11月相場が終了しました。日経平均株価の月末終値は前月末比で15.0%も上昇しましたが、11月の月間上昇率としては1994/1の16.1%以来、およそ26年10ヵ月ぶりの「大幅上昇」となりました。
そうした中、東京株式市場はいよいよ「師走相場」を迎えました。日経平均は11月に24,000円台前半の上値抵抗ラインを抜け、上昇ペースが加速してきたかにみえますが、このまま年末まで好調を維持できるのでしょうか。
11月相場が終了しました。日経平均株価の月末終値は26,433円62銭となり、前月末比3,456円49銭(15.0%)高と反発(月足ベース)しました。また、11月の月間上昇率としては1994/1の16.1%以来、およそ26年10ヵ月ぶりの「大幅上昇」となりました。
11/3(火)に米大統領選挙の投票が終了し、イベントリスクの後退から世界的にリスクマネーの動きが活発化しました。
米国では、機関投資家が運用成績の参考にするS&P500指数が11月は10.8%も上昇、欧州ではドイツDAX指数が15.0%も上昇しました。また、ファイザー社やモデルナ社などの新型コロナウイルス向けのワクチンが治験で高い有効性を示し、ワクチンの普及期待が高まったことや、低金利の持続、大型財政出動に対する期待などが株価上昇の加速につながりました。
一方、新型コロナウイルスの感染拡大は勢いを増しています。
インフルエンザ同様、低温下では感染が拡大しやすいとみられ、11月の世界の新規感染者数は1日当たり53.4万人となり、10月の平均から約38%増加、死亡者数も1日当たり8,957人と同約66%増加しました。日本国内でも、欧米に比べ絶対数そのものは低いものの、11月の1日当たり新規感染者数は10月に比べ約2.8倍近い1,568人、1日当たり死亡者数も前月比約65%増の10人と感染が拡大しました。
東京株式市場では、日経平均株価の上昇率が15.0%にのぼったのに対し、TOPIXの上昇率が11.1%にとどまったことを反映し、NT倍率(日経平均株価/TOPIX)が11月末、史上はじめて15倍台に乗せ、終値が15.06倍と過去最高値を更新しました。この他、日経平均への寄与度の高い銘柄が総じて大きく上昇したため、TOPIXとのパフォーマンス格差は一層開くことになりました。
値上がり銘柄数を値下がり銘柄数で割った比率の25日移動平均で示される「騰落レシオ」は日経平均採用銘柄が約117%、東証1部全体が約105%になっています。日経平均採用銘柄の方が値上がり銘柄数が相対的に多いことを示しており、NT倍率が上昇する要因となっています。
表1 日経平均株価の値動きとその背景(2020/11/24〜2020/12/1)
日経平均株価 | 日米株式市場等の動き | ||
終値 | 前日比 | ||
11/24(火) | 26,165.59 | +638.22 | 米株高を追い風に日経平均株価は2020/6/16以来の上げ幅に。 |
11/25(水) | 26,296.86 | +131.27 | およそ29年半ぶりの連日高値更新。ダウは初めて3万ドルを突破。 |
11/26(木) | 26,537.31 | +240.45 | 1991/4以来の高値回復。米IT株高を追い風に上昇。 |
11/27(金) | 26,644.71 | +107.40 | 東証1部売買代金が3兆円台で、11/11以来の高水準。 |
11/30(月) | 26,433.62 | -211.09 | バブル高値からバブル後安値の下げ幅に対し黄金分割比率(61.8%)の戻し達成。 |
12/1(火) | 26,787.54 | +353.92 | 中間配当支払い額が推定で1兆円超あり、朝方から買い先行。 |
- ※日経平均株価データ、各種資料をもとにSBI証券が作成。
図1 日経平均株価(日足)と主要移動平均線・おもな出来事
- ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2020/12/1取引時間中。
図2 NYダウ(日足)と主要移動平均線・おもな出来事
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2020/12/1現在。
図3 ドル・円相場(日足)と主要移動平均線・おもな出来事
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2020/12/1取引時間中。
表2 当面の重要スケジュール
月日 | 国・地域 | 予定内容 | ポイント |
12/2(水) | 日本 | 11月マネタリーベース | |
11月消費動向調査 | |||
米国 | 11月ADP雇用統計 | 労働省発表「雇用統計」の“前哨戦” | |
ベージュブック | |||
12/3(木) | 米国 | 11月ISM非製造業景況指数 | |
11月J.P.モルガン・グローバル・コンポジットPMI | |||
12/4(金) | 米国 | 11月雇用統計 | 非農業部門雇用者数の市場コンセンサスは54万人増 |
10月貿易収支 | |||
10月製造業受注 | |||
- | APEC首脳会議 | ||
12/7(月) | 日本 | 10月景気動向指数 | |
中国 | 11月貿易収支 | ||
米国 | 10月消費者信用残高 | ||
12/8(火) | 日本 | 7-9月期GDP確報値 | |
10月家計調査 | |||
10月毎月勤労統計調査 | |||
11月景気ウォッチャー調査 | |||
ドイツ | 12月ZEW景況感指数 | ||
米国 | 米大統領選挙、州の選挙結果認定の期日 | ||
12/9(水) | 日本 | 10月機械受注 | |
中国 | 11月生産者物価 | ||
11月消費者物価 | |||
12/10(木) | 日本 | 10-12月期法人企業景気予測調査 | |
11月国内企業物価指数 | |||
米国 | 11月消費者物価 | ||
11月財政収支 | |||
- | ECB定例理事会(ラガルド総裁会見) | ||
- | EU首脳会議(〜11日) | ||
12/11(金) | 日本 | メジャーSQ算出日 | |
米国 | 11月生産者物価 | ||
12月ミシガン大学消費者マインド指数 |
- ※各種報道、日米欧中銀WEBサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合があります。
表3 日米欧中央銀行会議の結果発表予定日(月日は現地時間)
2020年 | 2021年 | |
日銀金融政策決定会合 | 12/18(金) | 1/21(木)、3/19(金)、4/27(火)、6/18(金)、7/16(金)、9/22(水)、10/28(木)、12/17(金) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 12/16(水) | 1/27(水)、3/17(水)、4/28(水)、6/16(水)、7/28(水)、9/22(水)、11/3(水)、12/15(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 12/10(木) | 1/21(木)、3/11(木)、4/22(木)、7/22(木)、9/9(木)、10/28(木)、12/16(木) |
- ※日米欧中銀WEBサイトを基にSBI証券が作成。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合があります。 なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しています。日付は日本時間(ただし、ECBの結果発表日程は現地時間)を基準に記載しています。
東京株式市場はいよいよ「師走相場」を迎えました。11月に24,000円台前半の上値抵抗ラインを抜け、上昇ペースが加速してきたかにみえる日経平均株価ですが、このまま年末まで好調を維持できるのでしょうか。
図4は過去30年間における日経平均株価の月別平均騰落率です。4月と11月の好パフォーマンスが目立っており、11月はまさにその通りになったといえそうです。ただ、11月の成績には、上記の2020/11の上昇率も大きく貢献している形になっており、注意が必要です。こうした中、12月のパフォーマンスはアノマリー上、4月および11月に次いで好成績になっています。過去10年に限っても平均で+0.9%になっています。
日経平均株価は11月に15.0%も上昇しましたが、はたして反動安は警戒しなくていいのでしょうか。
過去の例をあげると、1985年以降の月次騰落率で、最高記録は1990/10の+20.1%でしたが、翌月は10.9%下落しました。1986/3には月間で16.3%上昇しましたが、翌月は-0.2%にとどまりました。1994/1に16.1%上昇した後、翌月は-1.1%でした。こうしてみると、確かに反動安には一応の注意が必要といえるでしょう。ただ、1985年以降、日経平均が月次で10%以上値上がりした後、翌月の勝敗は5勝7敗となっています。「多少注意が必要」程度の配慮でよいかもしれません。
11月末現在、日経平均株価のRSI(総体力指数)は74.4%であり、過熱圏入りを示す70%を上回っています。ただ、25日移動平均線からのかい離率(7〜8%を超えると過熱圏入り)は6.2%にとどまっているうえ、日経平均騰落レシオ(120%を超えると過熱圏入り)も115.7%と過熱圏入り直前にとどまっています。12/1(火)の上昇でさらに数字が上昇しそうですが、直前が極端なこう着相場だったため、これらの数字が強くなりやすいという側面があり、やはり「多少注意が必要」程度に理解しておけばよいように思われます。
11/30(金)の日経平均株価は下落しましたが、1989年末に付けた過去最高値38,915円からバブル崩壊後の最安値(2009/3/10終値)7,054円までの下落幅31,861円に対し、黄金分割比率61.8%を乗じた19,690円を回復した水準である26,744円(7,054+19,690)を一時上回ったことで、目標達成感が台頭したと考えられます。ただ、この日はMSCI構成銘柄の入れ替えに伴い、日本株から資金が流出したことを考えると、「目標達成感」の部分はそれ程大きくなかったとみられます。12/1(火)は3月決算銘柄の中間配当支払いもあり大幅反発に転じました。
ここから上値については、(1)心理的節目である27,000円、(2)1991/3/18の戻り高値27,146円、(3)89年末に付けた過去最高値からバブル崩壊後の最安値までの下落幅に対し、3分の2戻しをした水準である28,295円等の節目がありますが、それ程重要性は乏しいとみられます。世界の主要株価指標が過去最高値を更新する中、日経平均株価の出遅れが指摘され、2021年に過去最高値に向かう可能性はゼロではないと思います。2020年末は27,000円〜28,000円程度でいったん着地する可能性が大きいように予想されます。
この歴史的過剰流動性相場がピークを付けるタイミングは意外にも、新型コロナウイルスの克服が明確になった時になるのかもしれません。
図4 日経平均株価・月別平均騰落率(過去30年)
- ※日経平均株価データをもとにSBI証券が作成。1〜11月は1991〜2020年の30年間、12月は1990〜2019年の30.年間の平均値をグラフ化しています。