米3月雇用統計
- ※出所:SBIリクイディティ・マーケット
先週末発表の米3月雇用統計では非農業部門就業者数が市場予想を上回る前月比30.3万人増と2月(27.0万人増)から伸びが加速、また。昨年12月以降4ヵ月連続で20万人増となりました。中でもヘルスケア(7.23万人増)のほか、レジャー・接客業の雇用が前月比4.9万人増加するなどコロナ禍前の2020年2月の水準を回復し景気循環的部門でも雇用の拡大が確認されました。また、失業率も3.8%と2月(3.9%)から改善し26ヵ月連続で4.0%を下回る完全雇用の状態が続いています。
また、時間給賃金は前月比+0.3%と前月(+0.2%)から改善した一方、前年比では+4.1%と2月(+4.3%)から鈍化しました。賃金上昇率の鈍化については、1)移民の増加により、比較的安価な労働供給により賃金の上昇が抑制されていること 2)勤務形態の柔軟化が進み、労働市場に回帰する人が増加基調にあるなどの要因が影響していると見られ、労働参加率が昨年11月以来の62.7%へ上昇したことにも裏付けられています。しかし、週間総賃金は確実に増加しており、米GDPのおよそ7割を占める個人消費が鈍化するとは考え難く米経済は緩やかな減速(ソフトランディング)もしくは減速しない(ノーランディング)といった米経済の先行きに対する楽観的な見方を支援する材料となりました。
- ※出所:SBIリクイディティ・マーケット
もし、このまま労働参加率が上昇すれば、雇用主が雇用を増やしても労働市場は過熱しない状況が続くこととなり、米経済は堅調なままインフレが鈍化するかもしれません。インフレの鈍化が続くことになればFRBは6月に利下げを決定する根拠となりますが、今回の雇用統計を受けてボウマンFRB理事は「利下げの時期には至っていない」との考えを明らかにし、ダラス連銀ローガン総裁も「利下げを協議するのは時期尚早」と述べましたが、こうした複数のFRB高官の見解を踏まえると、4月30‐5月1日の次回FOMCでは政策金利を据え置くと思われ、5月、6月発表の4月/5月分の雇用統計や消費者物価指数を見極めた上で6月11-12日のFOMCで利下げを決めるか、あるいは現状維持とするか判断し、さらに3月FOMCで示された年内3回の利下げを2回、あるいはそれ以下に修正することになるか、今後6月FOMCに向けて発表されるインフレ指標がこれまで以上に注目されます。
米3月消費者物価指数
- ※出所:SBIリクイディティ・マーケット
雇用統計を受けた週明けの米金利先物市場では6月の利下げ確率が48%、さらに年内の3回の利下げ確率も49%といずれも発表前の約53%/約55%から低下しており、消費者物価指数(CPI)を受けてこうした確率がどのように変化するか注目されます。
今後、1月、2月にかけて確認されたディスインフレの進展の停滞が続けば、6月のFOMCで年内3回の利下げを再検討する必要性が高まることになりそうです。
また、先週末のNY原油先物価格は中東情勢を巡る緊迫を背景に6日続伸し、昨年10月以来の86.91ドルで取引を終えました。今回発表される3月CPIではこうしたエネルギー価格の上昇が反映されないものの、4月のCPIではエネルギー価格や航空運賃などに明らかに影響すると予想されます。また、雇用統計では週間総賃金の増加も確認されており、サービス価格が前年比+5.0%を上回る状況が続くか注目されます。
円安牽制が効力を発揮するか?
先週末5日に植田日銀総裁は「物価に影響するなら為替も利上げ材料」「2%目標達成に向けた確度さらに高まれば利上げ検討」などと述べ、ドル円は一時的に150円81銭まで下落しましたが、雇用統計を受けて151円75銭まで上昇し、週明け8日の東京市場では151円81銭まで(正午現在)円安が進んでいます。神田財務官や鈴木財務相が「円安の背景は明らかに投機」として再三にわたり「あらゆる手段を排除せずに適切な行動を行う準備は常にできている」と円安を牽制しています。
しかし、「インフレについて低下が確認するまでは利下げは想定しない」とするパウエルFRB議長はじめ複数のFRB幹部が早期利下げに慎重な見解を示している一方で、3月の会合でマイナス金利を解除し緩和政策から正常化へ舵を切った日銀幹部からは「緩和的金融政策が継続する」と早期利上げに慎重な見解が示される中、日米金利差は縮小し難いとの見方が円安につながっていることは明らかであり、今回のCPIの結果次第では心理的節目をされる152円00銭を突破し一段と円安が進む可能性もあり、その結果と反応が注目されます。
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