米5月雇用統計を振り返る
- ※出所:SBIリクイディティ・マーケット
先週末発表の米5月雇用統計では、非農業部門就業者数は前月比27万2000人増と市場予想を上回り、直近3ヵ月の月平均もおよそ25万人増と労働市場の堅調を確認する内容となりました。中でもレジャー・ホスピタリティー部門で就業者数が4.2万人増と直近12ヵ月の月平均(3.5万人増)を上回ったほか、飲食サービス部門の就業者数も前月比2.5万人増となっており、これから本格的な夏のレジャーシーズンを迎えることを考えると増加傾向が続くと見られます。
さらに、時間給賃金も前年比+4.1%、前月比+0.4%と4月(+4.0%/+0.2%)から上昇したことも考え合わせると、堅調な労働市場がGDP全体のおよそ7割を占める個人消費を支え、企業収益の拡大につながるとすれば、米経済が想定上に減速するとは考え難いとFRBの9月利下げ開始観測を後退させる内容となりました。
- ※出所:SBIリクイディティ・マーケット
一方で、労働参加率が62.5%と4月(62.7%)から低下し、失業率が28ヵ月ぶりに4.0%へ上昇しましたが、先週4日に発表された4月JOLT求人件数は805.9万件と2ヵ月連続で減少し、2021年2月(752.6万件)以来の水準となっており、こうした求人件数の減少が先々の米労働市場の逼迫緩和につながるのか、あるいは求人件数が底入れし、増加に転じるか今後のデータを待つことになりそうです。
- ※出所:SBIリクイディティ・マーケット
今回の雇用統計を受けて9月利下げ開始確率が55%から50%へ低下しましたが、現時点で年内2回の利下げ観測が、今後のデータ次第ではあるものの、1回もしくは利下げ開始は来年に後ずれするとの見方も出ています。
米5月消費者物価指数(CPI)
- ※出所:SBIリクイディティ・マーケット
12日発表の米5月CPIは4月と変わらずの前年比+3.4%、コア指数は前年比+3.5%と21年4月以来の水準へ鈍化すると予想されています。しかし、雇用統計の就業者数や時間給賃金の増加を受けて、今夏のレジャーシーズンに向けて宿泊/航空運賃をはじめサービス価格が高止まりする可能性もあることから、仮に5月の数値が予想から下振れたとしてもFRBのインフレ目標(+2.0%)を大きく上回っていることから市場の反応は限定的に留まると見込まれます。
日米金融政策会合
- ※出所:SBIリクイディティ・マーケット
4月30日-5月1日の前回FOMCでは「労働市場が弱ければ利下げの可能性」との認識を示した一方で、「過去数ヵ月間、2%のインフレ目標に向けて更なる進展はみられなかった」、「インフレが下げらなければ現在の金利を長期間維持する」ことも議論し、「インフレ鈍化について、依然と比べ自信がなくなっている」としていましたが、先週末発表の5月雇用統計を受けて、こうした考えはより強くなっている可能性があり、今回のFOMCでも利下げに慎重な姿勢を維持するものと思われます。
また、パウエル議長の会見では、「インフレ率が持続可能なペースで目標の2%へ移行していると十分に確証を得るためには、以前想定していたよりも時間がかかる」との見解を示しましたが、同じような発言が繰り返されるかもしれません。また、四半期毎に示される政策金利やインフレ見通しが前回3月時点から上方修正されると予想されており、市場の関心はその幅がどの程度になるかにあります。
加えて、前回のFOMCで6月から債券の月間償還上限を600億ドルから250億ドルに減額、すなわち(量的引き締めの緩和)を決めたことから、こうした効果を検証する時間が必要であることを理由の一つとして具体的な利下げ開始時期に言及しないと見られます。
また、FOMC後の13-14日には日銀金融政策決定会合が控えています。市場では国債買入の減額の行方が注目されますが、先週末7日の国債買い入れオペでは、購入予定額を全ての年限で前回から据え置いたことがドル円の下値支援につながりました。また、6月6日に植田日銀総裁が参議院金融財政委員会での答弁で「国債買入れを減額することは適当」と述べたものの、「政策変更後の市場を確認している」として債券市場の流動性を注視する姿勢を示唆しました。加えて、7日に会見した中村審議委員も利上げは時期尚早、国債買入の減額についても経済にダメージを与えない環境が整う必要があるとの考えを明らかにしました。こうした発言を踏まえると、具体的な買入れ減額について示すことはせず、むしろ7月の次回会合への地ならし的な位置づけに留まると思われます。
想定されるようにFOMCが予想以上にタカ派、日銀が予想以上にハト派となれば、ドル円は週末に向けて158円台を試すなど上振れに警戒が必要かもしれません。
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