日経平均株価は5/8(月)に大幅高(450円高)を演じた後も堅調な動きを続け、5/11(木)には19,961円の年初来高値を記録しました。現在も20,000円まであともう一歩という水準で推移しています。
しかし、日経平均株価は20,000円の節目や、「アベノミクス相場」の高値である20,868円03銭(2015/6/24)を超え、22,000円前後まで上昇する可能性も台頭してきたと考えられます。
日経平均株価が20,000円目前に |
株式市場には「リリーフ・ラリー」という言葉があります。このうち「リリーフ」という言葉は、野球では「救援(投手)」を意味していますが、もともとは苦痛や困難を除去することを意味しています。「リリーフ・ラリー」とは何らかの危機的な状況や不透明な状態から脱し、相場が反発に転じることを指しています。
「フランス大統領選挙で万が一EU離脱派が勝利したらどうなるのか」とか、「北朝鮮と米国の間に衝突が起き、万が一戦争状態が生じたらどうなるのか」とか、ゴールデンウィークまでの株式相場は数多くの不透明要因におおわれてきました。さらに国内の投資家にとり、4月下旬以降は決算発表が本格化し、「保有銘柄の業績が万が一悪かったらどうなるのか」という不安に悩まされる日々であったと考えられます。
しかし、フランス大統領選挙や北朝鮮問題等について心配していたことはほぼ何も起こらなかったというのが、5/8(月)に日経平均株価が450円も上昇した意味であると考えられます。この日の上昇はまさに「リリーフ・ラリー」であったと言えるのでしょう。さらに、5/15(月)で3月決算企業の決算発表がほぼ一巡し、保有企業の業績変動にピリピリする必要性はかなり後退しました。その意味では当面「リリーフ・ラリー」が継続しやすい局面と考えられます。
そうした中、日経平均株価は20,000円前後の水準に到達しています。この約20年の間に、97年、00年、2015年と日経平均株価の天井はおおむね20,000円を少し超えた水準であったため、投資家の多くは今回も「相場の天井は近い」と予想しているようです。特に個人投資家においては足元で高水準の売り越し水準が続いています。やはり今回も日経平均株価は20,000円を少し超えた水準で高値となり下落に転じてしまうのでしょうか。
図1:日経平均株価(日足)〜2015/12/2以来の20,000円が目前に
- ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2017/5/16取引時間中
図2:ドル・円相場(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2017/5/16取引時間中
図3:S&P500(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2017/5/15(現地時間)現在
当面のタイムスケジュール〜当面は重要日程が少ない |
3月決算企業の決算発表は5/15(月)にメガバンクを含む約400社の発表が終わりほぼ一巡しました。当面は特に重要なスケジュールが予定されていません。5/18(木)に2017年1〜3月期のGDP統計が発表される予定ですが、同一四半期の決算発表が終わった後でもあり、株式市場への影響は限定的なものになると予想されます。
表1:当面の重要なタイムスケジュール〜決算発表が佳境に
月日(曜日) |
国・地域 |
予定内容 |
ポイント |
---|---|---|---|
5/16(火) | ドイツ | 5月ZEW景況感指数 | 機関投資家、市場関係者など約350人を対象にアンケート |
米国 | 4月住宅着工件数 | 市場コンセンサスは前月比+2.9% | |
米国 | 4月鉱工業生産 | 市場コンセンサスは前月比+0.4% | |
5/17(水) | 日本 | 3月機械受注 | 2月は前月比+1.5% |
5/18(木) | 日本 | 2017年1〜3月期GDP | 市場コンセンサスは前期比・年率+1.8% |
日本 | 4月首都圏マンション発売 | 3月は前年同月比+26.6% | |
米国 | 5月フィラデルフィア連銀製造業景況指数 | ||
5/19(金) | 日本 | ★決算発表〜SOMPO HD、東京海上他 | |
日本 | 4月訪日外客数 | 1〜3月は6,537千人(前年同期比+1.6%) | |
日本 | 天皇陛下退位特例法案閣議決定? | ||
5/22(月) | 日本 | 4月貿易統計 | |
日本 | 4月日本製半導体製造装置BBレシオ | 3月は1.12 | |
5/23(火) | ドイツ | 5月Ifo景況感指数 | 7千社のドイツ企業を対象にしたアンケート |
米国 | 4月新築住宅販売 | コンセンサスは前月比-0.2% | |
5/24(水) | 日本 | 日銀が国債カンファレンスを主催 | バーナンキ前FRB議長が講演 |
米国 | 3月FHFA住宅価格指数 | 2月は前月比+0.8% | |
米国 | 4月中古住宅販売件数 | コンセンサスは前月比-0.6% | |
米国 | FOMC(5/3発表分)議事録 | ||
5/25(木) | 英国 | 1〜3月期GDP改定値 | コンセンサスは前期比+0.3% |
- | OPEC総会 | ||
- | NATO首脳会議 | ||
5/26(金) | 日本 | 4月消費者物価指数 | |
- | G7シチリア・サミット | ||
米国 | 1〜3月期GDP改定値 | コンセンサスは前期比+0.9% | |
米国 | 4月耐久財受注 | コンセンサスは前期比+0.4%(輸送用機器を除く) |
表2:日米欧中央銀行会議の結果発表予定日
2017年 | |
---|---|
日銀金融政策決定会合 | 6/16(金)、7/20(木)、9/21(木)、10/31(火)、12/21(木) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 6/14(水)、7/26(水)、9/20(水)、11/1(水)、12/13(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 6/8(木)、7/20(木)、9/7(木)、10/26(木)、12/14(木) |
※各種報道、日米欧中銀Webサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合がありますので、あくまでもデータ作成段階のものです。なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しました。日付は現地時間を基準に記載しています。
【ココがPOINT!】日経平均株価22,000円が見えてきた?! |
図4は日経平均株価と予想PER13.5倍、15.0倍、16.5倍相当ラインを示したグラフです。日経平均採用銘柄の業績の変化を反映し、その予想EPS(一株利益)は日々変化しています。色付きの線は、日々の予想EPSに予想PER13.5倍を掛けた水準(茶色の線)、同様にPER15.0倍(緑色の線)、16.5倍(紫色の線)を掛けた水準を示しています。黒い線は日経平均株価終値です。
色付きの線が上昇している時は、決算発表または業績修正で予想EPSが上昇していることを示しています。逆に下落している時は予想EPSが下落していることを示しています。予想EPSが上昇する局面では株価が上昇しやすく、逆に予想EPSが低下する局面では株価も下落しやすいと考えられます。なお、水色の線で囲まれた局面は3月決算企業の決算発表が行われる4月〜5月頃を示しています。3月決算企業の予想EPSの対象決算期が変わるため、日経平均株価の予想EPSが大きく変化しやすくなっています。
決算発表が本格化する直前の4/17(月)に日経平均株価の予想EPS(予想の対象は2017/3期)は1,191円37銭でした。そして決算発表がほぼ一巡した5/15(月)に予想EPS(予想の対象はほぼ2018/3期)は1,329円98銭まで上昇しました。ちなみに、日経平均株価の予想PERはおおむね13.5〜16.5倍近辺で推移してきました。今後仮に、日経平均株価の予想PERが16.5倍まで上昇する場面があり、その時の予想EPSが1,329円98銭を維持していれば
1,329円98銭×16.5倍=21,944円67銭
なので、多少の誤差を許容すれば「日経平均株価22,000円が見えてきた」と考えることは十分可能であると思います。
ちなみに、日経平均株価が直近で最も高水準の株価を付けていた2015/6/24には、予想PERが16.59倍まで上昇し、外為市場では一時1ドル124円台を付けていました。現在は予想PERが14.94倍(5/15)まで低下している上、外為相場は1ドル113円台となっています。また、過去1年の予想PERの平均は14.9倍です。予想PERが市場心理を示していると考えれば、現在は「中立」的な局面であり、円安等を通じてこれがより「強気」に変化し、予想PERが上昇することは十分想定可能だと思われます。
図4:日経平均株価と予想PER13.5倍、15.0倍、16.5倍相当ライン
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