3/1(木)の米国市場では、NYダウが前日比420ドル安と3営業日連続で大幅安となりました。ダウ平均の下げは3営業日累計で1,100ドルに達し、その直前での3連騰による上げ幅911ドルを帳消しにしてしまいました。トランプ米大統領が鉄鋼およびアルミ製品の輸入に対し輸入関税を課す方針であることが報じられ、保護主義の世界的拡大が懸念されたことが要因とみられます。
トランプ大統領は来週にも鉄鋼製品およびアルミニウム製品への輸入関税導入を実施するとのことです。税率は鉄鋼製品が25%、アルミニウム製品が10%と見られます。大統領は、昨年4月に通商拡大法232条に基づき、商務省に対し鉄鋼とアルミニウム製品の輸入が米国に及ぼす影響について調査を命じていました。その調査結果が本年1月までに終了し、その結論は鉄鋼、アルミニウムの輸入については、双方とも米国の安全保障を損なう恐れがあるとの内容でした。この結果、大統領は鉄鋼に関しては4/11、アルミニウムに関しては4/19までに輸入是正措置を決定し、各々15日以内に措置の実施を行うことになっていました。
来週の発表まで輸入関税導入の詳細は不明です。関税適用が除外される国があったり、品種による関税免除などがあったり、関税とは別に輸入割り当て数量を課したりする可能性があります。米国の関税導入についてトランプ大統領の就任に際し、保護主義政策が世界経済のリスクになるとの指摘がありましたが、今回の輸入関税導入はそのリスクが顕在化したものといえます。
表1は鉄鋼製品、表2はアルミニウム製品の米国の国別輸入量です。鉄鋼製品ではカナダ、ブラジル、韓国などが上位を占めます。かつては中国の鉄鋼製品の輸入が多かったのですが、既にアンチダンピング課税を適応され近年の輸入量は抑制されています。アルミニウムはカナダのシェアが圧倒的に高く、ついでロシア、UAE、中国が続きます。
これらの上位国のメーカーにとっては、輸入関税を課せられた場合大きな影響が出そうです。また米国への輸出が減少した場合、他の輸出先へ振り向ければ、世界的な需給にとっては緩和要因となる懸念があります。また、アメリカの鉄鋼、アルミ産業にとっては、今回の関税導入は競争力のうえで大きなメリットとみられますが、米国の消費者・仕入先の企業にとっては、物価上昇を招くことにもなる点に注意を要します。ただ、自動車用薄板などは、そのほとんどが米国製とみられ、その分同業界への影響は限定されることになりそうです。
なお、報道等からは中国を「標的」とありますが、表1からも明らかな通り、少なくとも鉄鋼に関しては中国製の輸入は少ないのが現状です。輸入関税が広く課された場合はむしろ、カナダ等の影響が大きく、同国から報復関税を受ける可能性もあります。今回の件はいまだ、流動的な面も多いのが現状だと思われます。無論、中長期的に保護主義的な動きが高まるとすれば、世界経済さらには日本経済への影響も想定されそうです。ただ現状では、日本の景気・企業業績に大きな影響を与えるとは考えにくく、この問題による日本株の下げは長続きしないと考えられます。
2月以降、世界の株式市場を揺さぶった米長期金利の上昇は落ち着きつつあり、株式市場の波乱が続く可能性は小さそうです。日経平均株価の予想EPS(一株利益)は3/1(木)時点で1,690円と計算されます。アベノミクス相場での予想PERの最低は12.6倍であり、
1,690円×12.6倍=21,294円
と計算され、3/2(金)の日経平均株価は取引時間中にこれをすでに下回っています。また、200日移動平均線が21,173円にあり、これも取引時間中に下回っています。日経平均株価はすでに下値の節目に届いている可能性があり、来週以降反発に転じる可能性も大きそうです。
表1:米国の鉄鋼製品輸入量(万トン・%)
国・地域 |
輸入量 |
比率(%) |
---|---|---|
カナダ |
580 |
16.1 |
ブラジル |
468 |
13.0 |
韓国 |
365 |
10.2 |
メキシコ |
325 |
9.0 |
ロシア |
312 |
8.7 |
トルコ |
225 |
6.3 |
日本 |
178 |
5.0 |
ドイツ |
137 |
3.8 |
台湾 |
125 |
3.5 |
インド |
85 |
2.4 |
世界 |
3,593 |
100 |
表2:米国のアルミニウム製品輸入量(万トン・%)
国・地域 |
輸入量 |
比率(%) |
---|---|---|
カナダ |
248 |
43.0 |
ロシア |
63 |
10.9 |
UAE |
57 |
9.9 |
中国 |
55 |
9.5 |
バーレーン |
21 |
3.7 |
アルゼンチン |
18 |
3.2 |
その他 |
115 |
19.8 |
世界 |
576 |
100 |
- ※JETRO、米商務省データをもとにSBI証券が作成。比率は全輸入量に対する比率(%)
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