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複雑化・長期化しそうなウクライナ問題と投資戦略

2022/2/22

投資情報部 鈴木英之

もともとインフレ進展、金利上昇への懸念が強いところに、ウクライナ情勢の緊迫化が伝わり、足元の日経平均株価は不安定な展開が続いています。

しかし、ウクライナ問題は、世界的なインフレ進展・金利上昇懸念と重なっているうえ、欧米を中心に新型コロナウイルスの新規感染者数がピークアウトしそうなタイミングも重なっており、投資家によっては物色対象を工夫することで対応することが可能であると考えられます。

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1日経平均株価は2番底を付けに行く過程か?

2月第3週(2/14〜2/18)の日経平均株価は前週比574円1銭反落しました。米1月消費者物価指数が市場予想を上振れたことや、ウクライナ情勢の緊迫化を背景に、2/10(木)から2/11(金)のNYダウは計1,030ドル下落しました。これを受け、翌週の東京株式市場は下落基調となりました。

基本的に、インフレ進展や金利上昇への懸念に加え、ウクライナ情勢の緊迫化が重なっていることが、株価下落の要因とみられます。ウクライナ情勢は、エネルギーや素材等の供給不足を通してさらなるインフレ進展や金利上昇を促す要因であると考えられます。ただ、イラン核合意の枠組みに米国が復活する可能性が出てきたことで原油価格が2/14(月)から2/18(金)にかけて反落しました。また、安全資産への投資として米国債が買われ、米長期金利も2/16(水)を境に低下したことから、株価も下支えられる展開となりました。

なお、日経平均株価は2/10(木)を目先のピークとして下落に転じた後、2月第3週は2/15(火)の26,724円が安値となっていましたが、2/21(月)はそれを割り込んでしまいました。チャート的には、1/27(木)の26,044円をボトムとし、2番底を付けに行く過程にあるように思われます。

2/22(火)の東京株式市場も波乱が継続しています。ロシアによる東部ウクライナの承認や、プーチン大統領による東部ウクライナへの派兵命令など、ウクライナ情勢の緊迫化を示すニュースが相次いでいるためです。原油相場については北海ブレント価格が7年5ヵ月ぶりの高値水準を付けるなど、インフレ圧力が再び強まっています。2/21(月)の米国株式は「ワシントン誕生日」のため休場ですが、2/22(火)のダウ先物は売り先行の展開となっており、株価下落の悪循環は米国株式市場までつながりそうです。

図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

  日経平均株価(終値) NYダウ(終値) 国内株式市場の動き 米国株式市場の動き
2/14(月) 27,079.59(-616.49) 34,566.17(-171.89) ウクライナでの緊張の高まりを背景に米国株が下げた流れを引き継いで大幅反落。エネルギーや商社に加え、ポストコロナ関連株の一角に買い。 ブリンケン米国務長官がキエフの在ウクライナ米大使館を閉鎖すると発表し、武力衝突への懸念が強まり、一時は400ドル超の下げ。ナスダック指数はほぼ横ばいに終わる。
2/15(火) 26,865.19(-214.40) 34,988.84(+422.67) 続落。1/28以来の安値水準。ロシア情勢を心配する動きが続いている。 4営業日ぶりに反発。ロシア国防相が、ウクライナ周辺での一部軍事演習を終え、同日から撤収を開始すると発表した。
2/16(水) 27,460.40(+595.21) 34,934.27(-54.57) 3営業日ぶりに反発。ロシア軍の一部撤収報道を受けて米国株が大幅反発した流れを引き継いだ。ただ売買代金は5営業日ぶりに3兆円を割り込んだ。NY原油安を受けて資源株は売り。 ウクライナ情勢への警戒が続き一時346ドル下げたが午後は下げ渋った。FOMC議事録では、パウエル議長の会見以上の内容はみられなかった。
2/17(木) 27,232.87(-227.53) 34,312.03(-622.24) 方向感のない状態で推移していたが、ウクライナ国境近辺でロシア軍が増強しているとの報道等もあり、先物から急落する形になった。 NYダウは続落し、下げ幅は本年最大。ロシアがウクライナを侵攻する可能性について、バイデン大統領が「非常に高い」と述べた。下落率はNYダウが1.8%、ナスダックは2.9%。エヌビディアなど半導体関連の下げが目立った。
2/18(金) 27,122.07(-110.80) 34,079.18(-232.85) NYダウが本年最大の下げとなったことを嫌気して一時は440円安水準まで下落した。ただ、ロシア軍がむしろ増強しているとの見方は前日から出ており、実際に緊張が強まったと言い切れないことから、後半は下げ渋った。海運株が強い。 3営業日続落。2ヵ月半ぶりの安値水準。ロシアは、プーチン大統領が主導する軍事演習を19日に実施すると発表し、緊張が高まった。
2/21(月) 26,910.87(-211.20) 休場 ウクライナ情勢の緊迫化と米国株続落を嫌気し、一時は26,549円(-573円)まで下落した。しかし、「国境地帯にロシア軍はいない」と、ウクライナ国防相が発言し、下げ渋る。米露首脳会談開催原則合意の報道も。 ワシントン誕生日
  • ※日経平均株価・NYダウ等各種株価データ、各種資料をもとにSBI証券が作成。

図表2 日経平均株価

  • ※当社チャートツールをもとに作成。データは2022/2/22 14:00時点(日足)

図表3 NYダウ

  • ※当社チャートツールをもとに作成。データは2022/2/22 14:00時点(日足)

図表4 ドル・円相場

  • ※当社チャートツールをもとに作成。データは2022/2/22 14:00時点(日足)

図表5 主な予定

月日 国・地域 予定 備考
22(火) 米国 12月S&PコアロジックCS20都市住宅価格 インフレ動向に大きく影響も
    2月マークイット製造業PMI  
23(水) 日本 東京市場は休場 天皇誕生日
24(木) 米国 10〜12月期GDP改定値 市場コンセンサス(前期比・年率)は+7.0%
    1月新築住宅販売  
    米露外相会議/G7緊急首脳会議  
25(金) 日本 2月東京都区部消費者物価指数  
  米国 1月個人消費物価デフレーター  
28(月) 日本 1月鉱工業生産  
1(火) 日本 ソフトバンクがLINEモバイルを完全子会社化  
  中国 1月製造業・非製造業PMI  
  米国 バイデン大統領一般教書演説  
    2月ISM製造業景況指数(3日0:00) 米国製造業のマインドは?
2(水) 米国 2月ADP雇用統計 市場コンセンサスは32万人増
    ベージュブック  
3(木) 米国 2月ISM非製造業指数  
4(金) 中国 北京冬季パラリンピック  
  米国 2月雇用統計 市場コンセンサス(雇用者数)は40万人増
5(土) 中国 全国人民代表大会  
6(日) 日本 31都道府県「まん延防止等重点措置」解除 東京など延長の可能性も
  • ※各種報道、WEBサイト等をもとにSBI証券が作成。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合があります。

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

  2022年
日銀金融政策決定会合 3/18(金)、4/28(木)、6/17(金)、7/21(木)、9/22(木)、10/28(金)、12/20(火)
FOMC(米連邦公開市場委員会) 3/16(水)、5/4(水)、6/15(水)、7/27(水)、9/21(水)、11/2(水)、12/14(水)
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 3/10(木)、4/14(木)、6/9(木)、7/21(木)、9/8(木)、10/27(木)、12/15(木)
  • ※日米欧中銀WEBサイトを基にSBI証券が作成。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合があります。
  • なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しています。日付は現地時間を基準に記載しています。

図表7 日経平均株価採用銘柄の上昇率上位(2/14〜2/21)

コード 銘柄 業種 株価(2/21) 株価(2/14) 騰落率(2/21〜2/14)
4324 電通グループ サービス業 4,805 4,305 11.6%
9147 NXホールディングス 陸運業 7,330 6,740 8.8%
5108 ブリヂストン ゴム製品 5,134 4,789 7.2%
4568 第一三共 医薬品 2,549.5 2,381.5 7.1%
7202 いすゞ自動車 輸送用機器 1,638 1,536 6.6%
5101 横浜ゴム ゴム製品 1,765 1,660 6.3%
2503 キリンホールディングス 食料品 2,012 1,898 6.0%
2501 サッポロホールディングス 食料品 2,408 2,274 5.9%
6762 TDK 電気機器 4,760 4,505 5.7%
4151 協和キリン 医薬品 3,050 2,888 5.6%
  • ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
  • ※2/21終値を2/14終値と比較し、値上がり率の大きい日経平均採用10銘柄を掲載。

図表8  日経平均株価採用銘柄の下落率上位(2/14〜2/21)

コード 銘柄 業種 株価(2/21) 株価(2/14) 騰落率(2/21〜2/14)
6098 リクルートホールディングス サービス業 4,643 5,764 -19.4%
6326 クボタ 機械 2,058 2,358 -12.7%
6753 シャープ 電気機器 1,181 1,332 -11.3%
6952 カシオ計算機 電気機器 1,296 1,431 -9.4%
3436 SUMCO 金属製品 1,958 2,123 -7.8%
6861 キーエンス 電気機器 52,500 56,820 -7.6%
1605 INPEX 鉱業 1,127 1,218 -7.5%
4063 信越化学工業 化学 17,510 18,760 -6.7%
6302 住友重機械工業 機械 2,747 2,934 -6.4%
6954 ファナック 電気機器 21,525 22,835 -5.7%
  • ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
  • ※2/21終値を2/14終値と比較し、値下がり率の大きい日経平均採用10銘柄を掲載。

2複雑化・長期化しそうなウクライナ問題と投資戦略

ロシアが東部ウクライナで強硬な姿勢を強めたことで、ウクライナ問題は長期化する可能性が強まってきました。この地域は、複雑な歴史問題を抱えているうえ、中東、中央アジア等へも隣接し、地理的な問題も複雑です。これらを織り込んで、ウクライナ問題の着地点や株価の先行きを予想することは困難と言えるでしょう。

ただ、ウクライナ問題は、世界的なインフレ進展・金利上昇懸念と重なっているうえ、欧米を中心に新型コロナウイルスの新規感染者数がピークアウトしそうなタイミングも重なっており、投資家によっては物色対象を工夫することで対応することが可能であると考えられます。

業種的には、鉱業、石油、非鉄、金属、鉄鋼、卸売(特に商社)等の業種は、CRB商品先物指数や、原油先物相場との相関係数が高く、これらの銘柄を保有することでインフレをある程度ヘッジすることができそうです。ただ、足元では、米国がイラン核合意の枠組みに復活する姿勢を強めており、その場合は原油価格の上昇が鈍る可能性がありそうです。

さらに、インフレ圧力の高まりを受け、世界の多くの中央銀行は金融引き締めに転じており、投資家としては金利上昇に強い業種の銘柄に投資することも重要です。銀行や保険等、広義の金融株は、米10年国債利回り(長期金利の指標的存在)と連動しやすく、金利上昇をヘッジしやすい存在であるとみられます。

なお、欧米では、新型コロナウイルスの新規感染者数がピークアウトしており、日本もピークアウトした可能性が強まってきています。このため、陸運(鉄道株)、空運、小売業(うち外食)、サービス(うち娯楽)へ投資し、経済再開の本格化を待つという投資戦略もありそうです。

ただ、経済再開を先取りし、株価が既に充分上昇している銘柄もあります。また、空運は、経済再開で人流が増えることはプラス材料ですが、原油価格上昇はマイナス材料と考えられます。さらに、人流の回復についても、国際的人流が回復するまでには時間を要しそうです。すなわち、空運についてはプラス材料とマイナス材料の対立がやや厳しめであり、その分株価が上下に変動しやすくなる可能性が残ります。

ウクライナ問題と世界的なインフレ進展・金利上昇懸念が強まる中、3/16(水)に結果発表のFOMCは大きな節目になりそうです。利上げ自体はほぼ確実で、そこでの利上げが0.25%になるのか、0.5%になるのか等が主要関心事になりそうです。

図表9 ウクライナ、ロシア等の地理的な位置関係

  • ※フリー素材をもとにSBI証券が作成。
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