5月相場がスタートしました。4月末の日銀金融政策決定会合での追加緩和見送りを受け、海外市場でドル・円相場が105円台を示現。日経平均株価が5/2(月)および5/6(金)に一時16,000円台を割り込むなど、逆風の中でのスタートになっています。5/6に発表された米雇用統計(4月)は雇用者数の伸びが予想を下回るなど、米国経済の減速を示唆する内容になっています。また、発表が本格化してきた我が国の3月決算企業の業績についても、厳しい見通しを公表する企業が多いようです。
しかし、「225の『ココがPOINT!』」では5月後半の日経平均株価は比較的堅調に推移すると予想しています。高値では17,000円を回復する可能性もありそうです。なぜでしょうか?
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決算発表一巡で「アク抜け」も |
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5/6(金)に米国で、注目の雇用統計(4月)が発表されました。非農業部門雇用者数は前月比16万人増と7ヵ月ぶりの低い伸びにとどまり、事前の市場予想(20万人増)に達しませんでした。前月(3月)の伸びも7千人下方修正されて20万8千人となり、失業率も5.0%と前月比横ばいにとどまりました。雇用統計の内容は、米国経済の減速を反映する弱いものであったと考えることができます。
今回の発表を受け、米国では6/15(水)に結果発表が予定されているFOMC(米連邦公開市場委員会)で、利上げが実施される可能性は一層後退したと考える市場参加者が増えています。すでに米国経済は失業率の面で「完全雇用」状態(推定で5.0%前後)に接近しており、伸びシロが少なくなっています。企業業績も減速し、1〜3月期はGDPの伸びが0.5%(前期比年率)にとどまっています。インフレ率が過熱を示している訳でもなく、FRB(米連邦準備制度理事会)が利上げを急ぐ理由は確かに少ないと考えられます。
このように「米国経済が減速し、利上げペースが緩慢になる」との見通しは、ドルの上昇を抑える要因になると考えられます。したがって、雇用統計発表後の外為市場では円高・ドル安が進んでいても不思議ではありませんでした。しかし、ドル・円相場は5/6(金)の段階で1ドル107円台であり、5/10(火)には同108円台を付けるなど、むしろ円安・ドル高方向に動いています。また、米国株もとりあえず、落ち着きを取り戻しています。
米国では、2016/1〜3月期の決算発表が主力企業についてはおおむね一巡し、雇用統計発表という重要イベントも通過しましたので、とりあえず悪材料が出にくい時期に入ってきます。弱い雇用統計を受けて円高・米株安にならなかったことで、東京市場でも当面は投資家の安心感が強まりそうです。
5/13(金)にかけては決算発表がピークとなるため、個別には業績見通しの厳しさを嫌気されるケースもあり、その分上値を抑えられる可能性があります。しかし、決算発表を終えた銘柄から悪材料出尽くしとなる可能性が大きそうです。5/16(月)までには決算発表もおおむね終わるため、それ以降はさらにアク抜け感が広がる可能性がありそうです。
図1:日経平均株価(日足)

- ※当社チャートツールもとにSBI証券が作成。
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そもそも企業業績はどうなる? |
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前項で触れたように、東京株式市場を見る上でもっとも重要なスケジュールは現状では「決算発表」であると考えられます。特に5/9(月)〜5/13(金)の週は1営業日当たり「3ケタ」の数の企業が決算発表を予定し、中でも5/13(金)には939社とピークを迎える運びになっています。
ご存知の通り企業業績は世界経済の減速や円高のあおりを受け、厳しいのが現実です。5/9(月)までに決算発表を終えた主要企業(3月決算企業・時価総額1千億円超・金融を除く)では17/3期の予想営業利益が7〜8%程度減少する見込み(会社予想ベース)となりそうです。
ただ、商社や素材などの企業を中心に、16/3期に減損等を計上したケースも多く、17/3期はそうした状態から回復する企業が少なくありません。このため、純利益は17/3期に全体でも数%増える可能性がありそうです。そうなると、日経平均株価の予想EPSが大きく下がる可能性もそれほど大きくはないとみられます。
現状では、企業業績、特に17/3期の見通しがどうなるのか、不安の方が大きいとみられますが、純利益の大きな減少が回避できそうであると、市場がより深い自信を持てるようになれば、株価も落ち着きを取り戻す可能性が大きそうです。
表1:当面の重要なタイムスケジュール
月日(曜日) |
国・地域 |
予定内容 |
ポイント |
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5/10(火) |
日本 |
◯決算発表〜武田薬、ソフトバンク、三菱商事など(327社が発表) |
日経平均予想EPSに大きな影響を与える企業が決算発表 |
5/11(水) |
日本 |
◯決算発表〜トヨタ、小野薬品、三菱地所など(298社が発表) |
我が国で時価総額最大のトヨタが決算発表。市場コンセンサスでは17/3期は5%前後の営業減益か? |
5/12(木) |
日本 |
◯決算発表〜KDDI、日産など(496社が発表) |
|
5/13(金) |
日本 |
◯決算発表〜NTT、三井住友FG、日本郵政、みずほHD他、(決算発表ピーク:939社が発表) |
メガバンクを含め主要企業が決算発表 |
米国 |
ミシガン大学消費者信頼感指数 |
米国の個人消費の勢いを示唆する経済指標2本! |
|
米国 |
小売売上高(4月) |
||
5/14(土) |
中国 |
鉱工業生産(4月) |
経済対策の恩恵は浸透しているのか? |
中国 |
小売売上高(4月) |
||
中国 |
固定資産投資(年初来) |
||
5/16(月) |
日本 |
◯決算発表〜三菱UFJ他 |
★決算発表シーズンが実質的に終了 |
5/17(火) |
米国 |
住宅着工 |
|
米国 |
消費者物価指数 |
エネルギー・食品を除いたコア部分に注目 |
|
5/18(水) |
日本 |
GDP(1〜3月) |
前期比・年率0.4%成長がコンセンサス |
日本 |
機械受注 |
設備投資の先行指標 |
- ※各種報道等をもとにSBI証券が作成。データは2016/5/9現在。
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【ココがPOINT!】本当に今後も円高は進むのか? |
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市場では円高が進行し、日本の企業業績はさらに悪化し、株価も下落するとの見方が有力です。確かに、円高が企業業績に悪影響を与え始めており、企業の業績予想が慎重なものとなる主因になっています。
「ドル高」が米国の景気・企業業績に悪影響を与えてきたため、米当局がその是正に向けて動き出したことが背景にあるとの見方が有力です。日本を為替監視国に指定したり、発言等でけん制したりすることで、円売り・ドル買い介入を防げるため、円高・ドル安が加速する可能性が大きいと考えられています。
「ドル高」が米企業業績に悪影響を与える面は確かにあります。しかし、現状が「ドル高」か否かの判断は「ドル・円相場」だけをみて決められるのでなく、その総合的な実力(実効為替)をみて行われます。そして総合的な実力を測るには、ユーロや人民元との比較から判断して、改善する必要があります。残念ながら、米国からみた貿易相手国としての日本の地位は歴史的に低下していますので「円」だけがターゲットにされているかのような議論には違和感を覚えます。
また、外為市場では通常「単独介入の効果は薄い」と考えられることが普通です。「単独介入は効かない」ということになります。だとしたら、「日銀が介入しにくくなったので、円高になる」というのは「論理破たん」ではないでしょうか。「効かない単独介入」であれば、それができなくなったことに意味はないからです。
図2は、日銀とFRBの総資産の規模を比較した折れ線と為替相場を1枚のグラフにまとめたものです。グラフ(B)に示されているように、FRBと比べ日銀資産の相対的な膨張性が顕著になっています。平易な表現を使えば、ドルに比べ、円はどんどんと薄まってきている感じです。
これは日銀が引き続き金融緩和を継続し、国債買い入れも継続する一方、米国は金融引き締めに転じており、金融政策の方向感がまったく違うからです。米国が金利引き上げペースを遅らせることは、ドル高・円安を鈍らす要因にはなっても、円高・ドル安を大きく進める要因としては不十分だと思います。
図2は、むしろ、「放置」しておけば円安・ドル高が加速しかねない状態であることを示しているのではないでしょうか。米国の最近の動きはそうした「放置」を避ける意味合いが強いと思います。最近の円高に対する市場の反応は「過剰」と考えられ、為替相場が落ち着けば、株式市場も平静さを取り戻すと考えられます。
図2:日米金融政策の相違は明らか

- ※Bloombergデータ、日銀・FRBデータをもとにSBI証券が作成。
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