2017年の東京株式市場は無難なスタートを切りました。ISM製造業景況指数や雇用統計等、好調な経済指標を好感し、米国株が上昇して始まったことが追い風になりました。
しかし、今後はトランプ次期大統領の記者会見(11日)や就任式(20日)が予定されており、同氏の経済政策を再吟味する局面になりそうです。トヨタへの威嚇発言があったこともあり、今後はそのリスク面が出てくる可能性もありそうです。ただ、同氏の景気刺激策とFRBによる一定のインフレ容認によりもたらされる「高圧経済」は日本株にも恩恵を与えそうです。
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無難な年明け |
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東京株式市場は無難な年明けとなりました。大発会となった1/4(水)の日経平均株価は前年末比479円79銭高の19,594円16銭となり、昨年12/20(火)に付けた同年の高値(終値ベース)19,494円53銭を上回りました。1/3(火)に発表された米ISM製造業景況指数が予想以上に上昇し、同日のNYダウが119ドル高となったことが追い風になったと考えられます。2016年までの過去3年、大発会の株価が下落(特に2014年は2.3%、2016年は3.1%下落という波乱)してきたという事実があり、「年明けは波乱になりやすい」という事前の警戒感も根強く、米株高が東京市場に買い安心感をもたらしたと考えられます。
NYダウは年明けに上昇した後、一進一退の高値保ち合いになっています。ADP雇用統計やISM非製造業景況指数等が雇用面でやや不安の残る数値となりましたが、1/6(金)に発表された12月の米雇用統計では、平均時給が2009/6以来の高い伸びを示し、米経済の強さが確認されたことから、NYダウは同日に一時19,999ドルまで上昇しました。その後利益確定売りが出て再び保ち合いとなっていますが、株価は高水準を維持しています。
ただ、図3にもあるように、12/15(木)以降の米10年国債利回りは上昇の勢いを失っており、ドルの対円相場(図2)も調整気味の展開になっています。日経平均株価上昇のけん引役として、米10年国債利回りの上昇とそれを背景とする円安・ドル高の役割は大きかっただけに、日経平均株価は1/4(水)に上昇して以降は利益確定売りが目立つ展開になっています。
日経平均株価はこのまま調整を続けるのでしょうか。それとも反発し、20,000円奪回に向かうのでしょうか。
図1:日経平均株価(日足)〜高値保ち合いの形状

- ※当社チャートツールもとにSBI証券が作成。データは2017/1/10現在
図2:ドル・円相場(日足)・過去3ヵ月

- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2017/1/10現在
図3:米10年国債利回り(日足)・過去3ヵ月

- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは米国時間2017/1/9現在
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当面のタイムスケジュール〜「トランプ大統領」の立ち上がりに注目 |
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トランプ次期大統領は先週、トヨタ(7203)のメキシコ工場(2019年に稼働予定)建設について「ありえない」とし、計画を変更しない場合は高額の関税をかけると発言しました。株式市場はこれまでトランプ次期大統領のインフラ投資や規制緩和、減税等の「いいとこ取り」だけしてきましたが、そのリスク面が我が国にとっても表面化してきた形です。
そうした中、1/11(水)にはトランプ次期大統領の記者会見が行われる予定です。市場の一部では「ドル高をけん制する発言が飛び出す可能性もある」との指摘もありますが、株式市場に大きな影響が出る可能性があり、要注意であると考えられます。
そのトランプ次期大統領は1/20(金)に第45代大統領就任式を行う予定です。そこから改めて「トランプ大統領」の政策を吟味することになりそうです。対外関係もあり、通商・防衛の面では波乱含みですが、規制緩和、減税、社会インフラ投資については何らかの形で実現すると予想されます。すでに好景気の状態で景気刺激のアクセルを踏み、輸入を抑える政策を取るとなれば、物価の上昇は避けられないと考えられます。その意味では米金利も下がりにくくなり、中長期的にドルを支える要因になりそうです。総じて為替市場が波乱となる可能性は小さいとみられます。
当面はこうしたトランプ次期大統領の動静に加え、米国で発表が本格化する10〜12月期決算が注目材料となりそうです。企業の見通しの部分でドル高の弊害を警戒する声が増えるか否かがひとつの注目点になりそうです。
表1:当面の重要なタイムスケジュール〜米国では決算発表シーズンがスタート
月日(曜日) |
国・地域 |
予定内容 |
ポイント |
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1/10(火) | 中国 | 12月消費者物価 | 11月は前年同月比+2.3% |
1/10〜15 | 中国 | 12月マネーサプライ・資金調達額等 | 中国経済の「カネ回り」を示す諸指標 |
1/11(水) | 米国 | トランプ次期大統領会見 | 強硬姿勢を貫くのか?ドル高けん制発言に注意も |
1/12(木) | 日本 | 11月国際収支 | |
日本 | 12月都心オフィス空室率 | 11月の空室率は3.75% | |
米国 | イエレンFRB議長講演 | 利上げペースにヒントは? | |
1/13(金) | 日本 | 12月マネーストック | M3の市場コンセンサスは前年同月比+3.5% |
中国 | 12月貿易収支 | 市場コンセンサスは輸出(前月比)が-3.9% | |
米国 | 12月小売売上高 | 市場コンセンサス(自動車・ガソリンを除く)は前月比+0.4% | |
米国 | 1月ミシガン大学消費者信頼感指数(速) | 市場コンセンサスは98.5 | |
米国 | ★決算発表 | JPモルガン・チェース、バンク・オブ・アメリカ他 | |
1/16(月) | 日本 | 11月機械受注 | 前月は前月比-5.6% |
- | IMF(国際通貨基金)世界経済見通し | ||
1/17(火) | ドイツ | 1月ZEW調査 | 12月は13.8 |
- | 世界経済フォーラム(ダボス会議) | ||
米国 | ★決算発表 | モルガン・スタンレー | |
米国 | 1月NY連銀製造業景気指数 | 12月は9 | |
1/18(水) | 米国 | 12月消費者物価 | 市場コンセンサス(食料・エネルギーを除く)は前年同月比+2.1% |
米国 | ★決算発表 | シティ・グループ、ネットフリックス | |
米国 | 12月NAHB住宅市場指数 | 市場コンセンサスは69 | |
1/19(木) | 欧州 | ECB定例理事会(ドラギ総裁会見) | |
米国 | 12月住宅着工件数 | 市場コンセンサスは前月比+10.1% | |
米国 | 1月フィラデルフィア連銀製造業景況感指数 | ||
1/20(金) | 中国 | 12月鉱工業生産 | 11月は前年同月比+6.2% |
中国 | 12月小売売上高 | 11月は前年同月比+10.8% | |
中国 | 固定資産投資(年初来) | 10月までは前年同期比+8.3% | |
中国 | 4Q・GDP | 3Qは前年同期比+6.7% | |
米国 | 「トランプ大統領」就任式 |
表2:日米欧中央銀行会議の結果発表予定日(2017年以降)
2017年 | |
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日銀金融政策決定会合 | 1/31(火)、3/16(木)、4/27(木)、6/16(金)、7/20(木)、9/21(木)、10/31(火)、12/21(木) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 2/1(水)、3/15(水)、5/3(水)、6/14(水)、7/26(水)、9/20(水)、11/1(水)、12/13(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 1/19(木)、3/9(木)、4/27(木)、6/8(木)、7/20(木)、9/7(木)、10/26(木)、12/14(木) |
※各種報道、日米欧中銀Webサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合がありますので、あくまでもデータ作成段階のものです。なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しました。
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【ココがPOINT!】米「高圧経済」が支える?東京株式市場 |
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すでにご説明したように米労働市場は好調です。失業率の面からはほぼ「完全雇用状態」にあると考えられますので、ここから失業率がさらに下がるとインフレ率の上昇が加速しやすくなります。このため、通常であれば米FRBは金融引き締めを強化することになりますし、政府が景気刺激策を打つ必要はないと考えるのが普通です。
しかし、米国がこれから行おうとしていることは、減税、規制緩和、社会インフラ投資という景気刺激策です。トランプ政権の公約は「4%成長」であり、それに向けてアクセルを踏むことになります。したがって、トランプ政権の経済政策によって需要が供給を上回り、過熱気味の「高圧経済」に米国が移行してくる可能性があります。
「高圧経済」という言葉は、昨年10月のイエレンFRB議長による講演で注目され、現在は多くの市場関係者の間で注目されつつあります。インフレ率の上昇により、企業の売上高が増え、設備投資や正規雇用が増えやすくなる可能性があるなど、構造問題への有効性も指摘されています。米政策金利は引き上げ傾向が続くのでしょうが、ある程度物価の上昇を容認しながらの引き上げになると考えられます。こうした政策の組み合わせは総じて株価にプラスに働くと考えられます。
こうした中、日本は長期金利を釘付けにする政策を取っていますので、米長期金利との金利差は維持しやすく、為替は円安・ドル高になりやすくなります。日本株には今後も強い追い風が吹くと考えられます。
問題はトランプ政権の産業・通商政策で、国内雇用を維持すべく、輸出競争力の回復を図り、ドル安を指向する可能性があります。確かに、その可能性は日本株にとってリスク要因になります。しかし、輸入超過で対外債務のある米国にとって、ドル高にはプラスの面もあります。また、ドル高が物価上昇を抑えるという面もあります。M&Aによって海外企業買収のチャンスが増える可能性もあります。
そもそも、米国の総輸入額に占める日本の割合は数%に過ぎず、為替を論じるのであれば、対ユーロ、対人民元の方がはるかに重要であると考えられます。米国にとって、円はあまり重要な通貨ではないと考えられます。日本株にとっての為替リスクは「過大評価」と言えるかもしれません。
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