日経平均株価は8月に入り、緩やかな上昇基調となっていましたが、8/16(月)に大幅安となりました。
新型コロナウイルスの感染再拡大や、海外での経済指標の下振れ、地政学リスク等の悪材料が重なり、“タイミングの悪さ”も手伝って大きく下げました。
一方、NYダウは連日で過去最高値を更新。日本株は堅調な米国株に支えられ、遠からず上昇に転じると考える投資家もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回は秋相場に備え、注意すべき点についてまとめました。
日経平均株価は、8月第2週(8/10〜8/13)終値が27,977円15銭、前週末(8/6)比で157円11銭(0.6%)高、週足ベースで続伸となりました。これで8月第1・2週は計2.5%の上昇。
8 /11(水)は7/16(金)以来およそ1ヵ月ぶりに、終値で2万8,000円台を回復。米株高を追い風に上昇した他、国内企業で好決算発表が相次いだことも好材料となりました。
8/13(金)はSOX指数の下落により、値がさの半導体関連銘柄に売りが波及し、相場の重荷となりました。なお、SOX指数は8/5(木)から8/12(木)にかけて6日続落となり、2018年10月以来の長期の下げとなりました。
8/16(月)は大幅に3日続落。一時下げ幅は500円超となりました。
株価の下落要因は主に下記5点が挙げられます。
(1)世界的な新型コロナウイルスの感染再拡大による経済活動への不透明感
(2)米ミシガン大学消費者信頼感指数が市場予想を大幅に下回ったことによる米経済活動正常化への懸念
8/13(金)に発表した8月の同指数(速報値)は70.2、7月の同指数(確報値)は81.2でした。同指数が10%以上下げたことは第2次オイルショック時を含め、過去5回のみです。
(3)アフガニスタンの反政府武装勢力、タリバン進攻によるアフガン情勢急変で懸念される地政学リスク
(4)上場企業の2021/4〜6期決算発表がほぼ一巡したことによる材料出尽くし感
最近、8月後半は市場参加者が減り、売買代金が減少する傾向があります。
(5)テクニカル的な要因による下げの加速
8/16(月)の日経平均株価始値が、短期相場の強弱感を左右する25日移動平均を下回ったことで、リスク回避のヘッジ売りを増幅させた可能性も。なお、一目均衡表でも取引開始段階から転換線を割り込み、弱気マインドが増幅しやすい状態でした。
一方、NYダウは、8月第2週(8/9〜8/13)終値が前週末比0.9%高、週足ベースで続伸となりました。
8 /10(火)に1兆ドル規模のインフラ投資法案が米議会上院で可決。8/11(水)には長期金利の低下によるハイテク株への見直し買いが入るなど、好材料を背景に8/10(火)から8/16(月)にかけて5日連続で最高値を更新しています。
なお、S&P500指数も同期間で5日連続で最高値を更新しています。
図表1 日経平均株価の値動きとその背景
日経平均株価 | 日米株式市場等の動き | ||
終値 | 前日比 | ||
8/10(火) | 27,888.15 | 68.11 | 3日続伸。好決算銘柄が買われ、日経平均は一時2万8,100円台に乗せる場面も。 |
8/11(水) | 28,070.51 | 182.36 | 終値で2万8,000円台を回復するのは7/16以来。米株高や、国内企業の好決算を材料に上昇。一方、SOX指数が下落し、半導体関連株に売りが出て相場の重荷に。 |
8/12(木) | 28,015.02 | -55.49 | 5日ぶりに反落。主要企業の決算発表がほぼ一巡し、利益確定売りが優勢に。 |
8/13(金) | 27,977.15 | -37.87 | SOX指数が下落し、東京エレクトロンなど値がさの半導体株にも売りが波及して相場の重荷となった。持ち高を調整する動きもあり、終日横ばいに推移。 |
8/16(月) | 27,523.19 | -453.96 | 7/30以来およそ半月ぶりの安値。ミシガンショックや、地政学リスクの高まりなどを受けて大幅に3日続落。 |
- ※日経平均株価データ、各種資料をもとにSBI証券が作成。
図表2 日経平均株価(日足)と主要移動平均線・おもな出来事
- ※当社チャートツールをもとに作成。データは2021/8/17時点。
図表3 NYダウ(日足)と主要移動平均線・おもな出来事
- ※当社チャートツールをもとに作成。データは2021/8/17時点。
図表4 ドル・円相場(日足)と主要移動平均線・おもな出来事
- ※当社チャートツールをもとに作成。データは2021/8/17時点。
図表5 当面の主な予定
月日 | 国・地域 | 予定 | 備考 |
8/17(火) | 日本 | 6月第三次産業活動指数 | |
アメリカ | 7月小売売上高 | ||
7月鉱工業生産・設備稼働率 | |||
8月NAHB住宅市場指数 | |||
★決算発表 | ホーム・デポ、ウォルマート | ||
8/18(水) | 日本 | 6月機械受注 | 民間設備投資の先行指標 |
7月貿易統計 | |||
アメリカ | FOMC議事要旨(7/27・28開催分) | ||
7月住宅着工・建設許可件数 | |||
★決算発表 | エヌビディア、シスコシステムズ、ターゲット、ロウズ | ||
8/19(木) | 日本 | 7月首都圏新規マンション発売 | |
アメリカ | 8月フィラデルフィア連銀製造業景況感指数 | ||
★決算発表 | アプライド・マテリアルズ、エスティローダー | ||
8/20(金) | 日本 | 7月消費者物価 | |
アメリカ | ★決算発表 | ディア、タペストリー | |
8/23(月) | 日本 | 7月全国百貨店売上高 | |
アメリカ | 7月中古住宅販売件数 | ||
8/24(火) | 日本 | 東京パラリンピック開催(〜9/5) | |
アメリカ | 7月新築住宅販売件数 | ||
★決算発表 | メドトロニック | ||
8/25(水) | アメリカ | 7月耐久財受注 | |
★決算発表 | セールスフォースドットコム、スプランク | ||
8/26(木) | 日本 | 7月企業向けサービス価格指数 | |
アメリカ | 4-6月期GDP改定値 | ||
ジャクソンホール会議(〜28日) | |||
★決算発表 | ダラーゼネラル、HP | ||
8/27(金) | アメリカ | 7月個人所得・個人支出 | |
8月ミシガン大学消費者マインド確報値 |
- ※各種報道、WEBサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合があります。
図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定
2021年 | 2022年 | |
日銀金融政策決定会合 | 9/22(水)、10/28(木)、12/17(金) | 1/18(火)、3/18(金)、4/28(木)、6/17(金)、7/21(木)、9/22(木)、10/28(金)、12/20(火) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 9/22(水)、11/3(水)、12/15(水) | 1/26(水)、3/16(水)、5/4(水)、6/15(水)、7/27(水)、9/21(水)、11/2(水)、12/14(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 9/9(木)、10/28(木)、12/16(木) | 1/20(木)、3/10(木)、4/14(木)、6/9(木)、7/21(木)、9/8(木)、10/27(木)、12/15(木) |
- ※日米欧中銀WEBサイトを基にSBI証券が作成。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合があります。
なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しています。日付は現地時間を基準に記載しています。
NYダウやS&P500が連日の高値更新となっています。
「米中対立は続くものの、米国の優位や発展は続き、基本的には平和も続く」というのが、この相場を維持している基本シナリオでしょう。
一方、新型コロナウイルスの感染再拡大や、地政学リスクなど、米国経済に対する懸念材料は決して少なくありません。
たとえば、アフガニスタン問題。
アフガニスタンから米国が撤退したことで、タリバンに接近している中国は“一帯一路”が前進する可能性があります。実際に中国では、タリバンのカブール占拠と米軍の撤収は、「サイゴン陥落」(1975年)と比較され、米国批判の的となっています。2022年に米中間選挙を控え、アフガニスタンが米国の内政問題になることで、リスク要因としてクローズアップされる局面も出てくるのではないでしょうか。
図7は米国のNYダウを、1年移動平均と比較したグラフです。
NYダウは移動平均からのかい離が強くなり、その上昇角度は徐々に強くなっています。一方、上記で挙げた以外に金融面での出口戦略など、リスク要因も増加しています。
秋相場、とくに9月は歴史的にも波乱の起きやすい傾向にあります。「強い米国株」と「増えるリスク要因」の不均衡が、価格変動を増幅させる可能性があるため注意した方が良いでしょう。
図表7 NYダウ(月足)〜過去にない上昇角度で上昇中
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。 期間:1992年9月〜2021年8月。2021年8月は8/16の終値を参照。