7月以降、日経平均株価はおもに海外からの「悪材料噴出」に見舞われ、たびたび波乱となりました。ギリシャ危機に続き、中国株の下落、中国人民元の切り下げなど、先行きが読みづらい材料が続きました。NYダウも7/20以降は総じて軟調でした。
こうした厳しい環境にもかかわらず、日経平均の下値は徐々に切り上がる展開となっています。上海株安を受けて7/9に一時、1万9千円に迫る急落を演じた後は反発に転じ、2万円の大台を固めるかのような展開になっています。
では、今後、日経平均はどう推移するのでしょうか。「225のココがPOINT!」では、「悪材料噴出」でも下値を切り上げる日経平均の本格的な上昇タイミングは近いと見ています。需給面では空売りの買い戻しが想定されることに加え、企業業績の拡大が確認され、今後はその織り込みが本格化すると考えられるためです。以下に、詳細をご説明します。
「悪材料噴出」でも下値を切り上げる日経平均 |
7月以降の株式市場を振り返ってみると、まさに「悪材料噴出」であったことがわかります。7月は、ギリシャ危機に加え、中国株安の深刻化が株式市場に波乱をもたらしました。8月に入り、落ち着いたかに見えた中国市場で、人民元の切り下げという問題が起き、世界のマーケットに動揺を与えました。
ご存知の通り、ギリシャ問題については、同国経済の立て直しという根本的な解決は見えていないものの、同国とEU(欧州連合)やIMF(国際通貨基金)など債権国との間に合意が成立し、当面の資金繰り問題にメドは付いています。このため、世界のマーケットの最大の関心事は、7月の株価急落で表面化した中国経済の先行きに集まっています。同国では矢継ぎ早の対策で株価の落ち着きが図られましたが、8/11〜8/13には3営業日連続で、中国人民銀行が人民元を「切り下げ」たため、マーケットでは「それほどまでに中国経済の悪化は深刻なのか」との懸念が強まりました。我が国においては、人民元切り下げで中国の輸出競争力が強まり、日本の輸出企業への悪影響が出ることも心配されました。
しかし、中国人民銀行が人民元の「切り下げ」(正確には対ドル相場の基準値の引き下げ)を3営業日で止めたことで、当面の不安は後退しています。もともと、アジア通貨が先行してドルに対して下げていたことで、ドルと連動する人民元も多くの通貨に対して高くなってしまったという問題が出ており、今回はそれを修正する目的もあったようです。習近平国家主席の訪米を9月に控え、中国が今後急速な「人民元切り下げ」を再開するとも考えにくく、この問題はいったん「消化」された可能性が高いとみられます。もともと、人民元の下落は、対中国で3兆円弱の貿易赤字(2015年上半期)を抱える日本にとり、悪い面ばかりではないと考えられ、過度の懸念は不要と考えられます。
このように、海外からの「悪材料噴出」で、たびたび混乱に見舞われた日経平均ですが、その底値が徐々に切り上がっていること(図1)は、過小評価すべきではないと考えられます。一方、高値については、6/24高値と8/11高値が位置する20,900円台を抜けきれないため、チャート的には「保ち合い」の様相が強まっています。通常、保ち合い相場は、「放れた方に付け」ということになりますが、今後は、需給面で空売りの買い戻しが想定されること(次項で説明)に加え、企業業績の拡大(最後の項で説明)が確認されているため、日経平均は本格的に上昇に転じると「225のココがPOINT!」では、予想しています。
図1:「悪材料噴出」でも下値を切り上げる日経平均
- ※当社チャートツールをもとに、SBI証券が作成。2015/8/17現在。
史上最高水準の空売りも吸収し、エネルギーを蓄積 |
日経平均株価が下値を次第に切り上げ、高値保ち合いの様相を強める中、東証の空売り比率が過去最高水準に達しています。中国人民銀行が2日目の人民元「切り下げ」を発表した8/12には、39.2%と過去最高水準を記録しました。下の図2では、空売り比率のトレンドを捉えやすくするため5日移動平均で空売り比率を表していますが、やはり過去最高水準近辺を維持しています。
図2から読み取れるように、空売り比率がピークアウトし、減少する過程では株価が上昇しやすいことがわかります。特に空売り比率が1/9のように高水準まで増えた後で減少に転じると、大きな上昇相場になることがあります。
足元の空売り比率は1/9を上回る水準に達していますが、空売りを仕掛けた投資家が予想したようには株価が下がらず、高値圏を維持しています。空売りを仕掛ける投資家が多いと言うことはそれだけ、将来買い戻す必要のあるポジションが増えやすいことを意味します。株式相場は、上昇に転じるキッカケがあれば、意外に大きく上昇する可能性もありそうです。
図2:日経平均が高値圏で過去最高水準の空売り比率
- ※Bloomberg、東証データをもとにSBI証券が作成。東証空売り比率は、売買代金に占める空売り比率を示したもので、図は日次データの5日移動平均をグラフ化したもの。
【ココがPOINT!】第1四半期は「予想」以上の増益〜企業業績を評価し、本格上昇も |
こうした中、一部例外を除き、上場企業の2015/4〜6期決算発表が8/14までに終了しました。左下の表1で示したように、東証に上場する主力企業(3月決算)の営業利益は、9兆468億円と前年同期比22.3%の増益となりました。事前の市場予想(コンセンサス)では同9.2%の増益予想でしたが、それを大幅に上回っています。
なかでも市場の「予想外」だったのは、電力・ガスの大幅な回復です。特に電力会社は、原発の操業停止と高価格の原油・天然ガスの輸入増で収益を圧迫されてきましたが、原油・天然ガス価格の急落で採算が急激に改善しました。また、円安の進展で自動車メーカー等の輸出企業も、その多くが大幅増益になりました。なお、一部メディアの業績集計では、電力・ガスを集計から除いている場合もあり、その場合は実際よりも増益額が過小評価されてしまうことになります。
第1四半期の業績が、市場予想を上振れた企業数は、右下の図3にもあるように全体(市場コンセンサスのある会社)の3分の2弱にも達しています。第1四半期が終了した段階で、業績見通しを上方修正する会社は、想定通り少数となり、2016/3期(通期)の会社予想営業利益も12.7%増にとどまっていますが、市場予想ではより高い増益率を見込んでいます。従って、よほど事業環境が変わらない限り、中間決算の発表段階(10月下旬〜11月中旬)では、業績見通しの上方修正を発表する企業も増えてきそうです。
7/21掲載の「225のココがPOINT!」では、一般的に夏休みが本格化する8月上・中旬の日経平均は冴えない傾向が強いものの、8/20から約1ヵ月程度は、逆に上昇しやすいという傾向をご紹介しました。それは、四半期決算への本格的な評価が始まることが理由のひとつとみられます。前年度に、原油価格下落の負の部分が先に織り込まれたことや、消費増税(2014/4)後の落ち込みに対する反動増があり、もともと今年度は増益率が増幅しやすい年度だと考えられます。株価上昇はここから本格化し、9月にかけ21,000円での活躍に転じる可能性もありそうです。(図4)
表1:東証一部主力銘柄(3月決算)の第1四半期・通期業績
前年度 | 今年度事前 市場予想 |
今年度実績 | |
---|---|---|---|
第1四半期 営業利益(億円・%) |
66,778 | 72,927 9.2% |
90,468 22.3% |
前年度 | 今年度予想 (会社) |
今年度予想 (市場) |
|
---|---|---|---|
通期 8月6日(木) |
245,230 | 276,404 12.7% |
293,982 19.9% |
図3:第1四半期営業利益が市場予想を上回った会社、下回った会社の数・比率
- ※Bloombergデータ、会社公表データをもとにSBI証券が作成。東証一部上場の3月決算(時価総額1千億円以上・金融を除く)で、それぞれ市場コンセンサスの取れる企業だけで集計。
図4:日経平均の予想EPSは中間決算発表時に上昇か
- ※日経平均株価データをもとにSBI証券が作成。
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