9/9(金)の海外市場では主要株価指数の多くが下落し、NYダウも394ドル安となりました。下げ幅としては英国民投票の結果を受けて下げた6/24(金)以来となっています。株価下落の原因は、やはり主要国の市場で長期金利が上昇し、米10年国債利回りも急上昇したためです。
今後はどうなるのでしょうか。実は、米10年国債利回り(長期金利)が上昇することは、日本株にとり必ずしも悪い話ではありません。むしろ、米10年国債利回りが上昇する時は、日経平均株価が上昇する傾向にあります。したがって、今回の米国株の下げに対しては過度の懸念は不要で、日本株にとっては投資好機と考えられます。
「上放れ」後も押し戻される |
9/2(金)に発表された8月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数が事前予想を下回る弱い結果になったものの、外為市場では一時104円台の円安・ドル高になりました。それを好感する形で、9/5(月)および9/6(火)の日経平均株価は上昇しました。「8月の雇用統計」は夏休みもあって、もともと数字がブレやすく、ジャクソンホール会合におけるFRB正副議長の利上げに前向きな発言(8/26)を否定するほど弱い数値であったとは決めつけられないと考えられました。しかし、米国時間の9/6に発表されたISM非製造業指数が予想よりも弱かったことで、9/6(火)〜9/8(木)には対ドルでの円の高値が101円台という状態が続き、日経平均株価も伸び悩みました。
図1は日経平均株価の過去3ヵ月の推移を示したものです。日経平均株価は7/21高値(16,938円)、8/12高値(16,943円)を結ぶ上値抵抗ラインを超え、保ち合いを上放れた形になりました。しかし200日移動平均を完全には抜き切れずに、やや押し戻された状態で9/9(金)の週末を迎えました。
こうした中、9/9(金)の海外市場では、ドイツDAX指数が前日比0.95%下げたのに続き、米国ではNYダウが同394ドル(2.1%)下落するなど波乱になりました。9/8(木)のECB(欧州中銀)理事会では、追加的な量的緩和が話題にならなかったと伝えられ、ECBが追加緩和に対して後ろ向きとの印象を市場に与えました。さらに9/9の米国市場ではボストン連銀総裁が利上げに前向きな発言をするなど、9月利上げ説が消えてはいないことを印象付けました。これらを受け、ドイツでは10年国債利回りがプラス圏に浮上し、米国では10年国債利回りが9/8の1.602%から9/9には1.681%と急上昇しました。これらを嫌気する形で欧州、米国の株価は大幅安となりました。
9/12(月)の東京市場では、欧米株安を嫌気する形となり、日経平均株価は前週末比292円安となりました。今後はどうなるのでしょうか。結論から先に申し上げれば、過度の懸念は不要だと「225の『ココがPOINT!』」では考えています。むしろ、日本株には買い好機になる可能性もありそうです。理由は後でご説明したいと思います。
図1:日経平均株価(日足)〜米国の金利上昇・株安(9/9)を受けて9/12(月)は大幅安
- ※当社チャートツールもとにSBI証券が作成。データは2016/9/12終値現在。
図2はドル・円相場(日足)の動きです。また、図3は外為市場への影響も大きい米10年国債利回りの推移です。ジャクソンホール会合で米国の9月利上げ説が復活したこともあり、米長期金利はジワジワ上昇し、ドル・円相場は一時104円台となりました。しかし、米国経済の強さに対して市場は「半信半疑」となっていたのが実情であり、米10年国債利回りは1.6%近辺で上昇を抑えられていました。
しかし上記したように、米国の9月利上げ説はくすぶり続けており、9/9(金)にはついに、米国10年国債利回りが上値抵抗ラインを突破してきました。すなわち、米長期金利は「上放れ」となった形ですが、そのことが外為市場や株式市場へ与える影響を読み解くことが、今後の相場を占う大きな鍵になりそうです。
図2:ドル・円相場(日足)・過去3ヵ月
図3:米10年国債利回り・過去6ヵ月
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。図2のデータは2016/9/12(日本時間)現在。
図3のデータは2016/9/9現在。
当面のタイムスケジュール〜注目の日銀会合・FOMCが接近 |
表1は、当面の重要なタイムスケジュールをご紹介したものです。この中でもっとも重要なスケジュールは、9/21(水)に予定されている日銀金融政策決定会合の結果発表、および米国時間では同日(日本時間では翌日早朝)に予定されているFOMCの結果発表です。
日銀金融政策決定会合では、総括的な検証が実施されるとともに、マイナス金利の深堀りがあるのか、国債買い入れ額に変化が生じるのか等が市場の関心事になりそうです。9/5(月)の講演で黒田総裁がマイナス金利の副作用についても認めた形になっており、利下げはない可能性があります。ただ、国債買い入れ額については、あと1〜2年で限界が来ることへの不安を払しょくすべく、現行の「年間80兆円」を例えば「70〜90兆円」のように、幅を持たせた目標に変える可能性が、市場の一部で指摘されています。
一方、FOMCについては、FF金利先物市場から計算される「9月の利上げ」確率が30%と微妙な水準にとどまっています。「個人消費デフレータ」が2%に達しない現状で、インフレに対して警戒し過ぎているかもしれません。当面は、小売売上高や消費者物価指数等への注目度が高まりそうです。
表1:当面の重要なタイムスケジュール〜市場の関心は日米の金融政策決定会合に
月日(曜日) |
国・地域 |
予定内容 |
ポイント |
---|---|---|---|
9/13(火) | 中国 | 8月鉱工業生産 | 前年同月比6.2%増の予想 |
中国 | 8月小売売上高 | 同10.2%増の予想 | |
中国 | 8月都市部固定資産投資(年初来) | 前年同期比7.9%増の予想 | |
独 | 9月ZEW景況感指数 | 期待指数は事前予想で2.5 | |
9/15(木) | 日本 | 東京ゲームショウ | AI技術やVRなど新しいアイデアがどうゲームに応用されているのか? |
英国 | BOE金融政策委員会 | ||
米国 | 8月小売売上高 | 前月比横ばい? | |
米国 | 9月フィラデルフィア連銀製造業景況感指数 | 事前予想は1.0 | |
米国 | 8月鉱工業生産・設備稼働率 | 前月比0.2%減の予想 | |
中国 | 休場(〜16日) | ||
9/16(金) | EU | 英国を除く27ヵ国で非公式首脳会議 | |
米国 | 8月消費者物価指数 | 食品・エネルギーを除いた部分で前年同月比2.2%上昇の予想 | |
9/19(月) | 日本 | ◎東京市場は休場(敬老の日) | |
米国 | 9月NAHB住宅市場指数 | 事前予想は60 | |
9/20(火) | 日本 | 8月日本製半導体製造装置BBレシオ | |
米国 | 8月住宅着工件数・建設許可件数 | 前月比-1.5%の予想 | |
9/21(水) | 日本 | 日本銀行金融政策決定会合結果発表 | 総括的な検証を実施。追加緩和はあるのか? |
日本 | 8月訪日外客数 | ||
米国 | FOMC結果発表 | 9月利上げの可能性は30% | |
9/22(木) | 日本 | ◎東京市場は休場(秋分の日) | |
米国 | 7月FHFA住宅価格指数 | ||
米国 | 8月中古住宅販売件数 | 前月比-0.1%の予想 |
表2:日米中央銀行会議の結果発表予定日
2016年 | 2017年 | |
---|---|---|
日銀金融政策決定会合 | 9/21(水)、11/1(火)、12/20(火) | 1/31(火)、3/16(木)、4/27(木) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 9/21(水)、11/2(水)、12/14(水) | 2/1(水)、3/15(水) |
※各種報道等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは2016/9/12現在。予定は予告なく変更される場合がありますので、あくまでもデータ作成段階のものです。
【ココがPOINT!】米金利上昇が日本株上昇の引き金に? |
金利上昇を受けた米国株の急落を受け、週明けの東京株式市場も強い逆風にさらされました。ただ、これまでの米国株の下げと大きく異なるのは、米金利上昇を受けて円安・ドル高方向への力が働いていることです。もともと、昨年末の米政策金利引き上げにもかかわらず、米金利が低下し、円高・ドル安傾向となったことが、日本経済および株式に逆風となってきました。米金利の上昇は日本株にとって悪い話ではないと思われます。したがって、売り一巡後は下げ渋る可能性が大きいように思われます。
図4は、日経平均株価と米10年国債利回りの推移を過去10年間みたものです。サブプライム問題の発生、リーマンショックなど激動の時代を経て、FRBによる大胆な金融緩和政策をテコに、米国経済は回復をとげてきました。この間、米長期金利は長期低下トレンドをたどり、それが円高・ドル安につながり、日本株の上値を抑える要因になってきました。
グラフの中で青い矢印で示された局面は、米長期金利の数少ない上昇局面です。米長期金利が上昇する時は外為市場で円安・ドル高となりやすいため、日経平均株価も上昇しやすくなっています。赤い丸で囲ったように、米長期金利は上昇の兆しを見せており、通常は日本株の上昇につながっても不思議ではないと思われます。
図5は米10年国債利回りの一目均衡表(日足)、図6は独10年国債利回りの一目均衡表(日足)です。双方とも日々線がクモの上に頭を出しており、基調転換の兆しを見せています。日米欧の中央銀行関係者の発言からは、これ以上の金利低下について余地が少なくなっているように思われます。すなわち、日米欧の金利は長い目で見てボトム圏にあるのかもしれません。一目均衡表はそうした可能性を示唆しているとみることもできます。日本株にとっては追い風になる可能性が十分ありそうです。
図4:日経平均株価と米10年国債利回り(週足)
- ※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。
図5:米10年国債利回り・一目均衡表(日足)
図6:独10年国債利回り・一目均衡表(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2016/9/9(日本時間)現在。
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