日経平均株価は一進一退を繰り返す展開となり、10月第3週の終値は前週末比105円96銭(0.5%)高と週足ベースでは小幅反発になりました。10/12(月)以降、東証1部の売買代金は連日で2兆円を下回っており、基本的には様子見気分の強い展開になっています。また、米国株式市場も方向感に乏しい展開となっている上、外為市場では10/21(水)以降、ドル・円相場が推移する領域が1ドル105円台から104円台にシフトした形になり、企業業績の改善に冷や水をあびせる様な状況になっています。
そうした中、米大統領選挙まで約1週間と迫ってきました。支持率では、引き続きバイデン氏が優位とみられており、株式市場は、バイデン氏優位を織り込む動きもみられ、このままバイデン氏が勝利すれば、波乱は少ないように思われます。
しかし、予想通りに事態がすすまない可能性もあるでしょう。
米大統領選挙や新型コロナウイルスの感染拡大など、今投資家はどのようなリスクに注意すべきなのでしょうか。
10月の東京株式市場では、日経平均株価が第1週(10/5〜10/9)に前週末比589円79銭(2.6%)高と、3週間ぶりの反発となった後、第2週(10/12〜16)の終値は前週末比209円6銭(0.9%)安と小幅に下落しました。そして続く10月第3週(10/19〜23)の日経平均株価は買い先行となり、10/19(月)は前週末比260円50銭高の23,671円13銭で大引けを迎えました。終値としては2019年終値である23,656円62銭を上回り、2/14(金)以来の高値水準となりました。
その後、日経平均株価は一進一退を繰り返す展開となり、10月第3週の終値は前週末比105円96銭(0.5%)高と、週足ベースでは小幅反発になりました。10/12(月)以降、東証1部の売買代金は連日2兆円を下回り、10/26(月)には1兆5,929億円と8/24(月)以来の低水準になり、様子見気分の強い展開になっています。また、米国株式市場も方向感に乏しい展開になっている上、外為市場で10/21(水)以降、ドル・円相場が推移する領域が1ドル105円台から104円台にシフトした形になり、企業業績の改善に冷や水をあびせる様な状況になっています。
米国時間10/22(木)夜(日本時間10/23午前)には米大統領選挙に向けた最後のテレビ討論会が行われました。初回のテレビ討論会と比較し、終始抑制のとれた議論になった様に見受けられましたが、内容に目新しいものはなく、体制に大きな変化もありませんでした。引き続き支持率ではバイデン氏優位となっていますが、トランプ氏が逆転する可能性や、大統領決定まで時間を要する可能性などが意識され、市場関係者は様子見気分を強めています。
新型コロナウイルスの感染拡大も、気がかりな材料です。10/23(金)には、米国で1日当たりの新規感染者数が83,757人となり、過去最高を記録した他、欧州でも感染者数が増加し、経済活動を制限する国も出てきています。また、世界の新型コロナウイルス新規感染者数も10/23(金)に48.2万人増え、こちらも過去最高記録になっています。
こうした中、米国や日本では2020/7〜9期の決算発表が本格化しています。日本時間10/22(木)朝に決算発表を行ったインテルについては、データセンター向けの売上高が予想外に減少する展開となり、内外の半導体関連株に不透明感を与える展開となっています。
表1 日経平均株価の値動きとその背景(2020/10/19〜2020/10/27)
日経平均株価 | 日米株式市場等の動き | ||
終値 | 前日比 | ||
10/19(月) | 23671.13 | 260.50 | NY株高を好感。中国経済指標上振れも追い風。2019年末終値を上回る大引け。 |
10/20(火) | 23,567.04 | -104.09 | 米与野党協議への期待が剥落。売買代金は7日連続2兆円割れ。 |
10/21(水) | 23,639.46 | +72.42 | 米追加経済対策の合意に期待感。東証33業種中、31業種が上昇。 |
10/22(木) | 23,474.27 | -165.19 | マザーズ先物取引一時中断。マザーズ市場が大幅安。 |
10/23(金) | 23,516.59 | +42.32 | 米経済指標改善や金利上昇を追い風に反発。 |
10/26(月) | 23,494.34 | -22.25 | 売買代金およそ2ヵ月ぶりの低水準。村田製が営業利益増加見込みで20年半ぶり高値。 |
10/27(火) | 23,485.80 | -8.54 | 米1日あたりのコロナ新規感染者数が過去最高に。米株安が重荷。 |
- ※日経平均株価データ、各種資料をもとにSBI証券が作成。
図1 日経平均株価(日足)と主要移動平均線・おもな出来事
- ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2020/10/27取引時間中。
図2 NYダウ(日足)と主要移動平均線・おもな出来事
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは米国時間2020/10/27現在。
図3 ドル・円相場(日足)と主要移動平均線・おもな出来事
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2020/10/27取引時間中。
表2 当面の重要スケジュール
月日(曜日) | 国・地域 | 予定内容 | ポイント |
10/28(水) | 日本 | 日銀金融政策決定会合 | |
★決算発表 | ソニー、日立製作所、花王、小松製作、野村総研 | ||
米国 | ☆決算発表 | ビザ、ボーイング、ギリアドサイエンシズ、ビヨンドミート(E) | |
10/29(木) | 日本 | 黒田日銀総裁会見 | |
消費動向調査(10月) | |||
★決算発表 | NTTドコモ、東京エレク、武田薬、パナソニック、三菱電機 | ||
米国 | ECB定例理事会(ラガルド総裁会見) | ||
7-9月期GDP | |||
米新規失業保険申請件数 | |||
米中古住宅販売仮契約(9月) | |||
☆決算発表 | アマゾンドットコム、アップル、フェイスブック、アルファベット | ||
10/30(金) | 日本 | 失業率・有効求人倍率(9月) | |
鉱工業生産 | |||
★決算発表 | アステラス、村田製作所、塩野義、中部電力、SGホールディングス | ||
米国 | 米個人所得・個人支出(9月) | ||
☆決算発表 | シェブロン、アンダーアーマー、エクソンモービル | ||
11/1(日) | 日本 | 東証、第一部への上場・昇格基準の統一を実施 | |
「大阪都構想」の是非を問う2度目の住民投票実施 | |||
米国 | 冬時間入り | ||
11/2(月) | 日本 | 10月自動車販売台数 | |
★決算発表 | NTTデータ、伊藤忠テクノソリューションズ、帝人、日本ハム、オリックス | ||
中国 | 10月Caixin製造業PMI | ||
米国 | 10月ISM製造業景況指数 | ||
☆決算発表 | エスティローダー、ペイパル・ホールディングス、アリスタネットワークス | ||
11/3(火) | 米国 | 大統領選挙・上下両院選挙 | |
9月製造業受注 | |||
11/4(水) | 日本 | 10月マネタリーベース | |
9 月16・17日開催の日銀金融政策決定会合議事録要旨 | |||
★決算発表 | 三菱ケミ、SUBARU、ケーズHD、ニチレイ、横川電、伊藤忠、ソフトバンク | ||
米国 | FOMC(〜5日) | ||
10月ADP雇用統計 | |||
9月貿易収支 | |||
ISM非製造業景況指数 | |||
米連邦地裁「TikTok」利用全面禁止を審理 | |||
☆決算発表 | アルベマール、アンシス、クアルコム | ||
11/5(木) | 日本 | ★決算発表 | 任天堂、ダイキン、三井不、クボタ、アサヒ、アコム、エーザイ |
11/6(金) | 日本 | 9月家計調査 | |
9月毎月勤労統計調査 | |||
★決算発表 | NTT、トヨタ、本田技研、国際帝石、キリン、ユニ・チャーム、シャープ | ||
米国 | ☆決算発表 | AIG、ボール、3Dシステムズ、GM、スクエア、ウーバー・テクノロジーズ |
- ※各種報道、日米欧中銀WEBサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合があります。
表3 日米欧中央銀行会議の結果発表予定日(月日は現地時間)
2020年 | 2021年 | |
日銀金融政策決定会合 | 10/29(木)、12/18(金) | 1/21(木)、3/19(金)、4/27(火)、6/18(金)、7/16(金)、9/22(水)、10/28(木)、12/17(金) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 11/5(木)、12/16(水) | 1/27(水)、3/17(水)、4/28(水)、6/16(水)、7/28(水)、9/22(水)、11/3(水)、12/15(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 |
10/29(木)、12/10(木) | 1/21(木)、3/11(木)、4/22(木)、7/22(木)、9/9(木)、10/28(木)、12/16(木) |
- ※日米欧中銀WEBサイトを基にSBI証券が作成。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合があります。
なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しています。日付は日本時間(ただし、ECBの結果発表日程は現地時間)を基準に記載しています。
米大統領選挙まで約1週間と迫ってきました。現在の支持率をブルームバーグの特集サイトからみると、バイデン氏50.8%、トランプ氏43.0%となっており、バイデン氏優位の構図に変化はないように見受けられます。なお、前回の大統領選挙での選挙直前の支持率はクリントン氏46.8%、トランプ氏43.8%で、今回の支持率の方が差が大きいことは確かです。こうした中、米株式市場は、バイデン氏優位を織り込む動きもみられ、このままバイデン氏が勝利すれば波乱は少ないように思われます。
バイデン氏が勝利した場合は、環境・クリーンエネルギー関連銘柄が買われる可能性がありそうです。その理由は同氏が気候変動などに対して、発電所などのインフラ整備費用を4年間で計2兆ドル投資する環境政策を発表しているためです。我が国でも菅首相が「2050年に温暖化ガス排出を実質ゼロ」とする目標を提唱しており、関連銘柄のテーマとして“環境”が再び注目される可能性は小さくありません。
ただ、米大統領選挙は支持率だけではあてにならないのが現実です。前回も、支持率ではクリントン氏が優位でしたが、最後にはトランプ氏が勝利しました。米大統領選挙では、州ごとに勝者が選挙人を総取りするため、激戦州で勝利を収めるかどうかが鍵を握ることになるため、トランプ氏が巻き返す可能性も残ります。
仮にバイデン氏が当選しても、トランプ氏が結果を不当として認めず、抵抗を試みる可能性があり、この場合、株価が世界的に大きく下落する可能性が膨らんできます。
なお、トランプ氏が勝利した場合は、株式市場はイベントリスク後退を受けて、買い先行になる可能性が大きいと思われます。ただ、大統領選挙を経て、民主主義への信認がひどく痛手を受ける可能性があり、長期的には課題が残されるかもしれません。
トランプ政権での新型コロナウイルス感染症対策について、対応が不十分との批判もある中、注意しなければならないことは
同国での感染が再加速する可能性です。図4は世界の新型コロナウイルスの新規感染者数、死亡者数をグラフ化したものです。10/23(金)には新規感染者数が1日で83,700人と過去最高を記録し、死亡者数も増加の兆しをみせており、注意が必要です。
新型コロナウイルスについては、欧州などで感染が再拡大し、死亡者数も急速に増えています。当面は世界的に低金利の長期化と、経済活動の制限などが長期化するメインシナリオになりそうです。米大統領選挙でどちらが大統領になるにせよ、年後半にかけてはこうした新型コロナウイルスや、景気回復の息切れに対する対応が必要になり、引き続き予断は許さない状況が続くように思われます。
図4 新型コロナウイルスの感染状況
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。「欧州他」は「欧州・中東・アフリカ」を指しています。