前営業日トピックス
東京市場では、前日の海外市場の流れを受けて、ドル円・クロス円は序盤から上値の重い展開で始まった。新規材料に乏しい中、米国債利回りが上昇したことや、国内輸入企業などの実需のドル買い・円売り観測もあり、ドル/円は底固い動きも見られた。その後、香港港政府トップの行政長官が、中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」を正式に撤回するとの報道を受けて、ドル円・クロス円は一段の上昇となり、香港株も大幅上昇となった。その後、香港の「逃亡犯条例」の改正案が正式に撤回されたことで、ドル円・クロス円は底固い動きが続いた。さらに、英議会下院が合意なきEU離脱を阻止する法案を可決したことも加わったことで投資家心理が改善し、ドル円・クロス円は一段の上昇となった。特に、ポンドは、円やドルに対して8/27以来の高値を付けた。一方、カナダ中銀が政策金利の据え置きを決定し、声明がハト派的ではなかったことが好感され、カナダ・ドルは対円で8/19以来の高値を付けた。
米ドル/円
※出所:FX総合分析チャート10分足
(1)8月のISM製造業景気指数が2016年8月以来の50割れとなったことを受けて下落した海外市場の流れを引き継ぎ、ドル円・クロス円は軟調な展開で始まった。ドル/円は、一時105.83まで下落したたが、その後は米10年債利回りが1.4489%から1.4741%まで上昇したこともあり、ドル円は106.07まで上昇した。なお、人民元の基準値は1ドル=7.0878元に設定され、前日に比べ若干元高となった。
(2)香港行政長官が、中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」を撤回するとの報道を受けて、ドル円・クロス円は堅調な動きとなった。報道を受けて、米10年債利回りは1.4977%まで上昇したこともドルの押し上げに寄与し、ドル/円は106.30まで上昇した。一方、香港ハンセン指数は、報道を好感して一時前日比4%以上の上昇となった。
(3)米国市場では、アジア市場からの堅調な流れを引き継ぎ、香港で続いた混乱が緩和に向かうとの期待感を背景にリスク回避の動きが和らぎ、ドル円・クロス円は底固い動きが続いた。さらに、英議会下院で合意なきEU離脱を阻止する法案が可決したことや、イタリアの政局不安が後退したことも加わったことで投資家心理が改善し、ドル円・クロス円は一段の上昇となった。さらに、ベージュブック(地区連銀経済報告)では、米景気は7月と8月の大部分において、緩慢なペースで拡大したと報告されたこともドルの下支え要因となり、ドル/円は106.44まで上昇した。一方、カナダ中銀が政策金利の据え置きを決定したが、声明が予想ほどハト派に傾かなかったことが好感され、カナダ・ドルは上昇となり、対円で8/19以来の高値を付けた。
本日のトピックス
香港の逃亡犯条例、EU離脱に絡む英議会の動き、イタリアの政局など、懸念要因が払拭したことを受けて、世界的に株価上昇となり、リスク回避の動きが後退したが、この流れが続くのか注目したい。特に、解散総選挙などの動きも出ており、英国議会の動きには注目したい。また、欧州時間には、ドイツの製造業受注の発表が予定されており、ドイツの経済指標の悪化が続くようなら、ユーロ圏経済に対する懸念が強まる可能性も考えられる。
米国市場では、ADP雇用統計やISM非製造業景況指数の発表が予定されており、先に発表されたISM製造業景況指数が悪化したことで、週末の雇用統計で製造業の雇用に影響が出るとの見方も広がっている。そのため、民間の統計であるADP雇用統計、ISM非製造業景況指数の結果が注目される。
9/5の注目材料
時間 | 国・地域 | 経済指標・イベント | 予想 | 前回 |
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21:15 | 米国 |
8月ADP雇用統計
ADP雇用統計は、民間の給与計算代行サービス会社であるADP(Automatic Data Processing)社のデータを用いて、マクロエコノミック・アドバイザーズ社が発表している雇用統計。2200万人の支払い給与の動向に基づき算出、通常米国雇用統計が発表される2営業日前に発表されるため、米国雇用統計の結果を予想する上でよく参考にされる。
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14.6万人 | 15.6万人 |
前回は市場予想を上回り、5月の減少から改善が続き、雇用の堅調さが示された。特に、大企業の雇用の伸びが押し上げ要因となった。今回は、前回から若干伸び幅の低下が予想されているが、大幅な低下とならなければ、影響は限定的と見られている。 | ||||
23:00 | 米国 |
8月ISM非製造業景況指数
ISM非製造業景気指数は、全米供給管理協会(Institute for Supply Management=ISM)が発表する米国の非製造業(サービス業)の景況感を示す指数。管理責任者に対するアンケートを集計した指数であり、50が景気の拡大・後退の判断基準であり、50を上回れば景気拡大、下回れば景気後退と判断する。
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54.0 | 53.7 |
前回は、市場予想を下回り、2016年8月以来の低水準となった。新規受注が2ヵ月連続の減速となり、3年ぶりの低水準となったことが影響した。今回は、若干の改善が予想されているが、先に発表された製造業の悪化もあり、改善の兆しが見られない場合には相場への影響も考えられる。 |