日経平均株価は3/14(月)〜3/25(金)に9営業日続伸となり、2019/9/3(火)〜2019/9/17(火)の10営業日連続高以来の連騰記録になりました。ウクライナ情勢に劇的な変化がみられない上、インフレ進行や金利上昇への懸念が再燃しています。そのような中、あたかも多くの悪材料が解消するかのような力強い上昇が続き、ショートカバー(空売りの買い戻し)を巻き込む形で、予想外の急上昇相場となりました。
このような日経平均株価の強い動きは今後も続くのでしょうか。
日経平均株価は週足ベースで続伸しました。3月第3週(3/14〜3/18)に前週比1,664円65銭(6.6%)高した後、同第4週(3/22〜3/25)も前週比1,322円41銭(4.9%)高となり、2週連続で上昇幅が1000円を超えました。日足ベースでは3/14(月)〜3/25(金)に9営業日続伸となり、2019/9/3(火)〜2019/9/17(火)の10営業日連続高以来の連騰記録になりました。3月第5週(3/28〜4/1)はもみ合いでスタートです。
なお、日経平均株価は3/9(水)の取引時間中安値24,681円74銭から、3月第4週に28,000円台に急騰しました。
株価上昇の理由は以下の通りと考えられます。
(1)ウクライナがロシアに対して抵抗を続ける中、停戦交渉の動きが時折みられるようになったこと。
(2)米国株をはじめ海外株もおおむね堅調な動きになったこと。
(3)おおむね3/10(木)以降に円安・ドル高が加速し、景気・企業業績の底割れ懸念が後退したとみられること。
(4)3/11(金)メジャーSQ、3/16(水)米FOMC、3/18(金)米トリプル・ウィッチング等の重要日程の進捗。
(5)3月末が接近し、配当取りや、配当再投資に絡む先物買い観測、「大学ファンド」買い観測等、需給が好転。
なお、3/11(金)に米10年国債利回りは1.99%でしたが3/24(木)には2.37%まで上昇しました。また、3/16(水)には1バレル95ドルまで下げていた原油先物(WTI)も3/23(水)には同114ドル台まで戻りました。
ウクライナ情勢に劇的な変化がみられない上、インフレ進行や金利上昇への懸念が再燃しています。そのような中、あたかも多くの悪材料が解消するかのような力強い上昇が続き、ショートカバー(空売りの買い戻し)を巻き込む形で、予想外の急上昇相場となりました。
図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景
日経平均株価(終値) | 前日比 | NYダウ(終値) | 前日比 | 国内株式市場の動き | 米国株式市場の動き | |
3/21(月) | - | - | 34,552.99 | -201.94 | 休場(春分の日) | NYダウは反落。S&P500はほぼ変わらず。 ・パウエル議長がタカ派的見解を示唆し、米2年国債利回りが2%台超える。米長短金利差のイールドカーブが18日に続き大きくフラット化。 ・サウジアラビアが石油施設攻撃を受けたと発表し、原油価格が上昇。 ・ボーイングが中国での墜落事故を受け、NYダウの下げを主導し下落。 |
3/22(火) | 27,224.11 | +396.68 | 34,807.46 | +254.47 | 6営業日連騰。 ・ドル・円相場がおよそ6年ぶりに1ドル120円台越えの円安ドル高に。 ・現地時間21日のFRB議長のタカ派的発言があった。 ・EUのロシア産原油禁輸検討報道が伝わり、原油価格が上昇。資源株が買われる。 |
NYダウは反発。NASDAQは大きく反発。 ・先物市場で、5月開催予定のFOMCで50bptの利上げ観測が強まり米長期金利が上昇。金融株が買われる。 ・アリババが自社株買いの拡大を発表。中国ADRが全面高に。 ・テスラがドイツ工場(欧州初の製造拠点)の稼働開始で買われ、8%弱上昇。 |
3/23(水) | 28,040.16 | +816.05 | 34,358.50 | -448.96 | 大きく7営業日連騰。 ・1ドル120円台の円安・ドル高水準が前日22日より継続し、それを受け精密機器や電気機器等の輸出関連銘柄が物色される。 ・連日の株高は、海外投資家によるショートカバーという見方も。地政学上の不透明感が残存し続けていると指摘する声も。 |
反落。 ・米週間石油在庫が予想を下回る水準まで減少した上、ロシア-カザフスタン間のパイプライン停止、米欧の対ロシアに追加経済制裁発表見通し等で、原油価格が急騰。一般消費財が売られ、資源株が買われる。 ・米商務長官が中国半導体企業等に対ロ制裁の徹底で警告。SOX指数が下落。 |
3/24(木) | 28,110.39 | +70.23 | 34,707.94 | +349.44 | 小幅に8営業日続伸。 ・ロシアの供給懸念によるニッケル価格の急騰を受け、非鉄金属が2%以上の上昇。資源株が全面高。 ・海運株が軒並み-7.24%の大幅下落。ONE社(大手3社の共同出資によるコンテナ事業会社)の事業説明会発表内容が、市場期待に応えられず売られる。 |
反発。 ・事業拡大に資金投入する方針を発表したエヌビディアが上昇。SOX指数も5.13%の大幅連れ高に。 ・経済指標の予想を上回る好結果に加え、原油価格の一服が、安心材料に。大型グロース株に買戻しが入る。 ・G7やNATO首脳会議を通過するもウクライナ情勢に関し、依然進展がなく、金が買われる。 |
3/25(金) | 28,149.84 | +39.45 | 34,861.24 | +153.30 | ほぼ変わらずだが、9営業日続伸。 ・日本の長期金利が2月半ばの指値オペ通知水準まで上昇したことを嫌気され、金融株が売られる。 ・前日24日の大幅下落と配当取りで、海運株が買い戻される。 |
続伸。 ・FRBメンバーがタカ派的と捉えられる発言をし、長短金利ともに上昇。グロース株が売られた。 ・米長短金利が金融緩和政策導入前の水準まで上昇。好感され、金融株が買われる。 ・サウジアラムコの石油施設攻撃を受け、原油価格が上昇。 |
3/28(月) | 27,943.89 | -205.95 | 34,955.89 | +94.65 | 反落。(10営業日ぶり) ・円の各国通貨に対する全面安が進行。ドル・円は1ドル123円台に。 ・上海のロックダウンが嫌気され、輸出関連株の売り材料に。 ・日銀が連続初値オペを初めて発動。金融緩和姿勢を改めて顕わにする形に。それを受けて円安が加速し、相場を下支えした。 |
3営業日続伸。 ・上海ロックダウンによる需要悪化懸念で、原油価格が下落。一般消費財が買い戻される。 ・テスラが株式分割の承認要請意向を表明。8.3%高。 ・G7がロシアからの要求である天然ガスのルーブル決済を拒否。 |
- ※日経平均株価・NYダウ等各種株価データ、各種資料をもとにSBI証券が作成。
図表2 日経平均株価
- ※当社チャートツールを用いて作成。データは2022年3月29日10:10 時点。
図表3 NYダウ
- ※当社チャートツールを用いて作成。データは2022年3月28日15:00 時点。
図表4 ドル・円相場
- ※当社チャートツールを用いて作成。データは2022年3月29日15:00 時点。
図表5 主な予定
月日 | 国・地域 | 予定 | 備考 |
3/21(月) | 日本 | まん延防止等重点措置 解除期限 | |
◎東京市場は休場 | 春分の日 | ||
23(水) | 米国 | 2月新築住宅販売件数 | |
24(木) | 日本 | 日銀金融政策決定会合議事要旨(1/17-18開催分) | |
米国 | 10-12月期経常収支 | ||
欧州 | EU首脳会議(25日まで) | ||
25(金) | 日本 | 2月企業向けサービス価格指数 | |
29(火) | 日本 | 2月失業率・有効求人倍率 | |
米国 | 1月ケース・シラー米住宅価格指数 | ||
30(水) | 日本 | 3月決算銘柄の権利・配当落ち | |
米国 | 3月ADP雇用統計 | 市場コンセンサスは前月比40万人増 | |
10−12月期 GDP確定値 | |||
31(木) | 日本 | 2月鉱工業生産 | |
米国 | 2月個人消費支出 | ||
中国 | 3月製造業・非製造業PMI | ||
4/1(金) | 日本 | 1-3月期 日銀短観 | 決算発表のヒントに |
☆成人年齢を18歳に引き下げ | |||
米国 | 3月雇用統計 | ||
3月ISM製造業景況指数 | |||
欧州 | 3月消費者物価指数 | ||
4(月) | 日本 | 東証 新市場区分へ移行 | |
3月マネタリーベース | |||
米国 | 2月製造業受注 | ||
5(火) | 米国 | 2月貿易収支 | |
3月ISM非製造業景況指数 | |||
6(水) | 米国 | FOMC議事録要旨(3/15-16) | |
7(木) | 日本 | 2月景気動向指数 | |
8(金) | 日本 | 3月景気ウォッチャー調査 | 決算:安川電機(6506) |
- ※各種報道、WEBサイト等をもとにSBI証券が作成。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合があります。
図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定
2022年 | ||
日銀金融政策決定会合 | 4/28(木)、6/17(金)、7/21(木)、9/22(木)、10/28(金)、12/20(火) | |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 5/4(水)、6/15(水)、7/27(水)、9/21(水)、11/2(水)、12/14(水) | |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 4/14(木)、6/9(木)、7/21(木)、9/8(木)、10/27(木)、12/15(木) |
※日米欧中銀WEBサイトを基にSBI証券が作成。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合があります。
なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しています。日付は現地時間を基準に記載しています。
図表7 日経平均株価採用銘柄の上昇率上位(3/22〜3/28)
コード | 銘柄 | 業種 | 株価(3/28) | 株価(3/22) | 騰落率(3/22〜3/28) |
5541 | 大平洋金属 | 鉄鋼 | 4,285 | 3,795 | 12.9% |
7211 | 三菱自動車工業 | 輸送用機器 | 332 | 295 | 12.5% |
4568 | 第一三共 | 医薬品 | 2,686 | 2,418.5 | 11.1% |
7011 | 三菱重工業 | 機械 | 4,147 | 3,748 | 10.6% |
6762 | TDK | 電気機器 | 4,435 | 4,090 | 8.4% |
7203 | トヨタ自動車 | 輸送用機器 | 2,202 | 2,055 | 7.2% |
9984 | ソフトバンクグループ | 情報・通信業 | 5,402 | 5,056 | 6.8% |
7974 | 任天堂 | その他製品 | 66,070 | 61,870 | 6.8% |
6976 | 太陽誘電 | 電気機器 | 5,660 | 5,310 | 6.6% |
7735 | SCREENホールディングス | 電気機器 | 12,280 | 11,540 | 6.4% |
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
※3/22終値を3/28終値と比較し、値上がり率の大きい日経平均採用10銘柄を掲載。
図表8 日経平均株価採用銘柄の下落率上位(3/22〜3/28)
コード | 銘柄 | 業種 | 株価(3/28) | 株価(3/22) | 騰落率(3/22〜3/28) |
9107 | 川崎汽船 | 海運業 | 7,530 | 8,810 | -14.5% |
9104 | 商船三井 | 海運業 | 10,190 | 11,440 | -10.9% |
9101 | 日本郵船 | 海運業 | 10,860 | 12,170 | -10.8% |
5202 | 日本板硝子 | ガラス・土石製品 | 429 | 446 | -3.8% |
7912 | 大日本印刷 | その他製品 | 2,988 | 3,060 | -2.4% |
5233 | 太平洋セメント | ガラス・土石製品 | 2,033 | 2,080 | -2.3% |
6367 | ダイキン工業 | 機械 | 22,465 | 22,960 | -2.2% |
5706 | 三井金属鉱業 | 非鉄金属 | 3,435 | 3,510 | -2.1% |
8306 | 三菱UFJフィナンシャル・グループ | 銀行業 | 788.2 | 804 | -2.0% |
8766 | 東京海上ホールディングス | 保険業 | 7,395 | 7,513 | -1.6% |
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
※3/22終値を3/28終値と比較し、値下がり率の大きい日経平均採用10銘柄を掲載。
好調に上昇してきた日経平均株価ですが、そろそろ上昇スピードが一服、または株価が反落しても不思議でない局面になってきたと考えられます。
(1)日経平均株価がチャート上、重要な節目である200日移動平均線に到達(図表2参照)。
(2)日経平均株価の25日移動平均線かい離率が一時+7.5%の「過熱ライン」に到達。
(3)日経平均株価のRSIが一時68.8%まで上昇し「過熱ライン」の70%まで接近。
(4)日経平均株価がチャート上「要注意」の「三空」を経て上昇してきたこと。
(5)配当・株主優待等の権利付最終日である3/29(火)以降は、好需給がピークアウトしやすいこと。
(6)ウクライナ情勢を中心に外部環境の本質的な改善がみられた訳ではないこと。
「大学ファンド」は財投資金を原資に、5兆円の当初資金で年度内に運用開始予定と伝えられていました。市場はその影響を過小評価していた可能性もあります。こうした予想外の資金が動き始めたことで、配当取りやショートカバーも巻きこみながら予想外の株価上昇になったものとみられます。ただ、こうした資金の買いを背景とする好需給も3月にはおおむね一巡しそうです。
もっとも、テクニカル的な過熱の後、株価が急反落するとは限らず、余熱で株高が続く可能性もあります。4月に入れば、新規資金配分等も期待されるので、需給も回復する可能性があります。転換点は4月上旬かもしれません。
図表9 日経平均株価(日足)と25日移動平均線かい離率
当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2022年3月29日15:55 時点。
日経平均株価の日々線(4本足)と25日移動平均線、およびそこからのかい離率で構成されています。日経平均株価が25日移動平均線から上下に7〜8%かい離すると、相場は転換点を迎えるとする考え方があります。