23日のトルコ中銀政策委員会
- ※出所:SBIリクイディティ・マーケット
6月3日に発表された5月消費者物価指数(CPI)は前年比+75.5%と教育関連(+104.8%)や飲食・宿泊(+92.9%)をはじめサービス価格の上昇が影響し、2022年11月以来の高インフレとなりました。昨年5月以降、トルコ中銀は金融引き締めに積極的に動いてきたものの、インフレの収束にはつながらず、依然高止まりの状況にあります。
7月3日に発表された6月CPIは前年比+71.6%と5月から鈍化に転じたことを受け、シムシェキ財務相は「ディスインフレのプロセスが始まった」との声明を発表しました。一方、民間の独立調査機関ENAグループが集計した物価指数は前年比+113.1%と政府統計から大幅に上方乖離したことが明らかになったほか、およそ8,500万人のトルコ総人口の16.5%を占める大都市イスタンブール(1,400万人)の小売物価指数も前年比+82.1%と高水準となり、実態以上に高インフレの状況にあるとみられています。
本日23日にトルコ中銀政策委員会が開かれますが、前回6月27日の会合では4会合連続で政策金利を50.0%に据え置いたほか、7月からの最低賃金引上げを行わないとしてインフレ抑制策を継続する方針を示しました。また、エルドアン大統領はこれまでの金融政策によって10-12月期にインフレは好ましい状況になるとして年内の利下げの可能性に言及したほか、トルコ中銀も年末時点のインフレ率を38%と想定しました。
一方、カラハン中銀総裁は「月次インフレの基調的なトレンドが有意かつ持続的に低下するまで金融政策の引き締めを継続する」と強調するなど今後もタカ派的姿勢を続けるとの考えを明らかにしました。実際、6月のCPIでは不動産賃貸/交通費/通信費/飲食・宿泊などサービス価格を中心にインフレの高止まりが続いており、想定通りにインフレが鈍化するか懐疑的な声も聞かれています。
また、通貨安が進んでいる影響から、外国人観光客が今年1-5月期に前年同期比+12%超増加の1,500万人とインバウンドによる物価押し上げに加え、更なる値上げに備え新車など高額商品に対する駆け込み需要が見られています。少なくとも、6月に鈍化したインフレ率が一時的に留まる可能性もあるため、少なくとも8月5日に発表される7月のインフレ率を確認する必要があるとして23日の政策委員会でも政策金利を50.0%に据え置くと見られています。
トルコ円(週足チャートより)
- ※出所:SBIリクイディティ・マーケット
トルコ円は週足・転換線(4円82銭)や2018年11月29日の高値(22円05銭)と21年2月16日の高値(15円26銭)を結んだライン1)のほか、雲の下限(5円06銭)が上値抵抗線として意識されています。
市場の信頼回復につながる構造改革を進めることができるか?
トルコでは2021年後半から通貨安・高インフレに見舞われ、国民の生活防衛策として賃上げを行ったほか、リラ下落による損失を財政補填するリラ建て預金保護制度(KKM)の運営支出、さらに昨年2月にトルコ南東部での大地震に対する復興資金のために補正予算を編成しました。こうした歳出増による財政負担軽減のため、付加価値税(VAT)を2%引き上げましたが、昨年の財政赤字は対GDP比5.5%まで拡大したほか、今年も5%程度の財政赤字になると予想されています。
一方、年後半から25年以降にかけて昨年2月の大震災に対する復興資金が縮小するほか、緊縮財政策を進めているため財政赤字が縮小すると見込まれています。また、毎年作成される経済やマクロ分析を踏まえて昨年9月に発表した今後3年間の計画を記した中長期プログラム(MTP)では25年にプライマリーバランスを黒字化し対GDP比財政赤字を3.0%、26年には2.6%に縮小すると記されています。
トルコの公的債務について、政府債務の約6割が外貨建てのため、リラ安進行による債務上振れリスクはあるものの、債務比率は他の新興国との比較でも高くはなく、短期的には問題ない水準を維持できるとされています。一方、昨年のトルコ経済は個人消費に牽引され昨年通年のGDPは前年比+4.5%の成長を達成しました。今後インフレが鈍化すれば、実質金利の上昇によって個人消費の減速も想定されることから、今年は緩やかな成長が見込まれ、IMFも今年から向こう3年間は3%の成長を予想しています。トルコは安定的な財務運営のために金融政策と財政政策の両面から市場の信認回復につなげることが必要不可欠で、MTPに沿って公共投資の更なる削減や増税など痛みを伴う構造改革に取り組むことができるかが課題とされています。こうした改革を実行し、市場からの信頼回復につながるかがトルコリラの本格的な反発に向けた課題となっています。
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