日経平均株価は4/8(金)に15,500円割れ水準まで下げるなど、波乱の展開になっています。4/7(木)に外為市場で、ドル・円相場が107円66銭の円高・ドル安水準を付け、景気・企業業績への逆風が懸念されたことが影響しています。
今後、外為市場ではさらなる円高・ドル安が進むのでしょうか。それとも、円安・ドル高方向に反転するのでしょうか。そして、外為市場の動きを映し、日経平均株価は上昇するでしょうか、下落するでしょうか。
進む円高・株安 |
株価の下落が長期化しています。日経平均株価は2015/8/11に20,946円と高値圏にありましたが、2016/2/12には14,865円まで下落してしまいました。この間の下落率は約3割(図1)に達しています。
中国経済や同国株の先行きに対する不安が強まり、それと併せて新興国経済への不透明感が強まったことが、日本株にも強い逆風になりました。上海総合指数は2015/6/12に5,178ポイントと、2007年以来の高値圏に到達していましたが、その後は下落傾向となり、2016/1/27には2,638ポイントの安値を付けました。
FRB(米連邦準備制度理事会)は政策金利引き上げのタイミングを図っていましたが、このような世界経済への不透明感からなかなか実現せず、それが円高・ドル安を促し、結局は日本株を押し下げる方向に作用してきました。図2は日経平均株価とドル・円相場の動きを、昨年8月以降についてみたものです。一般的に日経平均株価はドル・円相場と強い相関性を有すると言われていますが、ここでもそれが「証明」された形になっています。
雇用統計や各種経済指標をみる限り、米国経済はすっかり明るさを取り戻したかにみえますが、ドル高が企業業績を圧迫する傾向が続いており、足元ではむしろ市場の警戒感は強まる方向にあります。当面、円高・圧力はくすぶり続け、日経平均株価も下落が続くとの見方が増えているようです。
図1:日経平均株価(日足)
図2:円高・ドル高と「共鳴」する日経平均株価
- BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
日米とも警戒すべき決算発表シーズンに突入 |
当面の重要なタイムスケジュールとしては、日米ともに2016/1〜3月期の決算発表になりそうです。なお、12月決算企業の多い米国では2017年第1四半期が多くなりますが、日本企業の場合は「本決算」となる企業が圧倒的多数であり、実績同様次期の業績見通しも注目されます。
米国の主要500社(S&P500採用企業)の2016/1〜3月期の純利益は前年同月比7.6%程度の減益(4/8現在のトムソン・ロイター調べ)が予想されています。原油価格下落の影響が出てきそうです。ただ、ドル高の影響については緩和してきそうで、減益率としてはこの四半期がボトムになりそうです。
日本の上場企業について、3月決算企業の決算発表は4/20(水)の安川電機あたりから徐々に増えてきて、ゴールデンウィーク直前の4/28(木)に最初のヤマ場を迎える予定です。日銀短観では大企業の2016年度経常利益は若干の減益が見込まれていますので、会社発表の2016年度業績見通しは非常に慎重な数値になる可能性があります。特に足元の円高・ドル安を受けて多くの輸出企業が減益計画を立てる可能性が強く、要注意です。
決算発表以外では4/13(水)に米国で発表される3月の小売売上高に注目です。変動の大きい自動車や、景気変動の影響を受けにくいガソリンを除いた部分ではこの1年間、前月比+0.3%が月次データとしての平均値になっています。それと比較して大きいか少ないかで米個人消費の強弱感も割れてきそうです。無論。
表1:当面の重要なタイムスケジュール
月日(曜日) |
国・地域 |
予定内容 |
ポイント |
---|---|---|---|
4/12(火) |
日本 |
◯決算発表〜ビックカメラ、良品計画 |
主力小売企業の業績見通しに注目 |
4/13(水) |
中国 |
3月貿易収支 |
輸出は前年比4%増の予想(コンセンサス) |
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日本 |
◯決算発表〜イオン他 |
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米国 |
3月小売売上高 |
米個人消費の重要指標。予想外に悪いと、利上げ先送り論。 |
|
米国 |
ベージュブック |
米金融政策の重要な判断材料 |
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米国 |
◯決算発表〜JPモルガン・チェース |
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4/14(木) |
米国 |
◯決算発表〜バンカメ、Wファーゴ |
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- |
G20財務省・中銀総裁会合 |
|
|
米国 |
3月消費者物価 |
食品・エネルギーを除き前年比2.3%増の予想(市場コンセンサス) |
4/15(金) |
中国 |
1〜3月GDP他主要経済指標 |
前年比6.7%成長の予想(市場コンセンサス) |
|
中国 |
3月鉱工業生産 |
|
|
中国 |
3月小売売上高 |
自動車・ガソリンを除き前月比0.3%増の予想(市場コンセンサス) |
|
米国 |
4月NY連銀製造業指数 |
|
|
米国 |
4月ミシガン大学消費者信頼感指数 |
|
|
米国 |
イエレンFRB議長が歴代議長と会合 |
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4/18(月) |
米国 |
NAHB住宅市場指数 |
|
|
米国 |
◯決算発表〜ネットフリックス、IBM |
IBMの決算は多国籍企業の収益動向を示唆 |
4/19(火) |
独 |
4月ZEW景況感指数 |
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米国 |
3月住宅着工件数 |
|
|
米国 |
◯決算発表〜GS、インテル |
インテルの決算は半導体設備投資のヒントになる |
4/20(水) |
日本 |
3月貿易統計 |
|
|
日本 |
訪日外客数 |
1月は前年同月比52.0%増、2月は36.4%増 |
|
日本 |
◯決算発表〜安川電機 |
日本の決算発表シーズン到来 |
|
米国 |
3月中古住宅販売件数 |
|
|
米国 |
◯決算発表〜クアルコム、アメックス |
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4/21(木) |
欧州 |
ECB理事会(ドラギ総裁) |
|
|
米国 |
4月フィラデルフィア連銀製造業共感指数 |
|
|
米国 |
FHFA住宅価格指数 |
|
|
米国 |
◯決算発表〜マイクロソフト他多数 |
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4/22(金) |
日本 |
◯決算発表〜中外製薬、ジャフコ |
|
|
米国 |
◯決算発表〜GE、キャタピラー |
キャタピラーの示す業界動向でコマツや日立建機も動く可能性 |
- ※各種報道等をもとにSBI証券が作成。データは2016/4/12現在。
【ココがPOINT!】どうなる円高?どうなる日経平均? |
冒頭でご説明した通り、日経平均株価はドル・円相場と強い相関性を有していると考えられています(図3)。足元の米国経済はまだまだ不安定さを残していますので、米債券は買われやすくなっています。米10年国債利回りは昨年1月に1.646%まで低下しましたが、本年も2/17(水)に1.662%まで低下しています。これを受けて日米金利差は縮小しやすくなるため、外為市場では円高・ドル安が進みやすい状況となっています。
もっとも、円高だから株価が下げているという理解は必ずしも正しくないかもしれません。ドル・円相場と株価は「共振」しやすくなっていると考えられます。例えば外国人が日本株を買う(円資産を買う)場合は、先物でドルを売っておいてヘッジしておくという海外投資家が多いためです。逆にこれらの投資家が日本株を売る時、ヘッジを外しますので円高・ドル安の動きが強まることになります。
図4で示したように、海外投資家が売り越すような場面では、日経平均株価も下がる傾向が強くなっています。今後の海外投資家の動向は、日経平均の先行きに大きな影響を与えそうです。ちなみに、アベノミクス相場開始以降、2012〜2015年に海外投資家は日本株を約18兆円も買い越しましたが、2016年に入ってからはたかだか3ヵ月で5兆円も売り越しており、それが株安・円高につながった可能性が大きそうです。一部では当面の海外投資家による売り越しはヤマ場を越したとの指摘もあり、仮にその通りであれば株安も一巡してきそうです。
この章の冒頭にある米10年債利回りについて言えば、米政策金利が引き下げられるという方向感ならともかく、逆に引き上げられる可能性が大きいという方向感の中で、米国債利回りが前年の最低水準を下回って、どんどん低下していくというシナリオは、違和感をおぼえるところです。すなわち、10年国債利回りがここから大きく下がるというシナリオは考えにくく、急激な円高・ドル安は考えにくいと言えそうです。
図3:日経平均株価(左)とドル・円相場(右)
図4:日経平均株価(左)と海外投資家売買動向(右)
- BloombergデータをもとにSBI証券が作成。データは2016/4/12現在。
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