東京株式市場では、日経平均株価が一進一退の展開をたどりながらも徐々に上値を切り上げてきました。10/19(月)には、終値が23,671円13銭となり、2019年終値の23,656円62銭を上回ってきました。こうした株価の動きは日本経済が新型コロナウイルス感染拡大前の姿を、取り戻す予兆と言えるのかもしれません。
また、ここ最近の日本株の値動きは相対的に強いように思われます。
それはなぜでしょうか。
米大統領選挙を11/3(火)に控え、国内外の株式市場は不透明要因が多いように感じられますが、そうした強い動きは今後も続くのでしょうか。
10月の東京株式市場は買い先行となりました。第1週(10/5〜10/9)の日経平均株価(週足)は前週末比589円79銭(2.6%)高と、3週間ぶりの反発となりました。新型コロナウイルスに感染し、入院していたトランプ米大統領の退院に加え、米追加経済対策に関する与野党協議が交渉継続となり、大統領選挙前に追加経済対策協議への合意期待が高まりました。
この週の米国株式市場ではNYダウが3.3%、ナスダックが4.6%上昇しています。10/9(金)には日経平均株価が一時23,725円58銭まで上昇し、今年の2/20(木)以来の高値水準を回復しました。
しかし、第2週(10/12〜16)の日経平均株価は、終値が前週末比209円(0.9%)安と小幅に下落しました。米国の追加経済対策については与野党協議の妥結に向けた前向きな動きと、退行する動きが交錯し、それにつられて株価も上下する不安定な展開になりました。そうした中、11/3(火)の米大統領選挙が次第に意識される展開となり、株式市場では様子見気分が強まりました。この週の東京株式市場の売買代金は終始2兆円を下回る状況でした。
続く10月第3週(10/19〜23)の日経平均株価は買い先行となり、10/19(月)は前週末比260円50銭高の23,671円13銭で大引けを迎えました。終値としては2019年終値である23,656円62銭を上回り、2/14(金)以来の高値水準となりました。こうした株価の動きは日本経済が新型コロナウイルス感染拡大前の姿を、取り戻す予兆と言えるのかもしれません。
表1 日経平均株価の値動きとその背景(2020/10/12〜2020/10/20)
日経平均株価 | 日米株式市場等の動き | ||
終値 | 前日比 | ||
10/12(月) | 23558.69 | -61.00 | トランプ米大統領とペロシ下院議長が非難の応酬。売買代金が2兆円割れ。 |
10/13(火) | 23,601.78 | +43.09 | 買い材料に乏しく売り先行も午後には切り返す展開。売買代金は2日連続2兆円を割る。 |
10/14(水) | 23,626.73 | +24.95 | マザーズが2006年8月24日以来の高値水準を回復。 |
10/15(木) | 23,507.23 | -119.50 | 欧州で新型コロナ感染者数再拡大により規制強化相次ぎ、景気回復鈍化懸念高まる。 |
10/16(金) | 23,410.63 | -96.60 | ファストリが連日上場来高値を更新。指数寄与度はプラス108円。 |
10/19(月) | 23,671.13 | +260.50 | NY株高を好感。中国経済指標上振れも追い風。2019年末終値を上回る大引け。 |
10/20(火) | 23,567.04 | -104.09 | 米与野党協議への期待が剥落。売買代金は7日連続2兆円割れ。 |
- ※日経平均株価データ、各種資料をもとにSBI証券が作成。
図1 日経平均株価(日足)と主要移動平均線・おもな出来事
- ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2020/10/20取引時間中。
図2 NYダウ(日足)と主要移動平均線・おもな出来事
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは米国時間2020/10/20現在。
図3 ドル・円相場(日足)と主要移動平均線・おもな出来事
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2020/10/20取引時間中。
表2 当面の重要スケジュール
月日(曜日) | 国・地域 | 予定内容 | ポイント |
10/21(水) | 日本 | 9月訪日外客数 | |
日本 | ★決算発表(2件) | ジャフコ グループ、日本高純度化学 | |
米国 | ベージュブック | ||
米国 | ☆決算発表 | テスラ | |
10/22(木) | 日本 | ★決算発表(8件) | 中外製薬、ディスコ、三谷産業、ビオフェルミン製薬 |
米国 | 9月中古住宅販売件数 | ||
米国 | 大統領候補討論会3回目 | ||
米国 | ☆決算発表 | インテル、コカ・コーラ | |
10/23(金) | 日本 | 9月消費者物価 | |
日本 | ★決算発表(28件) | キヤノンMJ、富士通ゼ、沖縄セルラー、カワチ薬品、東京製鐵 | |
10/26(月) | 日本 | 9月企業向けサービス価格指数 | |
日本 | ★決算発表(30件) | 日本電産、キヤノン、日東電工、オービック、コクヨ | |
米国 | シカゴ連銀全米活動指数(9月) | ||
米国 | 米新築住宅販売件数(9月) | ||
米国 | ☆決算発表 | アルファベット、F5ネットワークス | |
10/27(火) | 日本 | ★決算発表(53件) | ヒューリック、シマノ、野村不動産HD、日立建機、小林製薬 |
米国 | 米耐久財受注(9月) | ||
米国 | コンファレンスボード消費者信頼感(10月) | ||
米国 | ☆決算発表 | マイクロソフト、3M、ファイザー、キャタピラー、AMD、BP | |
10/28(水) | 日本 | 日銀金融政策決定会合 | |
日本 | ★決算発表(87件) | ソニー、日立製作所、花王、小松製作、野村総研 | |
米国 | ☆決算発表 | ビザ、ボーイング、ギリアドサイエンシズ、ビヨンドミート(E) | |
10/29(木) | 日本 | 黒田日銀総裁会見 | |
日本 | 消費動向調査(10月) | ||
日本 | ★決算発表(154件) | NTTドコモ、東京エレク、武田薬、パナソニック、三菱電機 | |
米国 | ECB定例理事会(ラガルド総裁会見) | ||
米国 | 7-9月期GDP | ||
米国 | 米新規失業保険申請件数 | ||
米国 | 米中古住宅販売仮契約(9月) | ||
米国 | ☆決算発表 | アマゾンドットコム、アップル、フェイスブック | |
10/30(金) | 日本 | 失業率・有効求人倍率(9月) | |
日本 | 鉱工業生産 | ||
日本 | ★決算発表(426件) | アステラス、村田製作所、塩野義、中部電力、SGホールディングス | |
米国 | 米個人所得・個人支出(9月) | ||
米国 | ☆決算発表 | アッヴィ、エクソンモービル、アルトリアグループ |
- ※各種報道、日米欧中銀WEBサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合があります。
表3 日米欧中央銀行会議の結果発表予定日(月日は現地時間)
2020年 | 2021年 | |
日銀金融政策決定会合 | 10/29(木)、12/18(金) | 1/21(木)、3/19(金)、4/27(火)、6/18(金)、7/16(金)、9/22(水)、10/28(木)、12/17(金) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 11/5(木)、12/16(水) | 1/27(水)、3/17(水)、4/28(水)、6/16(水)、7/28(水)、9/22(水)、11/3(水)、12/15(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 10/29(木)、12/10(木) | 1/21(木)、3/11(木)、4/22(木)、7/22(木)、9/9(木)、10/28(木)、12/16(木) |
- ※日米欧中銀WEBサイトを基にSBI証券が作成。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合があります。
なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しています。日付は日本時間(ただし、ECBの結果発表日程は現地時間)を基準に記載しています
図1に記載の通り、足元の日経平均株価は一進一退の展開をたどりながらも徐々に上値を切り上げてきました。10/19(月)は前週末比260円50銭高の23,671円13銭で大引けを迎えました。終値としては2019年終値である23,656円62銭を上回り、2/14(金)以来の高値水準となりました。10/20(火)も、前日のNYダウが410ドルも下げたことを考えれば、底固い動きであったとみられます。NYダウ、ナスダックとも10/19(月)時点で、9月高値から3%超下げた水準にありますが、日経平均株価は9月高値を超える水準での取引になっています。
日経平均株価の値動きはここにきて、なぜ相対的に強いのでしょうか。
有力な理由としては、海外投資家のスタンスが日本株に前向きな方向に変わってきた可能性が指摘されます。図4に記載の通り、10月第1週の海外投資家の日本株に対する買い越し額は4,170億円となり、2019年11月第1週以来の大幅買い越しになりました。
かねてから、日本株はおおむね、世界の中で景気循環株として位置づけられています。世界経済は最悪期を脱し、回復方向に転じていますので、日本株に出番が回ってきたとの見方があります。米国のIT株などには割高感を指摘する向きもありますが、ウォーレン・バフェット氏が買った商社株のように、日本には割安株が多く存在しています。これらの背景を理由として、国際分散投資の観点上、過小評価されてきた日本株の組み入れ比率を高める動きが出てきているようです。
この他、鉱工業生産や小売売上高が回復するなど、中国経済の回復傾向が強まっています。
機械株や化粧品株など、恩恵を受ける銘柄が増えてきたことも追い風とみられます。国内では「Go To キャンペーン」の実施等があり、旅行・宿泊業界やイベント業界の下支えが期待されます。また、新型インフルエンザ治療薬の「アビガン」(富士フイルム富山化学)が新型コロナウイルス感染症の治療薬として承認され、より多くの患者が利用できるようになることが期待されます。
こうした理由から、米大統領選挙で波乱がなければ年内に、日経平均株価が24,000円を超える展開になる可能性もあります。
米大統領選挙については、トランプ氏、バイデン氏のどちらの候補が勝つにせよ、スムーズに次期大統領が決定されれば、株価に波乱はなさそうです。ただ、前回の本特集ページにてご紹介したように、過去10回の米大統領選挙で、選挙後10日間のNYダウは平均して0.8%下落となっているため、“リスク要因の剥落で急騰”までは期待し過ぎになるかもしれません。
例えば、バイデン氏が勝利しても、トランプ氏が負けを認めないなど、次期大統領決定まで時間を要した場合、2021/1/20まではトランプ氏が大統領職にあるため、想定外の展開が生じる可能性があります。仮にこうした波乱が起きた場合、24,000円を超えた水準への期待は先送りとなるかもしれません。
その他、新型コロナウイルスの世界的な感染再拡大や、東京株式市場の中小型株の値崩れなど、想定されるリスク要因はさまざまですが、これらについては機会を改めてご説明したいと思います。
図4 海外投資家の売買動向と日経平均株価
- ※期間:2019/8/23〜2020/10/9 ※Bloomberg、東証データをもとにSBI証券が作成。