日経平均は頭打ちなのか?上放れるのか?/それを左右する意外な「黒幕」?
日経平均は依然保ち合い圏
夏以降の日経平均株価は、新たな保ち合い圏形成の動きとなっています。即ち、5月23日に、15,942円60銭の高値(取引時間中)を付けた後は、7月19日の14,953円29銭、9月27日の14,817円50銭が当面の高値になっています。一方、安値は8月28日の13,188円14銭、10月8日の13,748円94銭とやや切り上がる形で形成されています。10月21日現在、日経平均株価は14,693円57銭となっており、上記の高値を延長したラインに限りなく接近した形(図1参照)になっています。
米国では、9月17〜18日のFOMC(米連邦公開市場委員会)で、FRB(米連邦準備制度理事会)は、「月850億ドルの債券買入れ額を縮小させる」という市場の事前予想に反し、現状の買入れ額維持を決定しました。しかし、これ以降、米国株式市場は短期調整局面に入りました。FRBの今後の金融政策が不透明になったことが一因です。加えて、米暫定予算が与野党の対立で9月末までに成立せず、政府機関閉鎖に突入してしまったこと、米債務上限引き上げ交渉が、国庫が枯渇するとされた10月17日直前までまとまらなかったこと等も逆風になりました。このあおりで、日経平均株価も9月27日以降、短期下落局面となりました。
こうした中、米国で、10月8日に債務引き上げ交渉が前進を見せ、イエレン現FRB副議長の次期FRB議長昇格が内定し、日米ともに株価は反発局面となりました。暫定予算・債務引き上げ交渉も10月16日に民主党と共和党の間で合意し、翌17日には、S&P500が史上最高値を更新するなど、早々と上向きの動きになりました。
米国市場からの追い風を受け、日経平均株価は上述した高値を突破してもおかしくない状況です。ただ、ここで改めて考える必要のある「ポイント」がひとつあります。そもそも、なぜ、7月・9月と、株価が高値を抜き切れないかです。もしかすると、株式相場を左右している「黒幕」が存在しているのかもしれません。そうです。為替の動きが、株式相場に強い影響を与えている可能性があるのです。
図1:日経平均株価・日足
弊社チャート・ツールをもとにSBI証券投資調査部が作成。
日経平均変動の「黒幕」?/ドル・円相場、豪ドル・円相場と日経平均の相関性に注目
ご存知の通り、日経平均株価の動きは外為相場の動きの強い影響を受けます。図2を見ても明らかな通り、日経平均株価は、円安・ドル高の時に上昇しやすく、逆に円高・ドル安の時に下落しやすくなっています。日経平均株価が、電気・精密機器や自動車など、円安・ドル高で恩恵を受けやすい銘柄に強く影響を受けるためです。
ちなみに、日経平均株価が豪ドル・円相場とも強い「相関性」を有していることは、意外と多くの投資家が認知しているようです。日経平均株価は、円安・豪ドル高の時に上昇しやすく、逆に円高・豪ドル安の時に下落しやすくなっています。その相関性の強さは、例えば過去3年間の週足でみた場合、ドル・円との相関性以上というデータもあります。
豪州経済は、アジア向けの鉄鉱石等、資源の輸出がけん引役です。一方、日本もアジア向けの部品・素材が輸出のけん引役となっています。豪州経済が順調に拡大している時は、アジア経済が順調な時であり、それは日本経済にとっても追い風とみられる訳で、結果的に日経平均と豪ドル・円は相関性が強くなりやすいのです。
言い換えれば、豪ドル相場や(米)ドル相場の先行きを占うことは、間接的に日経平均の先行きを占うことになるという側面もあるのです。以下、豪ドル・円相場のポイント、ドル・円相場のポイントを要約してみます。
【豪ドル・円】 5月以降、豪ドルが下げたのは、米金融緩和の縮小観測が強まり、アジア諸国から資金流出の懸念が強まったことが要因。ただ、米金融緩和縮小の時期に関する市場コンセンサスは、2013年末というこれまでの見方から、2014年3月頃と先送りされているため、同時にアジアからの資金流出懸念も後退するとみられます。加えて、欧州や中国経済の回復色が強まっていることも追い風で、豪ドルには次第に追い風が強まっているように見受けられます。
【ドル・円】】 上記した通り、米金融緩和縮小の先送りで、年内程度は、ドルに逆風が目立ちます。ただ、財政問題の短期的な悪影響を克服できれば、2014年には、米国経済の「自力」の強さが、目立ってくる可能性があると考えられます。シェール革命で、国内に製造業が回帰し、投資が増えやすい構図にあるためです。このため、中長期的には、ドルに追い風が強まってくるとの見方が多いようです。
このように、ドルに短期的な逆風が想定されるものの、中長期的には、ドル・豪ドルとも、円に対して上昇をうながす要因が多いようです。すなわち、日経平均株価は、年内こそ、波乱要因をかかえての推移となりそうですが、年が明け、2014年には「外為市場からの追い風」に乗り、上昇力が強くなる可能性が大きそうです。
図2:ドル・円相場と日経平均株価(週足)
BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
図3:豪ドル・円相場と日経平均株価(週足)
BloombergデータをもとにSBI証券が作成。