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2024-12-04 09:04:37

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テーパリング(量的緩和縮小)の開始・政策金利引き上げで気になる株式市場の今後

2021/12/14

投資情報部 鈴木英之・長谷川綾乃

12月第2週(12/6〜12/10)の株式市場は堅調でした。

オミクロン株やインフレへの懸念が後退し、米国株(S&P500)が高値を更新したことなどから、日本株も反発局面となりました。ただ、12月第3週(12/13〜12/17)は日本や米国、欧州の各国の中央銀行が金融政策を論議する会合が控えていることもあり、ポジションを膨らませにくい状況となっています。

また、米11月消費者物価の発表数値は想定の範囲内となりましたが、伸び率はおよそ39年ぶりの高さで、インフレ懸念が解消した訳ではありません。そうした中12/15(水)には、テーパリング(量的緩和縮小)の強化が警戒されるFOMCの結果発表が予定されています。今後、米金融政策はテーパリング実施から政策金利引き上げへ進むと予想されますが、株式市場に波乱は生じないのでしょうか。

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1S&P500が過去最高値を更新。日本株も反発局面に

日経平均株価の12月第2週(12/6〜12/10)終値は28,437円77銭となりました。前週末(12/3)比で408円20銭(1.5%)高、週足ベースでは3週ぶりに反発となりました。

一方、NYダウは12月第2週(12/6〜12/10)終値が前週末比4.0%高、週足ベースで5週ぶりに反発となりました。

12/7(火)から12/8(水)にかけては、オミクロン株への警戒が後退し、ハイテク株を中心に押し目買いが入って続伸。アップルはアナリストの目標株価引き上げをきっかけに上昇し、同期間連日で上場来高値を更新しました。

12/10(金)に発表された11月米消費者物価指数はおよそ39年ぶりの高い上昇率となったものの、市場予想と一致していたことなどから、安心感が広がりました。一方、長期金利が低下したことでマイクロソフトなどハイテク株が上昇し、アップルは再び上場来高値を更新する形となりました。なお、S&P500は11/18(木)以来、およそ1ヵ月ぶりに最高値を更新しました。

図表1 日経平均株価の値動きとその背景

  日経平均株価 株式市場の動き
終値 前日比
12/7(火) 28,455.60 528.23 大幅に反発。
上げ幅は11月1日以来、およそ1カ月ぶりの大きさ。
米株高を追い風に上昇。
オミクロン株をめぐる過度な警戒感が後退したことで、景気敏感株を中心に幅広い銘柄に買いが入った。
配当再投資やボーナス支給時期にあたり、需給が改善する期待も支えとなった模様。
中国不動産大手の恒大集団が米ドル建て社債の利息を払わなかったと伝わったが、反応は限定的。
ソフトバンクGが1銘柄で85円ほど押し上げた。ANAHD、郵船、日本製鉄が大幅に上昇。一方、関西スーパがストップ安売り気配で終えた。日水、ZHDが下落。
12/8(水) 28,860.62 405.02 続伸。
オミクロン株への懸念が後退し、ハイテク関連を中心に買いが広がった。
バイデン米政権のファウチ首席医療顧問が、初期データに基づくと従来型より重症化しにくい可能性があると指摘したことで安心感が広がり、好材料になった。
米株式市場でのハイテク株高を受けて、東京株式市場でもハイテク株を含むグロース(成長)株に物色が向かい、東エレクやエムスリーなど値がさ株が中心に買われた。
一方、心理的な節目の2万9,000円に近づくと、利益確定や戻り待ちの売りが増加し、上値を抑えた。
ファナックや安川電が上昇、郵船や商船三井など海運の一角が安い。
12/9(木) 28,725.47 -135.15 3日ぶりに反落。
前日までの2日間で日経平均は900円超上昇しており、短期的な過熱感から利益確定売りが優勢となった。
節目の2万9,000円に接近し、戻り待ちの売りも出やすかった。
オミクロン株への懸念が後退したことで空運株などに買いが入り、相場を下支えした。
日経平均株価は後場寄り直後まで一進一退となる場面が続いた。
引き続き、商船三井や川崎汽など海運株が下落。
上昇が目立っていたファナックは利益確定売りに押された一方、ソフトバンクGやレーザーテックは上昇。
12/10(金) 28,437.77 -287.70 続落。
米ハイテク株安を受け、ハイテクなどグロース(成長)株を中心に売りが広まった。
また、11月の米消費者物価指数の発表を控え、持ち高調整の売りも膨らんだ。
SOX指数の下落を受けて、東京エレクトロンやアドテストなど半導体関連銘柄が安い。
12/13(月) 28,640.49 202.72 3日ぶりに反発。
前週末の米株高を受けて値がさ株などが上昇。
日本郵船など海運株が上昇した他、東京エレクトロンなど半導体関連の一角も高い。
ただ、買い一巡後はFOMCや日銀の金融政策決定会合を控え、様子見姿勢が強まった。
  • ※日経平均株価データ、各種資料をもとにSBI証券が作成。

図表2 日経平均株価(日足)

  • ※当社チャートツールをもとに作成。データは2021/12/14 9:30時点(日足)

図表3 NYダウ(日足)

  • ※当社チャートツールをもとに作成。データは2021/12/14 9:30時点(日足)

図表4 ドル・円相場(日足)

  • ※当社チャートツールをもとに作成。データは2021/12/14 9:30時点(日足)

図表5 主な予定

月日 国・地域 予定 備考
12/15(水) 中国 11月鉱工業生産・小売売上高・固定資産投資  
  米国 11月小売売上高 年末商戦の現状は?
    パウエルFRB議長会見(経済見通し) 日本時間16日早朝。テーパリング強化?
    12月ニューヨーク連銀製造業景気指数  
    ★決算発表 レナー
12/16(木) 日本 日銀金融政策決定会合(〜17日)  
    11月貿易統計  
    ★決算発表 アスクル
  欧州 ECB定例理事会(ラガルド総裁会見) 長期的見通しは回避も
  米国 11月住宅着工件数  
    12月フィラデルフィア連銀景況感指数  
    11月鉱工業生産・設備稼働率  
    ★決算発表 アクセンチュア、アドビ、フェデックス
12/17(金) 日本 黒田日銀総裁会見  
12/20(月) 米国 ★決算発表 ナイキ、マイクロンテクノロジー、ゼネラルミルズ
12/21(火) 日本 ★決算発表 ツルハHD
12/22(水) 米国 7-9月期実質GDP(確報値)  
    12月コンファレンスボード消費者信頼感指数  
    11月中古住宅販売件数  
12/23(木) 米国 11月個人所得・個人支出  
    11月耐久財受注  
    12月ミシガン大学消費者マインド(確報値)  
    11月新築住宅販売件数  
12/24(金) 日本 11月消費者物価  
  米国 休場(クリスマスのため)  

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

  2021年 2022年
日銀金融政策決定会合 12/17(金) 1/18(火)、3/18(金)、4/28(木)、6/17(金)、7/21(木)、9/22(木)、10/28(金)、12/20(火)
FOMC(米連邦公開市場委員会) 12/15(水) 1/26(水)、3/16(水)、5/4(水)、6/15(水)、7/27(水)、9/21(水)、11/2(水)、12/14(水)
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 12/16(木) 1/20(木)、3/10(木)、4/14(木)、6/9(木)、7/21(木)、9/8(木)、10/27(木)、12/15(木)

  • ※日米欧中銀WEBサイトを基にSBI証券が作成。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合があります。
  • なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しています。日付は現地時間を基準に記載しています。

図表7 日経平均株価採用銘柄の上昇率上位

コード 銘柄 業種 株価(12/13) 株価(12/6) 騰落率(12/6〜12/13)
7911 凸版印刷 その他製品 1,944 1,772 9.7%
9107 川崎汽船 海運業 7,180 6,550 9.6%
9984 ソフトバンクグループ 情報・通信業 5,571 5,103 9.2%
6506 安川電機 電気機器 5,850 5,410 8.1%
6479 ミネベアミツミ 電気機器 3,315 3,080 7.6%
6976 太陽誘電 電気機器 6,570 6,110 7.5%
8795 T&Dホールディングス 保険業 1,477 1,386 6.6%
4519 中外製薬 医薬品 3,747 3,528 6.2%
6981 村田製作所 電気機器 8,905 8,385 6.2%
7974 任天堂 その他製品 53,620 50,640 5.9%
  • ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

図表8  日経平均株価採用銘柄の下落率上位

コード 銘柄 業種 株価(12/13) 株価(12/6) 騰落率(12/6〜12/13)
1332 日本水産 水産・農林業 532 589 -9.7%
4689 Zホールディングス 情報・通信業 695 742 -6.3%
6098 リクルートホールディングス サービス業 6,658 7,077 -5.9%
7004 日立造船 機械 788 837 -5.9%
9766 コナミホールディングス 情報・通信業 5,850 6,180 -5.3%
8830 住友不動産 不動産業 3,425 3,604 -5.0%
6501 日立製作所 電気機器 6,434 6,696 -3.9%
9602 東宝 情報・通信業 4,915 5,110 -3.8%
8801 三井不動産 不動産業 2,365.5 2,457 -3.7%
9501 東京電力ホールディングス 電気・ガス業 300 310 -3.2%
  • ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

2テーパリングの開始・政策金利引き上げで気になる株式市場の今後

FRBは11/3(水)にテーパリング(量的緩和縮小)の開始を決定。11月から国債購入を月100億ドルずつ、住宅ローン担保証券購入を50億ドルずつ減らし、来年6月にはテーパリングを終わらせる予定としました。

一方、市場は「FRBのパウエル議長は供給制約によるインフレ率上昇は一時的とみており、利上げに対してはハト派スタンス」とみていました。しかし、同議長は11/30(火)の米上院銀行委員会公聴会で、「インフレは一時的」との見方を撤回し、テーパリングの強化を示唆。パウエル議長のタカ派発言を受け、米国株は11/30(火)から12/1(水)にかけて続落しました。

同公聴会でパウエル議長は「次回のFOMC(米連邦公開市場委員会)で、資産購入を数ヶ月早期に終了する是非を議論するのは適切だと考える」と発言。まさにそのFOMCの結果発表が米国時間12/15(水)に予定されています。

今後、米国株は株価上昇をけん引してきた金融緩和の縮小により、下落に転じてしまうのでしょうか。

幸い、米国株式市場は2013年以降の数年間、テーパリング実施から政策金利の引き上げに至るプロセスを経験しています。市場参加者は、経験から学ぶことで、いたずらな混乱に陥らずに済むのではないでしょうか。

2013/5/22(水)にバーナンキFRB議長(当時)がテーパリングを示唆し、米10年国債利回りは急上昇し、新興国から資金が流出する事態(バーナンキ・ショック)となりました、2013/12/18(水)にはテーパリング実施決定へとつながります。ただ、米10年国債利回りは2013年末をピークに低下に転じました。2015/12/16(水)にFRBのイエレン議長(当時)は利上げを決定し、株価は一時的に下落しましたが、米10年国債利回りは2016/6末まで低下傾向となり、株価を下支えました。

2013年以降の市場から得られる教訓としては、「テーパリングから利上げに至るプロセスで株価は下がった訳ではない」ということでしょう。重要なのは、FRBと市場の対話が十分に行われているかだと思います。

なお、日経平均株価の年間上昇率は2013年56.7%、2014年7.1%、2015年9.1%でした。

図表9  FRB総資産と米主要金利・株価(週足)

  • ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。FRB総資産とS&P500は2013年1月第1週終値を1として指数化。他は%。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
  • 期間:2013/1/1〜2021/12/13(日足)
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