前営業日トピックス
海外市場の流れを引き継ぎ、序盤のドル円・クロス円は堅調な動きとなった。しかし、上昇して始まった日経平均株価が上げ幅を縮小したことや、トランプ米大統領の保護主義的な通商政策に対する投資家の警戒感を背景に、やや上値の重い動きが続いた。
海外市場では、ECB理事会後のドラギ総裁の会見で、政策金利について、相当期間現行水準に留まるとの見方を示したことや、債券購入プログラムの拡大の可能性に言及したことが影響し、ユーロは軟調な動きとなった。また、ドルは週末の米雇用統計や、米国の関税に関する大統領の署名を控えて小動きの展開が続いた。そして、トランプ米大統領が鉄鋼・アルミ輸入関税の文書に署名したことを受けて、ドルは堅調な動きとなった。
米ドル/円

※出所:FX総合分析チャート10分足
(1)前日の米雇用関連の経済指標が良好な結果となったことを受けて、ドルを買う動きが先行した。その後は、上昇して始まった日経平均株価が上げ幅を縮小したことを受けて、やや上値の重い動きとなった。
(2)午後に入り、日経平均株価の上昇幅の縮小が加速したことや、トランプ米大統領の保護主義的な通商政策に対する投資家の警戒感も加わり、上値の重い動きが続いた。ただ、トランプ米大統領の鉄鋼・アルミ関税に関する計画の発表・署名を控えて様子見ムードも影響し、やや値動きは限定的だった。
(3)米長期金利の上昇などもあり、ドルは堅調な動きとなったものの、やや上値は限定的だった。ECBは、いわゆる『緩和バイアス』の文言を削除したことから、ユーロは一時上昇したものの、ドラギECB総裁が会見で、債券購入終了後も『相当期間』政策金利が現行水準にとどまるとの見方を示したことや、ECBは必要に応じて債券購入プログラムを拡大できると強調したたことが嫌気され、ユーロはドルや円に対して軟調な動きとなった。一方、英当局者らは、EU離脱で年内の合意はないと予想しているとの一部報道が影響し、ポンドは主要通貨に対して軟調な動きとなった。
(4)ドルは、トランプ米大統領の鉄鋼輸入関税の署名や、週末の米雇用統計の発表を控えて様子見ムードも強まり、小動きの展開が続いた。ただ、鉄鋼・アルミ輸入関税の文書に署名し、メキシコとカナダを関税適用除外としたことや、同盟国に適用除外の余地を残したことを受けて、貿易戦争への懸念がやや和らぎ、ドルは堅調な動きとなった。
本日のトピックス
米国市場では、米雇用統計の発表が予定されている。完全雇用に近いことから、雇用者数の伸びに対する注目はそれほど高くないものの、初動の動きは市場予想を上回るのか、下回るのかで反応するケースが多いことから注目したい。その後は、賃金の伸びなどが影響する可能性が考えられる。特に、前回の米雇用統計では、賃金の伸びが前年比ベースで2009/5/31以来の高い伸びとなったことを受けて、3月FOMCでの利上げ期待が高まった経緯がある。そして、先月に続き賃金の堅調な上昇が確認されれば、年4回の利上げとの見方が強まる可能性もあるだろう。
3/9の注目材料
時間 | 国・地域 | 経済指標・イベント | 予想 | 前回 |
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22:30 | 米国 |
2月非農業部門雇用者数 ![]()
非農業部門に属する事業者の給与支払い帳簿をもとに集計された雇用者数。農業以外の産業で働く雇用者であり、経営者や自営業者は含まれない。
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+20.5万人 | +20.0万人 |
前回は、市場予想を上回り、2ヵ月ぶりに+20万人台となった。完全雇用に近いことから、雇用者数の伸びに対するマーケットの反応は限定的となっている。今回は+20.5万人が予想されており、市場予想を上回るのかどうかに注目したい。 | ||||
22:30 | 米国 |
2月平均時給(前年比) |
2.8% | 2.9% |
前回は、2009/5/31以来の高い伸びとなったことで、米国のインフレの上昇圧力が増しているとの見方か広がり、3月のFOMCでの利上げ期待が高まった。今回は、前回からの低下が予想されているが、大きく伸び幅が低下しなければ、懸念要因にはならないだろう。 |
気まぐれ投資コラム
今後のトランプ政権の運営に影響するか?
7日、コーン米NEC(国家経済会議)委員長の突然の辞任発表を受けて、投資家のリスク回避の動きが強まり、ドル円・クロス円は報道後に軟調な動きとなりました。トランプ政権発足後、ここまで閣僚の辞任は10人となります。トランプ政権にとっては、重要な人物とされていたこともあり、インパクトは大きいものとなりました。
コーン米NEC委員長は、NAFTA(北米自由貿易協定)廃止から再協議に向けて動いたことや、米税制改革法案の議会通過にも動いたとも言われており、トランプ大統領のブレーキ役との見方もありました。また、トランプ政権の経済政策を主導していた可能性も指摘されており、後任が決まるまでは、経済の不確実性が高まる可能性も考えられます。
そして、中間選挙の上下両院候補者を決める予備選挙が米テキサス州で始まるなど、11月の選挙に向けた争いがスタートしていることから、中間選挙への影響も懸念されます。また、米朝会談開催への期待も膨らんでおり、トランプ政権の基盤が揺らぐことになれば、北朝鮮との交渉を進める上での優位性にも影響する可能性があるかもしれません。

※出所:SBILM作成