日米同時株高の中で、日経平均株価の上昇基調も強まりそうです。12/4(金)に発表された米雇用統計において、雇用者数が市場予想を上回ったことを受けて、12/17(木)(日本時間・未明)に結果が発表予定の米FOMC(米連邦公開市場委員会)で、米国の9年半ぶりの利上げが決定しそうです。利上げは、米国経済が「非常時」からようやく「通常時」になったことを意味するものと考えられます。今後は債券から株式への資金シフトを巻き込みながら、素直に米国経済の回復を評価する局面になりそうです。
12/3(木)のECB(欧州中銀)による追加緩和は、市場の期待よりも抑制された内容になったことで逆に、今後の追加緩和余地を残す一方、ユーロ安・ドル高のブレーキになり、今後の世界経済におけるリスクを軽減させる役割を果たしたかもしれません。とはいえ、欧州の金融緩和は強化されたことには変わりなく、投資家の運用難はますます深刻になりそうです。
欧米の投資環境がこのように変化する一方で、我が国は法人減税の動きや少子高齢化へ対応する動きが続いています。企業業績も拡大傾向が続いています。12/7(月)の米国株を下落に導いた原油安も日本経済にはプラス面が多く、海外投資家の中にはそれを評価しようとしている向きもあるようです。日経平均の上昇も本格化しそうです。
米雇用拡大、利上げ濃厚〜米金融政策の今後は? |
12/4(金)に発表された11月の米雇用統計で、代表的な指標である「非農業部門雇用者数」が前月比21万1千人増加し、事前の市場予想(20万人増)を大きく上回りました。過去分も10月が29万8千人増(前回発表値は27万1千人増)、9月が14万5千人増(同13万7千人増)に上方修正されました。失業率も5.0%と、前回と同じながらFRB(米連邦準備制度理事会)が「完全雇用」状態とみなしている4.9%に近い状態が労働参加率の上昇を伴う好ましい状態で続いています。これで2015年の「非農業部門雇用者数」は11月までで、月平均21万人のペースで増加した形になります。
雇用統計が米労働市場の強い回復を示したことで、12/17(木)(日本時間・早朝)に結果が発表されるFOMC(米連邦公開市場委員会)では政策金利がほぼ9年半ぶりに引き上げられる可能性が濃厚となりました。
雇用統計の発表を受けて当日のNYダウは、前日比369ドル96セント高と前日の下げを完全に上回る上昇となり、17,847ドル63セントで引けました。米国株式市場は、同国の金融政策に絡む不透明感が解消し、金融当局が米経済の回復力の強さにお墨付きを与えた形になったものと見受けられます。
雇用統計の結果、米国の利上げがほぼ確実となり、市場の関心は改めて同国の利上げぺースの程度や緩急に移るものと考えられます。現状では、2016年における利上げは2〜4回程度と市場では予想されており、FRB自身が緩やかな利上げを示唆していることから波乱材料になる可能性は小さいと思われますが、景気拡大が加速する兆候が強まれば、より急ピッチで利上げすべきとの論議が出てくる可能性も残るでしょう。
図1:米雇用統計における「非農業部門雇用者数増減」(前月比)の推移(千人)
- ※Bloomberg、米労働省データをもとにSBI証券が作成
結果としてECBの判断は正解で、むしろ株高の要因に!? |
なお、主要国の株式市場では、ECB(欧州中銀)による追加緩和の規模が期待外れであったとして、一時株価が急落しましたが、そのショックが後を引く可能性は小さいと予想されます。ECBは今回の追加緩和の規模を抑制したことで、市場が再び荒れた時に政策発動を行う余地を残すことができた上、さらにユーロ安・ドル高の加速を防ぎ、米国経済が再び腰折れとなるリスクを抑えることができたという面もあるからです。
一般的に為替相場の変動は、中央銀行の目的とする所ではありません。しかし、それは原則上の話で、重要視されていることは確かです。米国がここにきて、年内利上げを示唆し始めたことで、外為市場にはユーロ安・ドル高の圧力がかかりますから、その分、ECBによる追加緩和の必要性は「ユーロ安による輸出の促進」という意味では低下していました。仮に、12/3のECB理事会で市場が期待していた通りに強めの追加緩和を実施した場合、ユーロ安・ドル高が行き過ぎて米企業業績がさらに打撃を受け、米欧の金融当局間に軋轢を生んでいた可能性が大きいと思います。後に株安につながるリスクは、その場合の方が大きくなっていた可能性すらあるとみられます。
いずれにせよ、欧州の緩和姿勢は強まり、欧州の投資家の運用難は一層強まると考えられます。米国も利上げ局面に入ることがほぼ確実になったことで、値下がりが懸念される債券を売り、株式に乗り換える動きが強まる可能性があります。こうした中、企業業績の拡大が続き、法人税減税や少子化対策への取り組みが前進している日本株の優位性がクローズアップされる可能性は十分あると考えられます。
リスク要因としては、欧州の金融政策よりもむしろ、12/11(金)のSQ算出日に向けた国内株式市場の需給関係が気がかりです。裁定買い残が3.6兆円と、本年5月以来の高水準まで膨らんでいるため、その解消過程で株価が下落する可能性があります。表1は、当面のタイムスケジュールを示したものですが、最大のイベントである12/17(木)(日本時間)の米FOMC結果発表までは、このSQが最大の関門になる可能性がありそうです。
表1:「日経平均株価」を考えるうえで当面重要とみられるタイムスケジュール
月日 | スケジュール | ポイント・注意点 |
---|---|---|
12/8(火) | ◎(日)GDP2次速報値(7〜9月期) | マイナス0.8%からプラス1%に上方修正。 |
(中)11月貿易統計 | ||
12/9(水) | (日)10月機械受注 | 設備投資の先行指標。若干のマイナスか? |
(中)11月消費者物価 | ||
12/11(金) | (日)メジャーSQ | 裁定買い残(11月末3.6兆円)の行方は? |
12/12(土) | (中)中国工業生産、小売売上高等 | |
12/14(月) | (日)日銀短観(12月調査) | 10〜12月期の企業業績を占う。 |
12/15(火) | (米)消費者物価 | インフレ率加速の兆候はないかチェック。 |
12/16(水) | (米)住宅着工数 | |
12/17(木) | 米FOMC結果発表 | 米政策金利0.25%引き上げがコンセンサス。 |
- ※Bloomberg、各種報道をもとにSBI証券が作成。日程は日本時間で記載。予定は変更されることもあります。2015/12/8現在の情報で作成しました。
【ココがPOINT!】日米欧の投資環境の変化が、日経平均株価を押し上げる要因に!? |
米国では市場の関心が「年内利上げはあるのか否か?」から「2016年の利上げのペースや規模は実際どうなるのか?」という点に移る可能性が大きそうです。目先はともかく中長期的には、長期国債の利回りは上昇(債券価格は下落)しやすくなると考えられます。米国では、債券から株式への動きが強まる可能性が大きそうです。
長期国債の利回りが上昇しやすくなる分、ドル高が継続しやすくなり、原油や金などの商品市況にマイナスのバイアスがかかりやすくなります。ただ、利上げが想定される12/17(木)(日本時間・未明)のFOMC結果発表まで、ドル高が極端に加速した場合は、利上げ実施が短期的な「材料出尽くし」となり、その後の外為相場でドル高が進まないリスクも膨らんできます。また、過度なドル高が米国のグローバル企業の業績にとってマイナスになるという点も変わらないため、理想的には緩やかなドル安が指向されることになりそうです。
ドル高・原油安の組み合わせは、ガソリン価格の値下がりや物価の安定を通じ、米国の消費者や消費関連企業(自動車やネット企業中心)に追い風になりそうです。なお、債券から株式への動きが一部日本株に向かう可能性もありそうです。
欧州の緩和的金融政策も長期化し、投資家のリスク許容度が高まり、その分、日本株の組入れを増やす動きが強まる可能性が大きそうです。
このように、欧米からの資金シフトが期待できる状況下で、法人税率の30%未満への引き下げが濃厚になってきたことは「朗報」です。さらに最近は、原油価格の下落は日本経済にとってのメリットとして前向きに評価する動きもあります。年末から年始にかけ、日本株の上昇は加速するのではないでしょうか。
図2:日経平均株価はSQ前後に要注意で、そこを通過できれば安定化も
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