前営業日トピックス
東京市場では、海外市場の流れを引き継ぎ、序盤から小動きの展開となった。FOMCを控えて様子見ムードが広がる中、日経平均株価が下落して始まったことに反応しドル円・クロス円は上値の重い動きとなった。さらに、五・十日の実需のドル売り・円買い観測もあり、上値の重い動きとなった。その後、FOMCがイールドカーブ・コントロールを導入する可能性があるとの見方が広がっていることを受けて米長期金利が低下となり、ドルは主要通貨に対して軟調な動きとなった。ドル/円は一時107.28まで下落した。さらに、上昇して始まった欧州主要株価指数がマイナス圏まで下落したこともあり、クロス円もやや上値の重い動きとなった。
米国市場では、序盤に発表された米消費者物価指数が予想に反してマイナスとなったことから、ドルはやや上値の重い動きとなった。その後は、FOMCの結果発表を控えて狭いレンジ内の動きが続いた。FOMCでは、政策金利は据え置きとなり、イールドカーブ・コントロールについて触れられていなかったことから、米国債利回りが上昇し、ドル/円も一時107.48まで上昇した。しかし、ゼロ金利政策の継続方針が示されたことを受けて、ドルは一転して下落に転じた。その後、FRB議長が会見でイールドカーブ・コントロールに関して、「今後の理事会で議論を継続する」と発言したことで、米国債利回りは一段の低下となり、ドル/円も106.99まで下落して、5/15以来の安値を付けた。
米株式市場は、まちまちの結果となった。ダウ平均株価は序盤から軟調な動きとなり、334ドル安まで下落したものの、FOMCの結果発表を受けて一時プラス圏まで上昇したものの、282ドル安(-1.04%)で終了した。一方、ハイテク株中心のナスダックは、序盤から堅調な動きが続き66ポイント高(+0.67%)で終了。4営業日続伸となり、3日連続で最高値を更新し、終値ベースでは初めて10000ポイント乗せとなった。
米ドル/円
※出所:FX総合分析チャート10分足
(1)前日の海外市場終盤の底固い動きを引き継ぎ、東京市場でもドル円・クロス円は序盤から底固い動きとなった。ドル/円は序盤に107.87まで上昇したものの、日経平均株価が下落して始まり、一時前日比190円安まで下落したこともあり、ドル円・クロス円は上値の重い動きとなった。さらに、五・十日であることから、仲値公示にかけて実需のドル売り・円買いが観測されたことも圧迫要因となった。
(2)米国時間のFOMCの結果発表を控えて様子見ムードが広がる中、FOMCでイールドカーブ・コントロール(YCC)が導入されるとの見方が広がっていることを背景に、米10年債利回りが0.832%から0.787%まで低下したことから、ドルは主要通貨に対して軟調な動きとなり、ドル/円は一時107.27まで下落した。
(3)欧州市場では、主要株価指数が序盤から上昇して始まったものの、FOMCの結果発表を控えて様子見ムードが強まる中、小動きの展開となった。ただ、米国市場に入り、米長期金利が戻したこともあり、ドル/円は107.45まで上昇した。しかし、米消費者物価指数が予想に反してマイナスとなったことや、米国債利回りが再び低下したことから、ドルはやや上値の重い動きとなり、107.16まで下落した。
(4)下げ一服後は、狭いレンジ内の動きが続いたが、FOMCでFF金利の誘導目標の据え置きが発表され、さらに注目されていたイールドカーブ・コントロールに関しては声明で触れられていなかったことから、米10年債利回りが0.765%から0.800%まで上昇となり、これを受けてドル/円も一時107.48まで上昇した。しかし、ゼロ金利政策を2022年末まで継続する方針が示されたことが嫌気され、ドルは一転して下落に転じた。その後、パウエルFRB議長が会見でイールドカーブ・コントロールに関して、「答えが出ていない」とし、「今後の理事会で議論を継続する」と発言したことで、導入の可能性もあるとの思惑が広がり、米10年債利回りが0.723%まで低下するとともに、ドル/円も106.99まで下落し、5/15以来の安値を付けた。
本日のトピックス
昨晩のFOMCでは、注目されたイールドカーブ・コントロールに関して声明で触れられていなかったことから、マーケットではイールドカーブ・コントロールを導入しないと見て長期金利が上昇して長短金利差が拡大(スティープ化)、ドルも上昇となった。しかし、その後の会見で「答えが出ていない」、「今後の理事会で議論を継続する」と発言したことで、導入への思惑が広がり、長期金利が低下して長短金利差が縮小(フラット化)、ドル/円は106.99まで下落した。
東京市場でもこの流れを受けて、序盤に106.90まで下げ幅を拡大した。当面は、米長期金利が上昇前の水準まで調整される可能性も考えられ、米国の強材料がなければドル/円も上値の重い動きが続く可能性も考えられ、米長期金利の動きとともに注目したい。
本日の米国市場では、新規失業保険申請件数、失業保険継続受給者数の発表が予定されているが、先日発表された米雇用統計の結果のようなインパクトのある改善は期待されておらず、改善のペースの鈍化傾向が指摘されている。米国では、経済活動の再開が進んでいるものの、一部で再雇用を急いでいない傾向があるとの指摘もある。再雇用されても、経済の活動再開がまだ完全ではく、労働時間も限定されるケースもあり、受け取れる失業保険などと比較して判断していることが要因との見方もある。マーケットでは、インパクトのある改善でなければ、反応は限定的と見られている。
6/11の注目材料
時間 | 国・地域 | 経済指標・イベント | 予想 | 前回 |
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21:30 | 米国 |
新規失業保険申請件数(6/6までの週)
新規失業保険申請件数は、労働省が失業保険を申請した人(失業者)の数を毎週発表する経済指標。毎週(木曜日)発表されるため、雇用情勢の速報性に優れており、雇用統計の先行指標として注目されている。ただ、米国の祝祭日や天候などの影響を受けやすいという点もある。
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155.0万件 | 187.7万件 |
前回は9週連続の減少となり、雇用の悪化ペースが鈍化していることが示された。ただ、依然として高い水準が続いており、改善ペースは緩やかとなっている。今回も減少が予想されているものの、改善のペースは依然として鈍いと見られており、マーケットの反応も限定的だろう。 | ||||
21:30 | 米国 |
失業保険継続受給者数(5/30までの週) |
2000.0万人 | 2148.7万人 |
前回は市場予想を上回り、再び前週から増加となった。経済活動の再開が進んでいるものの、一部では再雇用を急いでいない傾向も要因の一つとの見方もある。今回は、前週から減少が予想されているものの、ペースは依然として鈍いと見られている。 | ||||
21:30 | 米国 |
5月生産者物価指数(前月比)
生産者物価指数(PPI=Producer Price Index)は、米国内の販売業者の販売価格を調査し、算出した物価指数。特に、振れ幅の大きい食品とエネルギーを除いたコア指数が重要視されており、消費者物価指数(CPI)と同様にインフレ圧力を測る指標として注目されている。
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0.1% | -1.3% |
前回は予想以上の大幅低下となり、2009年以来の大幅なマイナスとなり、前年比でも2015年11月以来の大幅なマイナスとなった。エネルギーの低下が影響しており、インフレ圧力が弱まっていることが示唆された。今回は、前月比ベースでプラス改善が予想されているものの、前年比ベースや前年比のコア指数は依然としてマイナスが予想されている。 |