日経平均の「膠着状態化」は続くのか?
「予想PER14倍」を下値抵抗としつつも、14,500〜15,000円には各種抵抗ライン
日経平均株価は低水準での揉み合いを余儀なくされています。同平均株価は3月7日に、15,274円まで水準を回復させていましたが、同月20日には、14,224円まで下落してしまいました。
ロシアが援護しているとみられているクリミア自治共和国が、ウクライナからの「独立」を住民投票で決めたことで、ロシアと欧米諸国の間で緊張が高まっていることが、投資家のリスク回避姿勢を強める大きな要因となっています。また、中国では一部の地域で地価の下落が本格化する兆しを見せている上、社債市場で初のデフォルト(債務不履行)が発生するなど、経済への不透明感が色濃くなりつつあります。また、基本的には好調とされる米国経済についても、寒波の影響から抜け切れたとは言い切れず、発表される経済指標はまだら模様の状態になっています。
こうした中、日経平均株価は引き続き「予想PER14倍ライン」が、重要な下値支持線になっています。昨年6月13日に安値を付けた時の予想PERが14.02倍、2月4日に安値を付けた時が同14.03倍となっていましたが、この3月20日に安値を付けた時は、同13.94倍となりました。翌営業日である24日には株価が急反発しましたので、ぎりぎり下値支持線として機能していると考えてよいでしょう。
日経平均株価は、重要な下値支持線に支えられつつも、数多くの不透明要因に覆われ、上値も限定的になってしまっているのが現状のようです。テクニカル的には、図1にもある通り、13週移動平均(24日現在15,132円=ここでは日足の65日移動平均を使用)が強い上値抵抗ラインになっていますが、26週移動平均(日足の130日移動)、25日移動平均も上値抵抗ラインになっている可能性があります。そして足元の相場では、200日移動平均(24日現在14,505円)が強い抵抗ラインとなり、それを意識してか、14,500円を突っかけては跳ね返される展開が続いています。
図1 日経平均株価(日足)と主要移動平均線
Bloombergデータ・日経平均データをもとにSBI証券が作成。
4月1日はボラティリティの高まりが想定される
表1は、今後の主な経済指標(日本、米国、中国、欧州)について、その発表予定等を示したものです。上記した通り、かなり膠着感の強い株式相場ですが、実際は、それが続くと決め付けるには、大きなリスクを伴うと考えられます。
3月下旬は、米耐久財受注(26日)、中国工業利益(27日)と言った経済指標が注目ですが、トルコの統一地方選挙(30日)についても、注意が必要ではないでしょうか。政権の汚職問題等、政治に不安定化の兆しが見えており、エルドアン首相に不利な結果が出た場合、トルコリラ安を経て、世界の株式市場に影響が出る可能性があります。
そして、4月1日(火)は重要日程が目白押しです。最も重要なのは、我が国で消費税率の引き上げが、この日から実施されることで、駆け込み需要の反動の程度が気になる所です。従って、この日に発表される日銀短観では、先行きに対する企業の見通しが最も重要なポイントになるかもしれません。同じ日の午前中には、中国の製造業PMIが発表されることも忘れてはいけないと思います。中国経済への不透明感が強いだけに、注目度は高いと言えます。即ち、この日の午前中は、ボラティリティの高い時間帯になるかもしれません。そして、日本時間夜には米国のISM製造業指数の発表へと続きます。
4月4日(金)にはいよいよ、米雇用統計の発表が行われる予定です。米国の寒波も一巡し、雇用情勢も回復に向かう可能性が大きそうです。2月の非農業部門雇用者数は前月比17.5万人増でしたが、3月は同18.8万人というのが、3月下旬段階での市場コンセンサスです。FOMCのたびごとに債券買い入れ額を100億円ずつ縮小することについては、市場も織り込んだように思います。FRBは、失業率のみならず、インフレ率などもみながら、金融政策の先行きを決めてゆく柔軟な方針を示していますので、今回の雇用統計は、数字が強ければ素直に、株式市場のプラス材料になる可能性が大きいと思います。
表1 重要なタイムスケジュール
Bloomberg、各種報道等をもとにSBI証券が作成。
日程の記載は、文中も含め全て日本時間に修正しており、新聞等の記載と異なる場合もある。
「乖離」に注意
4月の月替わり・年度替わりに向け、株価がどう動くのかを考える時に、前項でも触れた「消費税率の引き上げ」が大きなポイントであることは確かです。
1997年4月の消費税引き上げ時の経験則を再び繰り返すならば、株価は「引き上げ前」に調整し、「引き上げ後」は上昇する可能性があると言えます、また、不良債権問題、金融危機、アジア通貨危機に襲われた1997年と異なり、アベノミクスが進捗する2014年は投資環境が異なると思います。確かに、中国を含む新興国経済に不安が生じているという1点では、似ているようにも思われますが、日本経済の方向感は明らかに異なるとみられます。
図2は、エコノミストによる我が国の2014年4〜6月期・実質GDP成長率(前期比・年率)見通しについて、その市場コンセンサスの推移をみたものです。年末時点では、▲4.5%と大きな落ち込みが「覚悟」されていましたが、足元では、▲3.7%程度に済みそうとの見方が有力になりつつあります。仮に、エコノミストが正しく、株式市場/先物・オプション市場が慎重な状態を続けるならば、その間には大きな「乖離」が生じ、株価が「上への波乱」となる可能性も出てくるとみられます。
なお、膠着感の強い株式相場を尻目に、上昇を続けている「指数」があります。日経平均をTOPIXで割って算出されるNT倍率です。2月17日には12.06倍の安値でしたが、3月24日には12.44倍まで上昇しました。
図3は、日経平均とTOPIXの動きを、2013年3月1日終値を100とし、指数化して比較したものです。日経平均がTOPIXよりも上昇率で上回り、乖離が広がっているとみられるのが、マルで囲った部分になります。NT倍率が上昇中の現在も、乖離が拡大している局面になります。しかし、日経平均とTOPIXが乖離した後は、収束するのが一般的な傾向になっていますので、現状は「TOPIX買い」に相対的な優位性が認められます。従って先物ロング・ポジションを検討する場合は「TOPIX先物」も検討すべきかもしれません。また、相場を強気または弱気の一方向に傾けたくない投資家であれば「日経平均先物売り+TOPIX先物買い」も考えられると思います。
図2 2014年4〜6月期・日本の実質GDP市場コンセンサスの推移(単位:%)
BloombergデータをもとにSBI証券が作成。GDPは前期比・年率
図3 日経平均株価とTOPIX(日足)
BloombergデータをもとにSBI証券が作成。2013年3月1日終値を1として日経平均・TOPIXを指数化。