経っても窓埋めしなかったギャップアップは12.3%、ギャップダウンは7.0%です。
当日に窓を埋めないと、その後に埋める可能性は低くなっていきます。
例えばギャップアップ後、当日窓埋めせずに5日目までに埋める確率は46.1%、ギャップダウン後、当日窓埋めせずに5日目までに埋める確率は52.2%となります。
ギャップアップ、ギャップダウンの傾向をまとめると、
・ギャップダウンよりギャップアップする確率の方が高い
・窓埋めする確率はギャップアップよりギャップダウンの方が高い。
・当日中に窓埋めする確率は45.7%(50%未満)である
・5日経過しても約3割の確率で窓埋めしない→ギャップが出た方向に強い。
当日中に埋める確率が50%以下であり、その後の経過を見ても「埋めない窓はない」というには、「埋めない確率が高い」というのが所感です。
・窓開け当日の傾向
それではより具体的に、日経225先物ミニのデータを使って、窓埋めを狙った場合の取引検証を次の4パターン行います。
1.ギャップアップ窓埋め狙い(窓埋めで利食い)
ギャップアップした場合、寄付き「売り」窓埋めの価格で手仕舞い。日中引けで強制手仕舞い。
2.ギャップアップ窓埋め狙い(日中引けまで保有)
ギャップアップした場合、寄付き「売り」日中引けで強制手仕舞い。
3.ギャップダウン窓埋め狙い(窓埋めで利食い)
ギャップダウンした場合、寄付き「買い」窓埋めの価格で手仕舞い。日中引けで強制手仕舞い。
4.ギャップダウン窓埋め狙い(日中引けまで保有)
ギャップダウンした場合、寄付き「買い」日中引けで手仕舞い。
検証データ:日経225ミニ四半期期近(日中足のみ)
2008年1月4日(始値:14870円)〜2017年12月29日(終値:21660円)
検証日数:2451営業日
結果は次の表のとおりです。
窓埋めする確率は50%を割っていたものの、勝率はどのパターンも50%を超えました。
ルール1の収益はマイナスになったものの、それ以外はギャップアップ、ギャップダウン当日は、窓を埋める方向に動く傾向が強く、窓埋め価格で手仕舞いするよりも、引けまで保有していた方が良い結果となりました。特にギャップアップした場合、その傾向が強いです。
・当日引け以降の傾向
短期的にはギャップ調整の傾向が強いとなりましたが、前述したように「窓」が開くということは、窓を開けた方向の勢力が強く表れたと解釈できるもので、本来は窓を開けた方向に順張りで仕掛けるというのがセオリーです。
順張り方向で仕掛けた場合の結果を調査するため、当日日中引けから窓を開けた方向に5日間ショートスイングを検証します。
ギャップアップとギャップダウン、当日中に窓埋めした、しない合計4パターンを検証します。
5.ギャップアップ当日引け買い(当日窓埋め達成)
ギャップアップ日、日中引け「買い」5営業日後日中引けで強制手仕舞い。
6.ギャップアップ当日引け買い(当日窓埋め非達成)
ギャップアップ日、日中引け「買い」5営業日後日中引けで強制手仕舞い。
7.ギャップダウン当日引け売り(当日窓埋め達成)
ギャップダウン日、日中引け「売り」5営業日後日中引けで強制手仕舞い。
8.ギャップダウン当日引け売り(当日窓埋め非達成)
ギャップダウン日、日中引け「売り」5営業日後日中引けで強制手仕舞い。
結果がこちら。
ギャップアップ、ギャップダウン共に「窓埋めしなかった」パターンの方が概ね良い結果でした。「窓埋めできなかった」ということは、ギャップを開けた方向に強いと考えられますので、検証の結果も順当な結果となりました。
10年の日経225先物のデータを使った検証では、次の3つの傾向が確認できました。
(1)ギャップダウンより、ギャップアップしやすい
(2)短期は窓埋め方向
当日中に窓を埋める確率は50%以下。窓開けした日の日中は、引けにかけて窓を埋める方向に強い傾向がある。
(3)中長期は窓開け方向に順張り
窓開けの引け後以降は、窓を開けた方向に強い傾向がある。特に当日中に窓を埋めない場合は、より強い。
寄付きで窓開けを確認できた場合、当日中は「埋めない窓は無い」を念じて窓埋め方向に仕掛け引け手仕舞い。窓埋めしていなかったら、ドテンして5日間保有するのが、今回の検証で最大のパフォーマンスを出すパターンになります。
「埋めない窓はない」という今回の検証から、際立ったエッジは確認できませんでしたが、さらなる検証の余地として、窓の開けた値幅によるバイアスや、出口(利食い、ロスカット)を詰めていくと、パフォーマンスの向上が見込めそうです。
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