6月第2週(6/7〜6/11)の日経平均株価は、国内での新型コロナウイルス向けワクチンの接種進展に期待感が高まり、景気敏感株を中心にアフターコロナ関連銘柄が物色される展開となりました。ただ、節目の29,000円目前で利益確定売りも目立ちました。
一方、6/14(月)は買いが大きく先行し、日経平均株価は29,000円を回復。6/15(火)も続伸となり、今後も上昇基調となる可能性が大きいと予想されます。
その理由について、チャートを用いてご説明します。
日経平均株価は、6月第2週(6/7〜6/11)終値が28,948円73銭となり、前週末(6/4)比で7円21銭(0.02%)高、週足ベースで反発となりました。
6/8(火)から6/9(水)にかけては、節目の29,000円を目前に上値の重さが目立ち、利益確定売りに押されて続落となりました。こうした中、6/9(水)より新型コロナウイルス向けワクチンの職域接種の受付が開始。6/10(木)はワクチンの普及による経済正常化期待を見込む買いや、米ハイテク株高を受けた値がさの半導体関連株が買われ、上昇しました。
6/11(金)はバイオジェンがエーザイ(4523)と共同開発したアルツハイマー型認知症治療薬が米当局より承認されたことを受けて、米製薬関連株が上昇。国内でもエーザイなど、医薬品株が堅調に推移しました。
一方、6月第2週(6/7〜6/11)のNYダウは前週末比0.8%安、週足ベースで3週ぶりに反落となりました。
ダウは再び高値圏に迫り、やや軟調な展開となった中、6/9(水)は米長期金利がおよそ1ヵ月ぶりに低水準となりました。
6/10(木)は5月の米消費者物価指数(CPI)が前年同月比から上昇し、市場予想も上回った一方、米長期金利が低下。アマゾンなどハイテク株の一角が下支えし、4日ぶりの反発となりました。
6/11(金)については主要3指標が連日続伸し、S&P500は連日最高値を更新。6/14(月)はFOMCを週内に控え、ダウは上値が重く、3日ぶりに反落。こうした中、ナスダックは3日続伸し、およそ1ヵ月ぶりに最高値を更新しました。
図表1 日経平均株価の値動きとその背景
終値 | 前日比 | ||
6/8(火) | 28,963.56 | -45.74 | 反落。米当局より認知症治療薬候補の承認申請が認められたエーザイが上昇し、医薬品株が高い。一方、節目の2万9,000円を目前に上値が重く、利益確定売りが優勢に。 |
6/9(水) | 28,860.80 | -102.76 | SOX指数が下落し、日本の半導体関連銘柄にも売りが波及。東京エレクトロンなど半導体の値がさ株が安く、指数を押し下げた。 |
6/10(木) | 28,958.56 | 97.76 | 3日ぶりに反発。米長期金利が低下し、半導体関連株など値がさのグロース株が買い戻された。 |
6/11(金) | 28,948.73 | -9.83 | 小幅に反落。節目の2万9,000円を目前に利益確定売りに押された。米当局より、認知症治療薬が承認され、エーザイが上昇、医薬品株も総じて高い。 |
6/14(月) | 29,161.80 | 213.07 | 米株高を追い風に上昇。緊急事態宣言の解除を20日に控え、経済活動の正常化期待が高まる。 |
- ※日経平均株価データ、各種資料をもとにSBI証券が作成。
図表1 日経平均株価の値動きとその背景
- ※当社チャートツールをもとに作成。データは2021/6/15 取引時間中。
図表3 NYダウ(日足)と主要移動平均線・おもな出来事
- ※当社チャートツールをもとに作成。データは2021/6/15時点。
図表4 ドル・円相場(日足)と主要移動平均線・おもな出来事
- ※当社チャートツールをもとに作成。データは2021/6/15時点。
図表5 当面の重要スケジュール
月日(曜日) | 国・地域 | 予定内容 | 備考 |
6/16(水) | 日本 | 5月貿易統計 | |
通常国会会期末 | |||
中国 | 5月小売売上高、工業生産、都市部固定資産投資 | ||
ジュネーブ | 米ロ首脳会談 | ||
アメリカ | パウエルFRB議長会見(経済見通し発表) | テーパリングに関するヒントは出るのか | |
5月住宅着工件数 | |||
★決算発表 | レナー | ||
6/17(木) | 日本 | 日銀金融政策決定会合(〜18日) | |
アメリカ | 6月フィラデルフィア連銀製造業景況感指数 | ||
★決算発表 | アドビ | ||
6/18(金) | 日本 | 黒田日銀総裁会見 | |
5月消費者物価 | |||
アメリカ | ★決算発表 | カーニバル | |
イラン | 大統領選 | ||
6/20(日) | 日本 | 緊急事態宣言解除予定 | |
6/21(月) | アメリカ | 5月シカゴ連銀全米活動指数 | |
6/22(火) | アメリカ | 5月中古住宅販売件数 | |
6/23(水) | 日本 | 4/26・27の日銀金融政策決定会合議事要旨 | |
アメリカ | 1-3月期経常収支 | ||
5月新築住宅販売件数 | |||
6/24(木) | 日本 | 5月企業向けサービス価格指数 | |
イギリス | 金融政策発表 | ||
アメリカ | 5月耐久財受注 | ||
実質GDP(1〜3月、確報値) | |||
★決算発表 | アクセンチュア、フェデックス、ナイキ | ||
6/25(金) | 日本 | 東京都議会選挙告示(7/4投開票) | |
★決算発表 | 出前館、壱番屋、高島屋 | ||
アメリカ | 5月個人所得・個人支出 | ||
6月ミシガン大学消費マインド |
- ※各種報道、日米欧中銀WEBサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合があります。
図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定日(月日は現地時間)
2021年 | |
日銀金融政策決定会合 | 6/18(金)、7/16(金)、9/22(水)、10/28(木)、12/17(金) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 6/16(水)、7/28(水)、9/22(水)、11/3(水)、12/15(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 7/22(木)、9/9(木)、10/28(木)、12/16(木) |
- ※日米欧中銀WEBサイトを基にSBI証券が作成。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合があります。 なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しています。日付は日本時間(ただし、ECBの結果発表日程は現地時間)を基準に記載しています。
6/14(月)の日経平均株価は前営業日比213円07銭高、終値は29,161円80銭と、5/10(月)以来の高値水準回復となりました。この結果、日経平均株価は高値(3/18、4/6、5/10)を結ぶ上値抵抗ラインを超え、チャート上では三角保ち合いを上放れた可能性が強まってきました。
さらに、図表7に示した以下の点から、一目均衡表上の三役好転が完成しつつあります。
(1)紫色の遅行スパンの線が日々線の上に“上放れ”(緑色の丸)。
(2)日々線がすでに、水色の基準線・赤色の転換線の上に“上放れ”(黄色の丸)。
(3)日々線が“クモ”の上に“上放れ”る兆し(オレンジ色の丸)。
早ければ6/15(火)にも三役好転が完成し、テクニカル分析を重視する投資家の投資マインドが、大きく好転することが予想されます。
図表7 日経平均株価の一目均衡表は「三役好転」完成へ
- ※当社チャートツールをもとに作成。データは2021/6/15時点。
一方、ファンダメンタルズ面からみて“強気転換”は妥当なのでしょうか。
結論から申し上げますと、妥当であるばかりか、株価上昇をさらに後押しすると予想します。
図表8にもあるように、米国における実質長期金利の低下(青色の線)は、米国株の上昇(赤色の線)を促してきました。
今後この傾向はさらに強まり、米国株上昇は加速し、日本株も上昇すると期待されます。特に足元は、米10年国債利回りが低下する一方、米消費者物価は上昇する傾向にあり、前者から後者を引いて求められる米実質長期金利の低下が加速(赤色の丸)しています。
そもそも、米実質長期金利がマイナス圏に入っている現状は、実質的に金融緩和状態が強まっていることを意味するため、米国株式市場に資金が流入しやすいと考えられます。
ただ、米国の景気回復傾向が強まる中で、米10年国債利回りの低下は長期化するかと問われると、微妙なところです。
そこで注目したいのが、米国時間6/16(水)に予定されているFOMC(米連邦公開市場委員会)の結果発表および、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の記者会見と経済見通しです。
特にFOMCでは、量的緩和の縮小(テーパリング)に対する議論が進むのか、インフレに対する動向が気になるところでしょう。
ただし、パウエル議長の会見や経済見通しを経て、FRBメンバーの金利見通しが一定以上に強まってきた場合、長期金利の動向に変化が生じ、波乱が生じるリスクは残るため注意は必要です。
図表8 米実質金利は長期低下傾向を辿り、日米株価はそれに下支えされて上昇
- ※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。
- ※株価については、日経平均株価、S&P500ともに1999年12月末の株価を1として指数化(月足)。
- ※米実質長期金利=米10年国債利回り−米消費者物価(食品・エネルギーを除く)の前年同月比変動率。