前営業日トピックス
オセアニア時間の朝方、米国とメキシコの貿易問題に関して、トランプ米大統領が「メキシコとの協議は進展しているが、十分ではない」としたことで、協議の先行き不透明感が強まり、リスク回避の動きが意識され、ドル円・クロス円は軟調な動きとなった。東京市場では、日経平均株価序盤から堅調な動きとなったことから、底固い動きとなったものの、日経平均株価が終盤に下げに転じたことや、中国株、米株価先物が軟調な動きとなったことから、ドル円・クロス円は上値の重い動きとなった。さらに米国債利回りが低下したことも影響した。
米国市場では、序盤に発表された米貿易収支で、対中、対日赤字が増加したことから、今後の通商交渉を巡る先行き懸念が意識され、序盤のドルは上値の重い動きとなった。その後、米政権がメキシコに対する関税発動の延期を検討しているとの報道を受けて、投資家のリスク回避の動きが和らぎ、相対的に安全な通貨とされる円を売ってドルを買う動きが優勢となった。一方、ECB理事会では、フォワードガイダンスが変更されたものの、ドラギ総裁の会見で具体的に利下げに関する言及がなかったこともあり、予想ほどハト派的ではなかったと受け止められ、ユーロはドルや円に対して堅調な動きとなった。
米ドル/円
※出所:FX総合分析チャート10分足
(1)ワシントンで行われていた米国とメキシコの高官協議が合意に至らなかったとの報道や、トランプ米大統領が「メキシコとの協議は進展しているが、十分ではない」と発言したことを受けて、ドル円・クロス円は序盤から軟調な動きとなった。一方、格付け会社のフィッチがメキシコの格付けを「BBB」に引き下げたことや、同じくムーディーズが見通しを「ネガティブ」に変更したことを受けて、メキシコ・ペソは主要通貨に対して下落した。その後は、日経平均株価が堅調な動きとなったこともあり、ドル円・クロス円は底固い動きとなった。
(2)底固い動きが続いた日経平均株価が終盤にマイナス圏まで下落したことや、米10年債利回りが2.1313%から2.1036%まで低下したことが材料視され、ドル売り・円買いが優勢となり、ドル円・クロス円は軟調な動きとなった。
(3)ECB理事会では、政策金利を“2020年上期末まで維持する”方針が示され、従来の“2019年末まで”から見通しが延期されたものの、ドラギ総裁の会見で具体的に利下げに関する言及がなかったこともあり、予想ほどハト派的ではなかったと受け止められ、ユーロはドルや円に対して堅調な動きとなった。ユーロは対ドルで4/7以来の高値を付けた。一方、米貿易収支で、対中赤字が前月比+29.7%となったことや、対日赤字が+9.6%と2008年4月以来11年ぶりの高水準となったことを受けて、今後の通商交渉を巡る先行き懸念が意識され、ドルは上値の重い動きとなった。
(4)米政権がメキシコに対する関税発動の延期を検討しているとの報道を受けて、投資家のリスク回避の動きが和らぎ、相対的に安全な通貨とされる円を売ってドルを買う動きが優勢となった。 さらに、米10年債利回りが2.0898%から2.1347%まで上昇したことも影響し、ドル/円は108.56まで上昇し、1週間ぶりの高値を付けた。
本日のトピックス
米国市場では、雇用統計の発表が予定されている。失業率は、前回市場予想を下回り、49年ぶりの低水準となった。非農業部門雇用者数も3ヵ月ぶりの高い伸びとなり、労働市場の好調さが示されているが、引き続き好調が維持されるのか注目したい。ただ、先に発表されたADP雇用統計では、雇用者数の伸びが2010年3月以来9年2ヵ月ぶりの小幅な増加に悪化した。5月の米ISM非製造業景況指数の雇用指数は、昨年10月以来7ヵ月ぶりの高水準となるなど、まちまちの結果となったことが予想を難しくしている。前回、やや冴えない結果となった賃金などの改善に加え、雇用者数の極端な伸び幅の縮小がなければ、ドル下支え要因となる可能性も考えられる。
また、土・日にかけてG20財務相・中央銀行総裁会議が予定されており、このタイミング合わせてムニューシン米財務長官と麻生財務相との会談が実施され、「為替条項などについて議論される可能性も」と報じられたことから、週明けの動きに影響する可能性もあり、会談の内容には注目したい。
6/7の注目材料
時間 | 国・地域 | 経済指標・イベント | 予想 | 前回 |
---|---|---|---|---|
21:30 | 米国 |
5月非農業部門雇用者数
非農業部門に属する事業者の給与支払い帳簿をもとに集計された雇用者数。農業以外の産業で働く雇用者であり、経営者や自営業者は含まれない。
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+18.0万人 | +26.3万人 |
前回は、非農業部門雇用者数が市場予想を上回る結果となり、3ヵ月ぶりの高い伸びとなった。 今回は、前回からの反動で伸び幅の縮小が予想されている。一方、失業率は、前回49年ぶりの低水準を更新したが、平均時給は前月比・前年比ともに市場予想を下回る結果となった。今回失業率は横ばい、平均時給は前月比が増加、前年比は横ばいが予想されており、全体的に労働市場の好調さが維持されるのか注目される。 |
本日のトレードポイント
※出所:FX総合分析チャート 日足
ドル/円は、107円台で底固い動きが続いているが、上値もやや重い展開が続いています。ここから底固い動きとなり、値を戻すのか、一段の下げとなるのか注目です。
相場の方向性を示すとされる一目均衡表の基準線は、本日109.736と前日から横ばいですが、週明け10日には109.387、11日には109.333、12日には109.245まで低下します(107.817を下抜ける場合には一段と低下、方向性に変化なし)。そのため、週明けの動きには注目です。また、日柄サイクルでは、本日7日または、週明け10日が短期ボトムと予測できることから、合わせて注目です。
上値のポイント
(1)108.600(2)108.869(3)109.024?
下値のポイント
(1)107.815(2)107.455(3)107.298
気まぐれ投資コラム
テクニカル分析 RSI(Relative Strength Index) その3
RSIは、往来相場(上げ下げ繰り返す動き)の時は非常に有効ですが、ある一定の日柄(ローソク足の数[RSIの場合、パラメーター±5本程度])以上の上昇や下降が続く相場の時などは、有効な売買シグナルが出難いという弱点があります。
チャート上の@のポイントでは、売られ過ぎゾーンを抜けたところで買いポジションを取ったと仮定します。そして、Aのポイントでは、買われ過ぎを示す75%に到達し、買いポジションを手仕舞い。ここまでは成功と言っていいでしょう。しかし、その後上昇が続く場合には、すでに買われ過ぎゾーンに達していることから、指数は高値圏でもみあいとなり、有効なシグナルが出難くなります。
【売買のタイミングのヒント】
@で保有した買いポジションをAで手仕舞ったが、その後上昇が続く場合には、なぜが損をした気分になります。含み益に余裕がある場合、Aで半分など2分割、3分割して段階的に手仕舞いするのも一つの方法です。ただ、上昇が一時的で下落してしまう場合には、最終ラインを決めておき、そこに達した場合に残りのポジションを手仕舞いするようにする。
一方、75%のラインを下回り、買われ過ぎゾーンを抜けたことから売りポジションを取ったと仮定します。シグナル通り下落となればよいですが、上昇が続いてしまう場合には損失が拡大します。そのため、最終ラインを決めておき、そこに達した場合にはロスカットするようにします。この場合、最終ラインは直近の高値のAや、高値を付ける前のボトムであるBなどが目安となります。
必ずしもきれいな形のシグナルが出ない場合があるので、その指標の特徴と弱点を把握することが重要です。
※出所:FX総合分析チャート