前営業日トピックス
東京市場では、海外市場の堅調な流れが一服し、序盤は小動きの展開となった。その後、日経平均株価やアジアの主要株価の上昇、時間外取引での米長期金利の上昇も加わり、ドル円・クロス円は堅調な動きとなった。しかし、日経平均の引け後から香港、中国株が下落に転じ、下げ幅を拡大したことから、ドル円・クロス円は軟調な動きとなった。
そして、英中銀が政策金利の据え置きを決定したが、利上げを主張した委員が前回の2名から3名に増えたことから、次回8月の利上げ期待が高まり、ポンドは大半の主要通貨に対して上昇した。 NY市場では、米中貿易摩擦激化への懸念を背景に欧米の主要株価が下落し、投資家のリスク回避姿勢が強まったことから、相対的に安全な通貨とされる円を買いドルを売る動きが優勢となった。また、序盤に発表されたフィラデルフィア連銀景況指数が市場予想を大きく下回ったことに加え、米長期金利の低下もドルの圧迫要因となった。
米ドル/円
※出所:FX総合分析チャート10分足
(1)パウエルFRB議長や黒田日銀総裁など主要中銀総裁が参加した討論会で、パウエルFRB議長が利上げを継続する根拠は強いと発言し、日米の金利差拡大が意識され、円売り・ドル買いが広がったものの、東京市場ではその流れが一服し、材料出尽くしでドル円・クロス円は小動きの展開が続いた。
(2)日経平均株価が上昇したことから、ドル円・クロス円は堅調な動きとなったものの、米中貿易摩擦激化への懸念を背景に香港・中国株が下落に転じたことや、欧州主要株価が軟調な動きとなったことから、ドル円・クロス円は軟調な動きとなった。
(3)英中銀は、市場の予想通り政策金利を0.50%で据え置くことを決定した。今回、マカファティー、ソーンダースに加え、ホールデン委員が0.25%の利上げを主張したことを受けて、次回8月の利上げ期待が高まり、ポンドは大半の主要通貨に対して上昇した。金利先物市場では、8月の利上げ予想確率が前日の48%から67%まで上昇。
(4)米国市場序盤に発表されたフィラデルフィア連銀景況指数が市場予想を大きく下回ったことに加え、米中貿易摩擦激化への懸念を背景に欧米株価が下落したことで、投資家のリスク回避姿勢が強まり、相対的に安全な通貨とされる円を買う動きが優勢となった。また、米長期金利の低下もドルの圧迫要因となり、クロス円も上値の重い動きとなった。
本日のトピックス
欧州市場では、ドイツやユーロ圏の製造業・サービス業の経済指標の発表が予定されており、予想の範囲内なら反応は限定的だが、市場予想と乖離する場合には動きが出る可能性もあり、一応注目したい。
米国市場では、主要な経済指標の発表がないものの、貿易問題に関する報道や要人発言には引き続き警戒したい。また、OPEC総会が予定されており、今回は増産を主張する加盟国も出てきているため、協議の結果が原油価格に影響を与える可能性もある。その場合には株式市場や為替市場にも波及する可能性も考えられる。また、6/24にはトルコの大統領選・議会選挙が予定されており、結果が週明けのマーケットに大きく影響する可能性も考えられることから、十分に注意したい。
気まぐれ投資コラム
6/24のトルコ大統領・議会選挙、今後のトルコを左右する可能性も
6/24にトルコの大統領選と議会選挙が行なわれる予定であり、エルドアン大統領が再選するのかが注目されています。特に、大統領の権限が拡大してから初めての選挙となることから、注目が高まっています。
2016年7月にクーデター未遂事件がありましたが、クーデターの再発防止のため、2017年5月に大統領の権限を強化する憲法改正の是非を問う国民投票が行われ、首相職の廃止、大統領が国家元首と行政の長を兼務、国会の解散権、司法の人事権など大幅な権限の強化が決定しました。それ以来エルドアン大統領が権力を強化し、独裁的な体制を強めてきたと見られています。そして、大統領の任期に関して、2期10年の任期は不変ですが、改憲後の大統領は旧憲法下の任期と合算しないとなっており、エルドアン大統領再選した場合でもあと10年大統領職にとどまることが可能になります。また、新大統領には、今回からさらなる権力を持つことが決定されています。そのため、エルドアン大統領の事実上の独裁が続くのかを問う選挙と位置付ける見方もあります。
大統領選に立候補しているのは、エルドアン大統領、最大野党・共和人民党(CHP)のインジェ氏、新党・優良党(IYI)で元内相のアクシェネル氏、クルド系政党・国民民主主義党(HDP)の前共同党首で拘束中のデミルタシュ氏ら6人。6/24の大統領選では、過半数を獲得すれば大統領が決定しますが、過半数の票を獲得した候補がいない場合には、上位2名で7/8に決選投票となります。
最新の各世論調査では、エルドアン氏が50%前後、インジェ氏が20〜30%台前半、アクシェネル氏が10〜15%、デミルタシュ氏が10%前後となっており、エルドアン大統領の支持率がやや低下していることから、6/24の大統領選挙では第1回投票で勝利を決めるのは難しいとの見方が出ています。そして、決選投票となれば、野党共闘が実現する可能性も指摘されています。
この選挙の結果はトルコリラにも大きく影響する可能性が考えられます。トルコは4月下旬頃からインフレと通貨安が加速しており、一時は22.14と最安値をつけています。エルドアン大統領は景気対策のために利上げには消極的で、利上げを主張する閣僚や中銀に対して圧力をかけてきました。ただ、5月にはトルコ中銀は大統領反対を押し切って計3回利上げを行ない、リラ安を食い止めています。
大統領選でエルドアン大統領が再選される場合には、追加利上げが難しくなることだけではなく、大統領の権限を行使して金利を引き下げる可能性も考えられます。現に、さらに5年に任期を務めることになれば、金利を下げると公言していることから、選挙結果がトルコリラ相場に影響する可能性も十分に考えられます。
※出所:データを基にSBILMが作成