前営業日トピックス
東京市場では、神田財務官が為替市場の動向について「高い緊張感を持って注視している」と発言したことを受けて円買いとなり、ドル円・クロス円は軟調な動きとなった。ただ、連日の発言であることから、効果が薄れてきているとの見方や、日経平均株価が序盤から堅調な動きとなり、一時前日比650円超上昇したことから、ドル円・クロス円は底固い動きとなった。その後、欧州時間では再び円売りが優勢となり、ドル円・クロス円は堅調な動きとなった。
米国市場では、米英欧の中銀総裁が追加利上げの可能性に言及した一方、植田日銀総裁は政策の現状維持を示唆したことで、日本と各国の金融政策の違いを意識したドル買い・円売りが優勢となった。その後、円相場について植田総裁が「動向を注意深く監視する」としたことで、介入警戒感が意識されたことから、円買いが優勢になる場面もあった。
米株式市場では、ECBフォーラムでパウエルFRB議長が追加利上げに積極的な姿勢を示したことを受けて、利上げの長期化による米景気後退懸念が高まり、ダウ平均は序盤から軟調な動きとなった。一方、ハイテク株が買われたことからナスダックは底固い動きが続いた。ダウ平均株価は、序盤から軟調な動きとなり、一時前日比170ドル安まで下落した。その後は下げ幅を縮小し、74.08ドル安(-0.22%)で終了。一方、ハイテク株中心のナスダックは、36.08ポイント高(+0.27%)で終了した。
米ドル/円
※出所:FX総合分析チャート10分足
(1)東京市場では、海外時間にドル/円が144円台まで上昇したこともあり、神田財務官が「為替市場の動向を高い緊張感もって注視している」、「過度な動きがあれば適切に対応する」と前日に続き牽制発言をしたことから、ドル円・クロス円は上値の重い動きとなった。ただ、日経平均株価が上昇して始まり、344円高まで上昇したことが下支え要因となった。ドル/円は、序盤の144.07から143.73まで下落、その後144.05まで上昇した。
(2)上昇一服後は再び軟調な動きとなったものの、午後に入り鈴木財務相が「行き過ぎた動きには適切に対応する」と発言したことで円が買われる場面もあったが、連日の複数の高官の発言が続いたことで下値は限定的となった。一方、日経平均株価が上げ幅を拡大し、前日比655円高まで上昇したことを受けて、ドル円・クロス円は底固い動きが続いた。
(3)米国市場では、ECBフォーラムでパウエル議長が「あと2回の利上げが多数派」「連続利上げの可能性を選択肢から排除せず」と発言した一方、植田日銀総裁が「基調的なインフレは目標を下回っている」と発言したことで、日米金融政策の違いを意識したドル買い・円売りが優勢となった。さらに、ラガルドECB総裁、ベイリー英中銀総裁も追加利上げの可能性を示唆したことから、ドル円・クロス円は堅調な動きとなった。その後、円相場について植田総裁が「動向を注意深く監視する」としたことで、介入警戒感が意識されたことや、米長期金利が低下したことから円買いが優勢となった。ドル/円は、序盤の144.11から144.62まで上昇、その後下落に転じて一時144.13まで下落したものの、終盤にかけて再び144.40台まで上昇した。
本日のトピックス
昨晩のECBフォーラムでの主要中銀総裁の発言を受けて、改めて日銀と主要中銀との政策の違いが確認され、金利差拡大を意識した円売りが優勢となった。しかし、円相場について植田総裁は、米英欧中銀の政策を含め、日銀の政策以外のさまざまな要因が影響しているとの見方を示し、動向を注意深く監視するとしたことを受けて、ドル/円が144.60台まで上昇していたこともあり、円買い介入への思惑が意識されて円買いとなる場面もあった。また、インフレの再加速を確信できれば、金融政策転換の根拠になり得ると発言したが、2024年までにとの見方であることから、当面の金利差拡大は明確との見方から再び円が売られる動きとなった。
これらの発言から、ドル円・クロス円の底固い動きが続く可能性が考えられ、ドル/円では前回介入を実施した水準である145円台が一つのポイントとなり、145円台に近付くと介入が過度に意識される展開が続くと見られている。
本日の海外市場では、ユーロ圏やドイツの主要な経済指標の発表や、米国のGDP確報、新規失業保険申請件数、中古住宅販売仮契約の発表が湯尾艇されており、良好な結果ならドルやユーロの押し上げ要因となる可能性も考えられることから、結果に注目したい。
6/29の注目材料
時間 | 国・地域 | 経済指標・イベント | 予想 | 前回 |
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21:30 | 米国 |
新規失業保険申請件数(6/24までの週)
新規失業保険申請件数は、労働省が失業保険を申請した人(失業者)の数を毎週発表する経済指標。毎週(木曜日)発表されるため、雇用情勢の速報性に優れており、雇用統計の先行指標として注目されている。ただ、米国の祝祭日や天候などの影響を受けやすいという点もある。
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26.5万件 | 26.4万件 |
前回は市場予想を上回り、前週から横ばいとなり、2021年10/29までの週以来の高水準が維持された。前週まで4週連続の増加となりなり、高止まりしていることで、労働市場の軟化が続いていることが示された。今回は、前週から小幅増加が予想されており、求人件数の減少もあり、堅調だった労働市場の鈍化傾向が鮮明になるとの見方もあり、増加を見込む向きも多くなっている。 | ||||
23:00 | 米国 |
5月中古住宅販売仮契約(前月比)
中古住宅販売仮契約は、全米不動産業者協会が発表する中古住宅販売の仮契約を指数化したもの。2001年を100として表す。仮契約は通常1-2ヵ月以内に本契約に移行するため、仮契約指数は中古住宅市場の先行指数とされる。
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-0.5% | 0.0% |
前回は市場予想を下回ったものの、昨年9月以来の大幅なマイナスとなった前月から改善した。ただ、高水準の住宅ローン金利と在庫不足が影響して中古住宅市場の軟化が続いていることが示された。今回は、再びマイナスが予想されており、在庫の増加が見られないうちは改善しないと見られている。 |