11月半ばまでの日経平均株価は概ね堅調な推移となっています。この先12月にかけては「1億総活躍社会」に向けた経済対策の策定等が注目されますが、比較的大きな株価材料は少ないように思われます。その意味で、テクニカル指標を十分チェックする必要があると思いますが、20,000円大台に向けた足場固めは進んでいるように思われます。
日経平均株価は8/21以来の水準を回復 |
11月半ばまでの日経平均株価は概ね堅調な推移となっています。10/30には19,083円を付けていましたが、11/12には一時19,725円まで上昇し、8/21以来の高値水準を回復しました。
中国経済の減速がいったんは市場に織り込まれる中、「2015年の最大イベント」とされていた郵政3社の新規上場(11/4)が成功裏に終わった他、米雇用統計(11/6に発表)が市場予想を大きく上回り、円安が進んだこと等が背景とみられます。11/13にパリで起きた同時多発テロを受け、週明け11/16の日経平均が大幅安となるという局面もありましたが、11/17には早くも「失地回復」を果たしています。
こうした中、11/16には我が国の実質経済成長率(2015年7〜9月期)が発表され、成長率は前期比(年率)でマイナス0.8%と2四半期連続のマイナスになりました。米国であれば、2四半期連続で経済成長率がマイナスとなったので、「リセッション」(景気後退)と呼ばれるケースに相当します。
ただ、株式市場はこうしたGDPの悪化についても冷静な反応を示しています。内容的には在庫調整の効果が目立つためで、必ずしも後ろ向きに捉える必要がないと思われます。もともと、各四半期のファンダメンタルズについては、企業業績の発表がGDP速報に対し先行するため、GDP速報の内容は「織り込み済み」になるケースがほとんどであると考えられます。7〜9月期についても、11/13までに上場企業の決算発表はほぼ終了していますので、GDPが改めて悪材料になる可能性は少なかったとみられます。在庫調整の一巡もあり、GDPは10〜12月にはプラスに転換する見込みですので、その意味では「悪材料出尽くし」になったと考えることもできるでしょう。
図1:8/11から9/29までの下落幅に対し3分の2を戻した日経平均株価
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成。2015/11/17現在。
月末の経済対策が重要か |
今後の日経平均株価の方向感を占う意味で、ここでは重要なタイムスケジュール(表1)をチェックしておきたいと思います。
もっとも重要なタイムスケジュールとしては、月末に向け「1億総活躍社会」に向けた対策がどう具体化されていくかにあります。少子高齢化問題にどう対応していくのか、TPP(環太平洋経済連携協定)に対応した農業対策をどう打っていくのかが注目されます。併せて、日銀の金融政策決定会合も注目されます。マイナスのGDPが発表された後だけに「意外な追加緩和」の可能性はゼロではないでしょう。ただ、現在のドル・円相場が比較的居心地の良い水準とみられる上、米国の年内利上げの可能性が膨らむ現状では、追加緩和はないというのがメインシナリオになるでしょう。
こうした中、米国では12月のFOMCに向け、米国経済の現状をチェックする上での、住宅関連指標、設備投資関連指標、そしてGDP改定値と、そこそこ重要な経済指標の発表が続きます。場合によっては、米国株に変動をもたらし、日経平均株価に影響を与える指標も出てきそうです。ただ、市場が「様子見」を決め込まなければならない程の重要指標は少ないようです。
表1:「日経平均株価」を考えるうえで当面重要とみられるタイムスケジュール
月日 | スケジュール | ポイント・注意点 |
---|---|---|
11/17(火) | 米国消費者物価(10月) | |
米国鉱工業生産・設備稼働率(10月) | ||
米NAHB住宅市場指数(11月) | ||
11/18(水) | 訪日外国人旅行者数(10月) | 9月は前年同月比46.7%増 |
◎決算(東京海上、MS&AD、損保JPNK) | 主力企業の7〜9月決算発表終了 | |
ASEAN首脳会議開幕/APEC首脳会議開幕 | ||
米住宅着工件数(10月) | ||
FOMC(10/28結果発表)議事要旨 | 年内利上げ観測へ向けての感触は? | |
11/19(木) | 貿易統計(10月) | 輸出動向に注目。 |
日銀金融政策決定会合結果発表。黒田日銀総裁会見 | ||
米フィラデルフィア連銀指数(11月) | 米国企業のマインドは? | |
11/22(日) | 大阪知事・市長選挙 | |
11/23(月) | 勤労感謝の日(東京市場休場) | |
米中古住宅販売(10月・日本時間未明) | 米住宅市場の9割は中古市場 | |
11/24(火) | 米GDP改定値(7〜9月) | 速報値1.5%から改善か? |
11/25(水) | 日銀金融政策決定会合議事要旨 | |
TPP対応政策大綱 | ||
米耐久財受注(10月) | 米国設備投資の先行きを占う | |
11/27(金) | 失業率・有効求人倍率 | |
月末まで | 緊急対策(1億総活躍社会) |
- ※Bloomberm、各種報道をもとに、SBI証券が作成
テクニカル的には「20,000円」へ態勢固めが進む |
図2は、日経平均株価の「エンベロープ分析」を表示したものです。難しく聞こえますが、日足チャートが、移動平均(おもに25日移動)やそこから一定比率乖離したラインとどういう関係にあるかを見て株価を判断するものです。当社のチャートツールでは、日足チャートと25日移動平均、25日移動平均±2.5%、同±5.0%、同±7.5%を表示しています。
目先の株価が「行き過ぎ」かどうかを判断する時は、現在の株価が25日移動平均から何%乖離しているかで判断します。中長期的な株価の方向感に大きな変化を与える材料がなければ±7.5%前後が限度と考えられますが、最近は±5%程度で反転するケースも多いように思えます。例外としては中長期的な株価の方向感に大きな変化を与える材料で動いている時です。8月以降、人民元切り下げを機に強まった中国経済への不信感と、それに伴う株価下落を背景に日経平均株価が下がる過程では、例外的な乖離率まで株価が下げてしまいました。
なお、「エンベロープ分析」では、移動平均の方向感も重要だと思います。25日移動平均が急角度で動いている時は、当然、そこから一定比率乖離した水準もすぐに動くためです。単純ですが、25日移動平均が上昇している時はトレンドが上向き、下落した時はトレンドが下向きと考えられます。
11/17現在、日経平均株価の25日移動平均は18,900円超の水準にあり、+5%乖離で19,850円前後、+7.5%乖離で20,320円と計算されています。「エンベロープ」分析面では、当面行き過ぎを懸念する水準ではなさそうです。また、25日移動平均自体も上昇傾向と見受けられます。中国経済への不信感が織り込まれ、決算発表を通過した比較的重要スケジュールの少ない現在、大きな波乱が起きにくいことから、年末に向け日経平均株価が20,000円を回復するまでの障害は少ないように思われます。別の機会でご紹介した通り、一目均衡表(日足)は既に「三役好転」している上、同・週足チャートも株価がクモの上に抜けてきています。
図2:エンベロープ分析でみた日経平均株価
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成
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