米中貿易戦争
トランプ大統領はSNSに「他国が我が国に対して用いてきた不公平な貿易収支や非金銭的関税障壁から、誰も逃れることはできない。特に我が国を最悪に扱っている中国は絶対に逃れることはできない」と投稿。また、11日に「スマートフォンなど電子機器の関税対象除外についても免除ではない。単に異なる関税の分類に移動しただけである」との考えを明らかにしました。さらに「半導体と電子機器サプライチェーン全体に目を向け、他国、特に中国のような敵対的な貿易国の人質にはならない。中国は米国民を軽視するため、あらゆる手段を講じるだろう」と述べるなど米中間の貿易問題は一向に収まる気配が見えないのが現状です。
一説によると、トランプ大統領は中国・習近平国家主席からの電話を待っていると言われ、自ら習近平氏に電話を掛けるような「弱腰」を見せる態度は決して行わない意向だと伝えられています。これに対し、中国も自ら動くことはせず、米国が勝手に仕掛けた関税にひるむことはなく、相手側が弱るまで徹底して戦う姿勢を曲げることはないとされます。こうした中、習近平国家主席は今週14~18日の日程で今回の貿易戦争に対し、対米代替先として中国製品の輸出拡大を求めベトナム、マレーシア、カンボジアを訪問する予定で、米国に圧力をかける意向の表れと見られます。

出所:SBIリクイディティ・マーケット
また、中国は4月11日に対米報復関税を125%に引き上げましたが、仮に米国がさらに(現状145%の対中関税)引き上げたとしても、これ以上は無視するとしました。こうした中、中国は9日に米国企業6社をブラックリストに指定したほか、12社に輸出規制を行い、国民に対し米国への渡航や留学を控えるよう勧告。さらに10日には米国制作の映画輸入本数を減らすことを決めています。さらに中国で通商政策を担う王文涛商務相が、EUのシェフチョビッチ欧州委員やマレーシア通商担当相と相次いでオンライン会談を実施。7月下旬にEU首脳らが訪中し、習近平国家主席と会談する方向で調整を進めるなど、中国とEUは国際的な責任を果たし経済のグローバル化の流れと国際貿易環境を共同で守り、米国の一方的な威圧行為にともに反対すべきとの方針を確認するなど、EUや東南アジアを巻き込みながら対米圧力を強めています。
赤澤経済再生担当相、米財務長官らと関税交渉
赤澤経済再生担当相は4月16~18日の日程で訪米し、17日にベッセント財務長官やUSTR(米通商代表部)グリア代表との関税を巡る交渉が行われます。

出所:SBIリクイディティ・マーケット
日本は中国を上回る米国債最大の保有国ですが、1997年6月に当時の橋本龍太郎首相がコロンビア大学での講演後、記者との質疑応答で「米国債を売りたい衝動に駆られることがある」と冗談交じりにコメントしたことを受け、その日のNYダウが大幅下落となった経緯があり、関税交渉にこうした神経質なトピックスに触れることはないと思われます。
赤澤大臣は、日本の国益にとって何が効果的かを考えながら交渉に臨む意向を示していますが、非関税障壁や為替が議題に取り上げられる可能性もあり、交渉分野の範囲を絞り込めるのかが焦点の一つとして注目されます。米中貿易戦争の激化とともに、米株式・債券市場が不安定な動きを続ける中、米国からの農産物輸入拡大や米国の天然ガス開発への積極的投資、さらにはソフトバンクやトヨタなど日本企業による米国内での投資拡大など米国側の理解を求め、米政権による対日関税措置見直しに向けた糸口を見出すことができるか注目されます。