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≪日経平均の今後の展開とは≫3万円回復後に必要なポイント

2021/4/13

投資情報部 鈴木英之

日経平均株価は米株高などを負い風に、4/6(火)には一時3万円を回復しましたが、その後は一進一退の展開です。
今後3万円を超え、さらなる上昇相場になるのでしょうか。

そこで今回は、2021/3期や2022/3期の日経平均採用銘柄の業績変動に大きく影響している銘柄を分析することで、日経平均株価の先行きを考えるポイントについて考えてみたいと思います。

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1一時3万円達成も、その後は一進一退の展開

日経平均株価の4月第1週(4/5〜4/9)終値は29,768円06銭となり、前週末(4/2)比85円94銭(0.3%)安、週足ベースでは3月第5週(3/29〜4/2)が2.3%高で、反落となりました。

4/5(月)以降、日経平均株価は一進一退の展開。4/9(金)は米株高を追い風に反発し、一時3万円を上回る場面もありました。同日夜、政府は新型コロナウイルスの感染再拡大を受け、東京、京都、沖縄の3都府県に、緊急事態宣言に準じる措置として「まん延防止等重点措置」を適用することを決定。これにより、重点措置が適用されるのは東京など6都府県になりました。なお、日経平均株価はこうした重点措置は織り込み済みとされ、大きな影響はありませんでした。

一方、4月第1週(4/5〜4/9)のNYダウは前週末比2.0%高で、週足ベースで続伸となりました。
4/7(水)に公表されたFOMC議事要旨や、4/8(木)に行われたパウエルFRB議長が参加したIMF討論会で、景気回復後も金融緩和が当面継続されるとの見方が強まり、投資家に安心感が広まりました。こうした発言もあり、4/6(火)以降、米長期金利は1.7%を下回って推移し、高PER銘柄である主要IT株が軒並み上昇。フェイスブックやアルファベットが相次いで上場来高値を更新しました。

4/9(金)は経済活動の正常化期待の高まりや、大手企業の決算への期待などを背景に、主要3指標がそろって最高値を更新。S&P500は4/7(水)から4/9(金)にかけて3日連続で過去最高値を更新しました。

こうした中、4月第2週(4/12〜4/16)以降は、米国において1-3月期の決算発表が本格化します。4/14(水)はJPモルガン・チェースやゴールドマン・サックスなど大手銀行、月末にかけては大手IT企業の発表が予定されています。

気になるトピックス

4/16(金)に米ワシントンで予定されている「日米首脳会談」。バイデン米大統領がはじめて対面で行う外国首脳会談では、日中問題などがどの様に議論されるのか、注目が集まります。

図表1 日経平均株価の値動きとその背景(2021/4/7〜2021/4/13)

  日経平均株価 日米株式市場等の動き
終値 前日比
4/7(水) 29,730.79 +34.16 小幅に反発。決算発表を前に様子見ムードも。東芝は英投資ファンドが買収提案と報道を受け、ストップ高比例配分に。
4/8(木) 29,708.98 -21.81 決算発表を前に利益確定売りが優勢となった中、ファストリなど値がさ株が日経平均を下支え。
4/9(金) 29,768.06 +59.08 米株高を追い風に上昇。一時3万円台を上回る場面も。ダウは4/5以来の過去最高値更新。
4/12(月) 29,538.73 -229.33 利益確定売りに押され、反落。新型コロナウイルス感染再拡大に対し、警戒感も。
4/13(火) 29,751.61 212.88 前日の大幅安の反動で反発。一方、値上がり銘柄数と値下がり銘柄数は拮抗。
  • ※日経平均株価データ、各種資料をもとにSBI証券が作成。

図表2 日経平均株価(日足)と主要移動平均線・おもな出来事

  • ※当社チャートツールをもとに作成。データは2021/4/13取引時間中。

図表3 NYダウ(日足)と主要移動平均線・おもな出来事

  • ※当社チャートツールをもとに作成。データは2021/4/13。

図表4 ドル・円相場(日足)と主要移動平均線・おもな出来事

  • ※当社チャートツールをもとに作成。データは2021/4/13。

図表5 当面の重要スケジュール

月日 国・地域 予定内容 備考
4/14(水) 日本 2月機械受注  
    ★決算発表 良品計画
  アメリカ 3月輸入物価指数  
    ベージュブック  
    ★決算発表 ウェルズファーゴ、テラドッグヘルス
4/15(木) 日本 日銀支店長会議で黒田総裁挨拶  
    地域経済報告(さくらレポート)  
  アメリカ 3月小売売上高  
    3月鉱工業生産・設備稼働率  
    ★決算発表 TSMC、バンクオブアメリカ、シティグループ
4/16(金) 中国 1-3月期実質GDP  
    3月工業生産、小売売上高、都市部固定資産投資  
  アメリカ 日米首脳会談(ワシントン)  
    3月住宅着工件数、建設許可件数  
    4月ミシガン大学消費者マインド指数  
    ★決算発表 モルガンスタンレー
4/19(月) 日本 3月貿易統計  
  アメリカ ★決算発表 IBM、コカ・コーラ、ユナイテッドエアラインズ
4/20(火) 日本 2月第三次産業活動指数  
  アメリカ ★決算発表 ジョンソン&ジョンソン、P&G、ネットフリックス
4/21(水) アメリカ ★決算発表 ベライゾンコミュニケーションズ、ラムリサーチ
4/22(木) 日本 横浜に日本初の都市型ロープウェイ運航開始予定  
    ★決算発表 日本電産、オービック、ディスコ、ディスコ
  アメリカ 新規失業保険申請件数  
  3月中古住宅販売件数  
    ★決算発表 AT&T、インテル、ダウ、アメリカン航空
  EU ECB定例理事会(ラガルド総裁会見)  
4/23(金) 日本 3月消費者物価  
    ★決算発表 キエムスリー、キヤノンマーケティングジャパン
  アメリカ 3月新築住宅販売件数  
    ★決算発表 アメリカン・エキスプレス、シュルンベルジェ
  • ※各種報道、日米欧中銀WEBサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合があります。

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定日(月日は現地時間)

  2021年
日銀金融政策決定会合 4/27(火)、6/18(金)、7/16(金)、9/22(水)、10/28(木)、12/17(金)
FOMC(米連邦公開市場委員会) 4/28(水)、6/16(水)、7/28(水)、9/22(水)、11/3(水)、12/15(水)
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 4/22(木)、7/22(木)、9/9(木)、10/28(木)、12/16(木)
  • ※日米欧中銀WEBサイトを基にSBI証券が作成。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合があります。 なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しています。日付は日本時間(ただし、ECBの結果発表日程は現地時間)を基準に記載しています。

2業績回復・株価上昇シナリオに死角はないのか?

日経平均株価は2020/1/17(金)の24,115円95銭を高値に、2020/3/19(木)の安値16,358円19銭まで約32%下げましたが、その後は約88%上昇し、2021/2/16(火)に30,714円52銭の高値を付けました。
2020年初頭から新型コロナウイルスの感染が拡大し、企業業績の見通しが急速に悪化しましたが、その後は改善傾向となり、株価上昇につながりました。現在は3万円を回復したり、跳ね返されたりと一進一退の展開です。

今後、日経平均株価は3万円を超え、上昇を続けるでしょうか。
日経平均採用銘柄の業績推移を吟味することで、考えてみます。

図表7は日経平均採用銘柄のうち、予想営業利益の変動額が大きい銘柄について、その金額や内容を吟味したものです。2021/3期の予想営業利益増益要因としては、過剰流動性による世界的な株高、世界的な景気底入れ・回復、原油・商品市況等の上昇、企業の合理化努力、巣ごもり消費や情報化の加速などがあげられます。
逆に2021/3期の予想営業利益減益要因としては、人の動きが止まり、観光や宿泊の需要が減少したことが大きく響いたとされます。

2022/3期は企業業績のさらなる改善が期待されますが、その鍵を握るのは上記の減益サイドに影響した諸状況から、企業が回復できるか否かに大きくかかっていると言えます。
具体的には、人の動きが止まったことで一敗地にまみれた陸運・空運や、日本を代表する産業の1つである自動車の業績が改善できるか否かは、業績変動を通じ、日経平均株価へ大きく影響するとみられます。

株価を見る限りでは、陸運・空運の業績回復は、市場からなかば疑問視されており、株価の戻りも鈍いようです。自動車については、トヨタ(7203)などが“新型コロナウイルス以前”の水準を回復しており、市場は現状を一時的なものと割り切っているようです。

事実、新型コロナウイルスは変異株の影響で、国内外で再び感染が拡大しています。一部ではテレワークの定常化を進めるにあたり、通勤定期券を廃止する企業も出ています。こうした動きが広がると、陸運は新型コロナウイルス以前の収益の回復や株価回復に時間を要するようになるでしょう。

空運についても、財政が課題視される現状で、新型コロナウイルスによる影響の長期化は過小評価できない問題です。また、自動車についても、半導体不足の問題があり、特に当面の業績予想が慎重になったり、見送られたりする可能性があることから、注意が必要です。

日経平均株価が3万円を超えて上昇するには、2021/3期に一敗地にまみれた銘柄の業績が2022/3期、市場予想通りに回復するか否かが大きなポイントになりますが、上記に記載した通り、足元の課題は簡単なことではないようです。

図表7 日経平均株価に業績面で大きな影響を与えているとみられる採用銘柄

★2021年3月期の営業利益が大きく増加したと推測される日経平均採用銘柄
銘柄名 推定増加額(億円) 推定されるおもな増益要因
(1)ソフトバンクグループ(9984) 38,414 投資ファンドの収益が大幅に向上
(2)武田薬品工業(4502) 4,291 ビジネスの好調に加え、効率化も貢献
(3)日本製鉄(5401) 4,126 高炉休止・固定費削減、景気回復
(4)ENEOSホールディングス(5020) 3,754 在庫評価減がなくなる
(5)ソニーグループ(6758) 1,240 巣ごもり需要、株式市場好調(金融)
★2021年3月期の営業利益が大きく減少したと推測される日経平均採用銘柄
銘柄名 推定減少額(億円) 推定されるおもな減益要因
(1)東日本旅客鉄道(9020) -8,876 人の移動が大幅に減少。宿泊も減少。
(2)東海旅客鉄道(9022) -8,402
(3)ANAホールディングス(9202) -5,658
(4)西日本旅客鉄道(9021) -4,412
(5)トヨタ自動車(7203) -3,701 操業度の悪化。足元では半導体不足も。
★2022年3月期の営業利益が大きく増加すると予想される日経平均採用銘柄
銘柄名 予想減少額(億円) 予想されるおもな増益要因
(1)トヨタ自動車(7203) 5,911 世界経済・操業度の回復
(2)東日本旅客鉄道(9020) 5,525 新型コロナ感染一巡で人の移動や宿泊が回復
(3)東海旅客鉄道(9022) 4,821
(4)ANAホールディングス(9202) 4,564
(5)西日本旅客鉄道(9021) 2,969
  • ※会社公表データ、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
  • ※2021年3月期、2022年3月期ともに営業利益はBloomberg集計の市場コンセンサス。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。また、客観的なデータを示す目的で作成したものであり、銘柄の推奨を意図しておりません。ANAホールディングス(9202)については継続企業の前提に疑義が指摘されており、注意が必要です。
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