前営業日トピックス
東京市場では、米中貿易協議の先行きを見極めたいとの思惑もあり、投資家の慎重姿勢が見られる中、序盤から小動きの展開となった。その中で、小高く始まった日経平均株価がマイナス圏まで下落したことから、ドル円・クロス円は序盤から上値の重い動きとなった。その後、株価がプラス圏まで値を戻したものの、やや上値の重い動きが続いた。そして、イタリア副首相が財政規律を巡り、イタリアとEUの見解の相違を改めて指摘したことを受けて、リスク回避の動きが意識され、特にユーロが売られた。
米国市場では、序盤に発表された4月の米小売売上高、4月鉱工業生産がともに予想外のマイナスとなったことが嫌気され、ドル円・クロス円は軟調な動きとなった。しかし、米政権が自動車関税の判断を最大6ヵ月先送りする可能性があるとの報道を受けて、投資家のリスク回避の動きが後退し、欧米の株価が反発したことから、ドル円・クロス円も堅調な動きとなった。その後は終盤まで底固い動きが続いた。
米ドル/円
※出所:FX総合分析チャート10分足
(1)海外市場で株高となったことで、東京市場でも株高が予想されたことや、商業決済が集中しやすい五・十日であることから、実需のドル買いフローの期待もあり、序盤は底固い動きとなった。日経平均株価が小高く始まったものの、その後下落に転じてマイナス圏に沈んだことから、ドル円・クロス円は軟調な動きとなった。
(2)下げ一服後は、日経平均株価が再びプラス圏まで上昇したことを受けて、底固い動きとなった。しかし、中国の小売売上高の伸び率が2003年5月以来の低水準となるなど、軒並み低下したことも影響し、ドル円・クロス円は小幅ながら軟調な動きとなった。ただ、その後は日経平均株価がプラス圏で推移したこともあり、底固い動きが続いた。
(3)欧州主要株価が序盤から軟調な動きとなったことや、イタリアの成長と雇用を後押しするためならEUの財政規律に違反するのはやむないとの見方をサルビーニ副首相が改めて指摘し、財政規律を巡るイタリアとEUの見解指摘したことを受けて、ユーロが下落となり、リスク回避が意識された。また、依然として米中通商問題の先行き不透明感が払拭できないことも影響した。
(4)4月の米小売売上高、4月鉱工業生産がともに予想外のマイナスとなったことが嫌気され、ドル円・クロス円は軟調な動きとなった。しかし、政府高官の話として、米政権が自動車関税の判断を最大6ヵ月先送りする可能性があるとの報道を受けて、下落していた欧米の株価が反発するなど、投資家のリスク回避の動きが後退したことから、ドル円・クロス円も堅調な動きとなった。更に、ムニューシン米財務長官が中国との貿易関係改善に向けて真剣に協議していると発言したことも好感された。
本日のトピックス
注目されていた自動車関税に関しては、米政権が判断を最大6ヵ月先送りするとの報道が流れ、これが好感される結果となり、ドルは底固い動きが続いている。また、不透明感の残る米中通商問題に関しては、財務長官が協議継続をアピールしたことも下支え要因となっている。
ここまで、米輸入物価、米小売売上高、鉱工業生産と重要度の高い経済指標が予想を下回る結果となっており、米景気に対する懸念も意識されている。本日の米国市場では、4月の米住宅着工件数、建設許可件数、5月フィラデルフィア連銀景況指数の発表が予定されており、いずれも前回は市場予想を下回る結果となったものの、今回は改善が見込まれており、結果が注目される。
ドル/円は、底固いが上値も重いという展開が続いており、週明けからの振れ幅も徐々に小さくなっていることから、今後の方向性に注目したい。
5/16の注目材料
時間 | 国・地域 | 経済指標・イベント | 予想 | 前回 |
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21:30 | 米国 |
4月住宅着工件数
住宅着工件数は、建設が着工された民間住宅の着工件数を集計した経済指標で、家電製品などの個人消費との相関性も高いことから、景気動向を見る上で重要な指標である。また、天候の影響を受けやすいという面もある。
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120.9万件 | 113.9万件 |
前回は、市場予想を大きく下回り、2017年5月以来の低水準となった。一戸建て住宅が2ヵ月連続の低下となり、2016年9月以来の低水準に落ち込んだことが影響した。今回は、住宅ローン金利の低下と堅調な賃金の伸びを背景に、増加が予想されている。特に、主力の一戸建てがどこまで改善しているのかが注目される。ただ、着工件数の先行指標となる許可件数は、ここまで3ヵ月連続で減少していることもあり、大きな改善につながらない可能性も考えられる。 | ||||
21:30 | 米国 |
5月フィラデルフィア連銀景況指数
フィラデルフィア連銀製造業景況指数は、フィラデルフィア連銀の管轄であるニュージャージー、ペンシルバニア、デラウエアの製造業の景況感などを指数化した経済指標で、最も早く公表される製造業の景況指数の一つである。製造業に関連した新規受注・雇用・在庫など、指数化された数値が発表される。数値はゼロが景況の判断の基準となる。
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9.0 | 8.5 |
前回は、市場予想を下回る結果となり、直近の6ヵ月平均(11.2)、3ヵ月平均(8.9)を下回る結果となった。新規受注や雇用が伸びたものの、販売価格、出荷が低下した。また、6ヵ月先の予想では、景況指数など半数以上が低下、特に仕入価格、雇用数が大きく低下しており、先行きの不透明感も高まっている。そのため、先行き指数などにも注目したい。 |
本日のトレードポイント
※出所:FX総合分析チャート 日足
ドル/円は、一目均衡表で三役逆転の売りシグナルとなって下落したものの、ここにきて底固い動きが続いている。ここから一段の下げとなるのか、一旦値を戻すのか注目したい。
チャート上では、112.40の高値を付けて以降の17日間のうち、15日で前日の高値を下回る結果となっており、上回ったのは1日、横ばいが1日となっている。そして、今週に入り上値を超えないものの、下値も切り上がっている。特に、ローソク足では実態が小さくヒゲの長い形(コマ足)、投資家心理では迷いの形となっている。このことから、上限のレンジをどちら側に抜けるのかがポイントとなることから、相場の方向性に注目したい。
オシレーターのMACDでは、両線の乖離幅が縮小傾向にあることから、現状では上向き方向に分があるか?乖離幅の動きにも注目したい。