前営業日トピックス
欧米で新型コロナウイルスの感染拡大が広がる中、先週末のカナダ中銀に次いでニュージーランド中銀、米FRBが緊急利下げを実施したことを受けて円買いが優勢となり、序盤のドル円・クロス円は軟調な動きとなった。売り一巡後は底固い動きとなり、値を戻したものの、米株価先物市場で株価が大幅下落となったこともあり、上値は限定的だった。午後には、日銀が緊急の金融政策決定会合で金融緩和強化策を決定したことを受けて、日経平均株価が一時上昇したものの、上昇は一時的となり、その後は下落に転じて下げ幅を拡大し、ドル円・クロス円も上値の重い動きとなった。
米国市場では、アジアや欧州の主要株価指数の下落を背景に、リスク回避の動きが強まった流れを引き継ぎ、ドル円・クロス円は序盤から軟調な動きとなった。さらに、序盤に発表されたNY連銀製造業景気指数が大幅低下となったことも圧迫要因となり、ドル/円は一時105.15まで下落した。アジアや欧州の株価下落に続き、米主要株価指数も序盤から大幅下落となる中で、ドルは対欧州通貨やオセアニア通貨に対して上昇したこともあり、ドル/円は106.48まで上昇した。ただ、ダウ平均株価が軒並み大幅下落となったことや、トランプ大統領が新型コロナウイルスの影響で米国がリセッションに向かう可能性を示したことも加わり、ドルの上値は限定的だった。
米株式市場では、ダウ平均株価が序盤から大幅下落となり、終盤には一時3069ドル安まで下落した。安値圏のまま2997ドル安で終了、下げ幅は過去最大を更新し、2017年2月以来約3年1ヵ月ぶりの安値となった。1日の下落率は12.9%に達し、1987年10月のブラックマンデー以来の大きさとなった。一方、ハイテク株中心のナスダックも12.3%下落の970ポイント安で終了した。
米ドル/円
※出所:FX総合分析チャート10分足
(1)オセアニア時間にニュージーランド中銀が0.75%の利下げを、米FRBがFF金利の誘導目標を1.00%の緊急利下げを決定した。さらに、FRBと日銀、ECB、英中銀、カナダ中銀、スイス中銀が、米ドル・スワップ取極に適用される金利を0.25%引き下げに合意したことや、債券買い入れを再開するとした。利下げ決定を受けて、ドル円・クロス円は軟調な動きとなり、ドル/円は前週末のNY市場の終値の108.08から105.73まで下落した。
(2)下げ一服後は、ドル円・クロス円は底固い動きとなり、さらに、時間外取引の米10年債利回りが0.621%から0.729%まで上昇したことも加わり、ドル/円は107.58まで値を戻した。その後、日銀がETFの買入額を12兆円増額するなどの追加緩和を発表したことを好感して、日経平均が350円超の上昇となる場面があったものの、米株価先物市場でダウ先物が1000ポイント超の下落となるなど、日経平均株価も下落に転じて前週末比429円安で終了した。この流れを受けて円買いが優勢となり、ドル/円は106.17まで下落した。
(3)黒田日銀総裁が会見で、主要中銀と協調して米ドル資金供給に万全期すとしたものの、「新型コロナウイルスはすでに日本経済に影響が見られる」、「今回の会合で景気の判断引き下げた」、「新型コロナウイルスの影響は今後も当面続く」との見方を示したこともあり、やや上値の重い動きとなった。その後、欧州主要株価指数が軒並み大幅下落で始まったこともあり、ドル円・クロス円は軟調な動きとなった。米国市場でもアジアや欧州の主要株価指数の下落を背景に、リスク回避の動きが強まった流れを引き継ぎ、ドル円・クロス円は序盤から軟調な動きとなった。さらに、序盤に発表されたニューヨーク連銀製造業景気指数が2009年3月以来の低水準となり、新型コロナウイルスの感染拡大による米国への影響が経済指標に表れ始めたとの見方が広がったことも圧迫要因となり、ドル/円は一時105.15まで下落した。
(4)主要中銀による政策対応にもかかわらず、投資家の不安が払拭されず、米主要株価指数が序盤から大幅下落となった。基準となるS&P500が7%の下落となったことから、サーキットブレーカーが発動して取引が15分間停止された。その中で、ドルは対欧州通貨やオセアニア通貨に対して上昇し、ドル指数が一時3年ぶり高水準に達したこともあり、ドル/円は106.48まで上昇した。ただ、取引開始後も主要株価指数は上値の重い動きが続き、終盤にダウ平均株価が一時3000ドル超の下落となるなど、米主要株価指数が軒並み大幅下落となったことや、トランプ大統領が会見で新型コロナウイルスの感染拡大が7-8月まで続く可能性を指摘したことや、ウイルスの影響で米国がリセッションに向かう可能性を示したことも加わり、ドルの上値は限定的だった。
本日のトピックス
経済を下支えるために米FRBの緊急利下げや、日銀がETF購入枠の拡大などの追加緩和策を発表したが、根本的な原因となる新型コロナウイルスの感染拡大の終息が見通せないことから、世界的に株価が大幅下落となり、本日の日経平均株価も下落して始まったものの、その後大きく反発している。
もはや、新型コロナウイルスの感染拡大を阻止する以外に景気悪化懸念や世界的な株式市場の下落を止める手段はないだろう。そのため、引き続き株価の乱高下は続き、ドル円・クロス円も値動きの荒い動きが続く可能性も考えられる。
一方、昨日発表された3月の米NY連銀製造業景気指数が市場予想を大きく下回る結果となり、2009年3月以来の低水準となった。この結果を受けて、新型コロナウイルスの感染拡大による米国への影響が経済指標に表れ始めたとの懸念も広がっており、昨晩トランプ大統領がリセッションに向かう可能性にも言及しており、指標結果が新たな懸念要因となる可能性も考えられる。
本日米国市場では、小売売上高、鉱工業生産の発表が予定されており、注目が集まっている。ただ、今回の発表が2月分であることから、新型コロナウイルスの感染拡大による影響が色濃く出ない可能性もあるだろう。その中で、特にGDPの算出に用いられる小売売上高のコア指数の結果には注目したい。
3/17の注目材料
時間 | 国・地域 | 経済指標・イベント | 予想 | 前回 |
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21:30 | 米国 |
2月小売売上高(前月比)
小売売上高は、米国商務省が百貨店やスーパーの売上調査を基にして発表している指標である。個人消費はGDPの約70%を占めており、小売売上高は個人消費の動向を見る上で重要な経済指標の一つであり、米国経済に与える影響も大きいため注目されている。
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0.2% | 0.3% |
前回は市場予想を下回ったものの、12月から若干の上昇となり、4ヵ月連続のプラスとなった。ガソリン価格の下落が押し上げに寄与したが、コア指標は軟化した。今回は、伸び幅の縮小が予想されているが、新型コロナウイルスの影響が出ているのか注目され、特に、GDPの算出に用いられるコア指数の結果には注目したい。 | ||||
22:15 | 米国 |
2月鉱工業生産(前月比)
鉱工業生産は、鉱工業関連の生産動向を指数化したものであり、2002年を100として数値が算出され前月比で発表される。GDPに占める鉱工業部門の割合が約20%程度であることから重要な経済指標である。
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0.4% | -0.3% |
前回は市場予想を下回ったものの、12月の結果からは上昇した。ボーイング737MAXの生産が停止されてことが影響した。今回は、前回の反動で上昇が予想されているが、引き続き影響が残るとの指摘があることや、新型コロナウイルスの影響が下押し要因となるとの見方もあり、2月の結果に影響が出ているのか注目されている。 | ||||
23:00 | 米国 |
1月JOLT労働調査[求人件数]
JOLTS 労働調査(求人件数)は、米労働統計局が求人状況を測定するために実施する調査で、小売業や製造業など各業種の雇用データをもとに算出する統計。
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640.1万件 | 642.3万件 |
前回は、市場予想を大幅に下回る結果となり、2017年12月以来の低水準となった。また、2019年通年でもマイナスとなり、2009年以来のマイナスとなった。採用状況が軟化していることが影響している可能性も指摘されている。今回は、さらなる減少が予想されており、結果が注目される。 | ||||
23:00 | 米国 |
3月NAHB住宅市場指数
NAHB住宅市場指数は、全米住宅建築業者協会(NAHB)が加盟業者を対象にした一戸建て住宅の販売状況調査を基にした指数。50が判断の基準となり、50を下回ると住宅建設業者の多くが現況を「悪い」とみていることを示すことから、住宅市場の先行指標となる。
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74 | 74 |
前回は、市場予想を下回り、2ヵ月連続の低下となった。現況指数、先行指数、見込み客足指数いずれも1ポイントずつの低下となったことが影響した。ただ、ローン金利の低下を背景に、依然として1999年以来の高水準域で推移している。引き続き、楽観的な見方を背景に、高水準を維持すると見られている。 |