昨年末に19,033円を付けていた日経平均株価は、2016年の年明け以降下落基調となり、1/21(木)には16,017円の安値を付けました。引き続き、中国経済への不透明感や原油安、円高などが逆風となっています。ドラギECB(欧州中銀)総裁の追加緩和示唆を受け、1/22(金)および1/25(月)と反発に転じましたが、1/26(火)には再び売り先行となるなど、市場は引き続き不安定な状態に置かれています。
市場では、「中国」、「原油」、「為替」など、株式市場を取り巻く不透明要因は多く、これらがすべて解消しないと、本格的な株価上昇は想定しにくいと考える市場参加者は多いとみられます。しかし、本当にそうなのでしょうか?
激動の1週間 |
1/22(金)までの1週間はまさに「激動の1週間」でした。前週末(1/15)に17,147円11銭で終えた日経平均株価は、中国経済への不透明感や原油価格の下落、円高傾向等を嫌気する売りが続き、1/18(月)の取引時間中には昨年9/29(火)の安値を下回る16,665円まで下落してしまいました。
翌日の1/19(火)に発表された中国のGDP(15年10〜12月)は事前の市場予想を若干下回ったものの、むしろイベントリスクが後退したと理解され、同日の日経平均株価は終値で17,000円の大台を回復しました。しかし、その後の日経平均株価は1/20(水)632円18銭安、1/21(木)398円93銭安と急落し、16,017円26銭の安値に沈んでしまいました。原油価格(WTI先物)が1/20に、1バレル26ドル台という12年ぶりの安値水準に沈んだことや、同じ日に外為市場で、ドル・円相場が115円台後半の円高・ドル安水準を付けたこと等が嫌気されました。
こうした中、1/21(木)に開催されたECB(欧州中央銀行)理事会後の記者会見で、同中銀のドラギ総裁が「場合によっては(金融政策のスタンスを)見直す可能性がある」と発言し、追加緩和を示唆したことから、1/21(木)の欧州株が上昇し、その流れを受けて米国株も反発に転じました。翌日の1/22(金)には、日経平均株価も前日比941円27銭高し、昨年9/9以来の上昇幅を記録しました。ちなみに、この日の海外市場でも株価・原油価格がともに上昇を継続し、外為市場では円高・ドル安が一服する流れとなりました。
今後はどうなるでしょうか。日経平均株価はしばらく反発基調を辿るのでしょうか、それとも再度下落基調に転じてしまうのでしょうか。その意味で、1/25(月)から始まった1週間はまさに「正念場」になりそうです。1/26(火)には再び売りが先行する展開になるなど、明確な方向性は見えていないのが現実です。欧州に続き、日米で金融政策を決定する会合の開催が予定されており、その結果が今後の株価を左右しそうです。また、国内では3月決算企業の決算発表(2015年10〜12月)が本格化してきます。世界の株価・商品市況・為替等のマクロな動きのみならず、個別企業の動向からも目が離せないことになります。
図1:1万6千円ギリギリの水準から反発に転じた日経平均株価
- ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2016/1/25現在。
正念場の1週間 |
2016年1月最終週から2月第1週にかけてはまさに、重要日程が目白押しになっています。特に相場への影響が大きいスケジュールとしては、(1)日米の金融政策、(2)日米の決算発表、(3)米国の雇用統計などが想定されます。なお、先週の「ココがPOINT!」と重複している項目もありますが、アップデートし、改めて整理したいと思います。
(1)日米の金融政策についてはまず、米国時間の1/27(水)(日本時間では28日未明)に結果が発表される米FOMC(米連邦公開市場委員会)が注目されます。市場は今回の会合で金融政策の変更を予想していませんが、会合後のイエレン議長の声明で金融政策に対する柔軟な姿勢が示されるか否かが注目です。また、1/29(金)に結果が発表される日銀金融政策決定会合では、追加緩和があるか否かが注目されます。国債買い入れ額の増加やETF買い入れ枠の増加等はある程度織り込まれているとみられ、市場に「意外感」を抱かせることは、なかなか困難であると考えられ、会合後に波乱が起こる可能性も小さくないとみられます。(後に詳細)
(2)決算発表について、まず米国ではアルファベット(グーグルの持株会社)、アマゾン・ドット・コムなど主要企業の発表が1月までで一巡します。それに代わり、日本企業の発表がこれからピークを迎えます。円安一巡による輸出企業の減速や、資源・エネルギー・素材等に係る企業で減損・評価損が警戒され、業績予想を下方修正する銘柄が増えるとみられます。反面、輸入企業等ではエネルギーコストの低下で利益が膨らんでいる企業も出てきそうです。問題は、決算発表後の株価の反応です。決算発表を契機に物色の方向感が変わる可能性も小さくないと思います。
(3)米国の雇用統計は、同国でもっとも重要な経済指標のひとつであり、市場での注目度も常に最上級クラスを維持しています。非農業部門雇用者数が好不況の境目である20万人を超え、失業率が「完全雇用」に近い5.0%程度を維持していること、労働参加率があまり減っていないこと等の条件が揃えば揃うほど強い経済統計と言えます。雇用統計のヒントとなる週次の新規失業保険申請件数にややボトムアウトの兆候が見えるので、一応の注意が必要です。
表1:当面の重要なタイムスケジュール
月日(曜日) |
国・地域 |
予定内容 |
---|---|---|
1/26(火) |
米国 |
FHFA(米国連邦住宅金融庁)住宅価格指数 |
米国 |
アップルなどが決算発表 |
|
1/27(水) |
日本 |
富士フィルム、アルプス電気、キヤノンなどが決算発表 |
米国 |
ボーイング、FB、キャタピラーなどが決算発表 |
|
米国 |
FOMC(米連邦公開市場委員会)結果発表 |
|
1/28(木) |
日本 |
信越化学、ファナックなど164社が決算発表 |
米国 |
耐久財受注 |
|
米国 |
マイクロソフト、アマゾン、アリババなどが決算発表 |
|
1/29(金) |
日本 |
失業率、消費者物価などの発表 |
日本 |
日銀金融政策決定会合の結果および「展望レポート」発表 |
|
日本 |
ドコモ、コマツ、村田製、ソニー、JR各社など494社が決算発表(決算発表第1のヤマ場) |
|
米国 |
10〜12月期GDP |
|
2/1(月) |
中国 |
製造業PMI |
日本 |
三菱UFJ、新日鐵住金など75社が決算発表 |
|
米国 |
ISM製造業指数 |
|
米国 |
アルファベットなどが決算発表 |
|
2/2(火) |
日本 |
三菱商、ヤフー、任天堂など101社が決算発表 |
2/3(水) |
日本 |
日銀金融政策決定会合(12/17・18開催)議事要旨 |
日本 |
花王、パナソニックなど126社が決算発表 |
|
米国 |
ADP雇用統計 |
|
2/4(木) |
日本 |
JT、三井物産など171社が決算発表 |
2/5(金) |
日本 |
トヨタ、住友商、NTTなど429社が決算発表(決算発表第2のヤマ場) |
米国 |
雇用統計 |
|
2/7(日) |
中国 |
春節(2/8)前後の大型連休(〜2/13) |
- ※Bloombergデータ、報道等をもとにSBI証券が作成。海外は現地時間。
【ココがPOINT!】悪材料は相当織り込み済みであり、マインド好転のタイミングは近い? |
冒頭でも述べた通り、1/22(金)で終わる1週間はまさに、「激動の1週間」でした。中国経済への不透明感や原油価格の下落、円高等を背景に、株価は一時、大きく下落してしまいました。「ドラギ発言」もあり、足元はやや反発に転じたとはいえ、まだまだ不安定な印象はぬぐえません。
「中国」、「原油」、「為替」など、株式市場を取り巻く不透明要因は多く、これらがすべて解消しないと、本格的な株価上昇は想定しにくいと考える市場参加者は多いとみられます。中国経済の改善を示唆する材料も、原油価格の上昇をもたらす材料も、円高にブレーキをかける材料も、あまり出てはいないと見受けられます。このため、市場の混乱は長期化するとの見方が多いように思われます。
しかし、これらすべての不透明要因が解消する必要はないかもしれません。
実は、市場が混乱した要因をあえてひとつだけに絞るならば「米国が緩和的金融政策から転換し、利上げの時代に入ったことで、世界のマネーの流れがどう変化するか、市場が読み切れていなかったこと」が指摘されると思います。また、2016年に0.25%ずつ計4回の利上げを示唆しているFRBと2回前後を想定している市場の間に認識ギャップがあり、それが混乱をもたらしている可能性がありそうです。
リーマンショック以降の未曾有の米金融緩和は、世界中にドルを拡散させる役割を果たしました。そうした中で余剰マネーは株式市場にとどまらず、新興国の債券・株式や商品市場などへと流れてきました。米国の金融引き締めは、そうした流れを逆流させることを意味します。マネーは新興国や商品市場、株式市場からおもに先進国の安全資産(債券など)へと戻ると想定されますが、それが現在の、新興国株安、原油安、株安につながっていると考えられます。
もっとも、こうした混乱はあらかじめ予想され、だからこそ米国は2013/6に「量的緩和の縮小(テーパリング)」の方針を示唆(いわゆる「バーナンキ・ショック」)して以降、「緩和的金融政策の終了」を約2年半もかけ、市場との対話を心掛けながら、実施してきたのだと思われます。すなわち、市場参加者の多くは米国の政策金利引き上げ時代に備えた準備をしてきたものと考えられます。その過程で、中国のみならず多くの新興国経済が減速に転じ、原油などの商品価格が下がってきたのであり、何も今はじまった訳ではないとみられます。
図2および図3にあるように、上海株も原油先物も、歴史的な大幅下落相場となっていますが、すでに相当下げており、相当の悪材料を織り込んでいると考えられます。FOMCなどを通じ、FRBと市場の間に存在する「温度差」に縮小傾向が見えてくれば、これらの市場および株価はいったん落ち着きを取り戻すのではないでしょうか。
なお、原油価格の下落や賃金上昇の鈍さを背景に「脱デフレ」が不透明になってきた我が国では、日銀の追加緩和が実施される公算が膨らみつつあります。市場の想定を超える「黒田バズーカ」が、停滞感を打ち破る可能性はゼロではないと考えられます。
図2:上海総合指数(週足)
図3:WTI原油先物相場(週足・1バレル当たりドル)
- 当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2016/1/25現在。
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