米国のインフレは緩やかな低下
日銀の物価安定目標を巡り、先週29日に高田日銀審議委員がその達成に前向きな見解を示したのに対し、植田日銀総裁は、ブラジルのサンパウロで開催のG20後の記者会見(日本時間3月1日朝)で達成に慎重な姿勢を示し、日銀の金融政策正常化の観測がやや後退したことからドル円は一時150円72銭まで上昇。しかし、米2月ISM製造業景気指数が予想以上に悪化したことから10年債利回りは4.29%台から4.17%台へ低下する中、150円06銭へ反落し150円11銭で先週末の取引を終えました。
- ※出所:SBIリクイディティ・マーケット
雇用指数は45.9と昨年7月(44.4)以来の水準へ低下したほか、新規受注も49.2と1月から低下したものの、昨年10‐12月の平均(47.0)を上回ったほか、インフレ指標の価格指数は小幅な低下に留まりました。さらに、ミシガン大が発表した2月消費者信頼感指数(確報値)は76.9と速報値(79.6)、1月(79.0)から低下した一方、1年先期待インフレ率は3.0%と1月(2.9%)から上昇しました。
また、今秋の大統領選を控えて、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が行った最新の世論調査では、バイデン大統領の任期の半分以上に相当する過去2年間に関し、米経済が改善したと回答した有権者が約31%と昨年12月の調査(21%)から上昇したほか、家計が正しい方向に向かっているとの回答も43%と12月(34%)から上昇。また、物価上昇が緩やかになっていることを示すデータが十分あるにもかかわらず、有権者の約75%が物価上昇のペースが世帯収入の増加ペースを上回っているとして、インフレが依然高止まりしているとの認識を示していることが明らかになりました。
米2月雇用統計
- ※出所:SBIリクイディティ・マーケット
8日に発表される米2月雇用統計は失業率こそ1月から横這いが見込まれるものの、就業者数、時間給賃金(前月比/前年比)ともに1月から労働需給逼迫の勢いが鈍化すると予想されています。
1 月の雇用統計の就業者数は予想を上回る伸びを確認しましたが、ここ数年は1月の就業者数が上振れし易い残存季節性(季節調整が適切に行われていないこと)の影響が指摘されています。また、業種別ではヘルスケア・政府部門が就業者数の伸びの多くを占める状況が続いており、幅広い業種で雇用増が拡大している状況ではないこと、さらに、平均労働時間は減少したほか、パートタイマーが増えるなど雇用環境は緩やかながらも悪化の兆候があり、2月の雇用統計でもこうした点にも注目する必要があります。
- ※出所:SBIリクイディティ・マーケット
最近の複数のFRB幹部による金融政策についての発言からは、インフレ抑制に重点を置きつつも景気とのバランスを重視し、単月の経済指標の振れに過度に反応しないとしつつ、データ次第との考えを基本としています。そのため、こうした考え方を大きく変更されるほどの悪化にならない限り、3月19-20日のFOMCで具体的な利下げ時期への言及はないと思われます。
5日発表の東京都区部2月消費者物価指数
- ※出所:SBIリクイディティ・マーケット
先週末に一部通信社が政府がデフレ脱却を表明する検討に入ったと報じる中、5日発表の東京都区部2月の消費者物価指数が注目されます。さらに、7日には中川日銀審議委員の会見が予定されているほか、今週の参院予算委員会で植田日銀総裁の発言があるかもしれません。
前述の通り、8日の米2月雇用統計、さらに来週12日発表の米2月消費者物価指数が大幅な悪化(鈍化)とならない限り、現状6月11‐12日の利下げ開始観測が4月30‐5月1日に前倒しされることはないと思われます。それだけに、ドル円は3月18‐19日の日銀政策決定会合を前にマイナス金利解除など金融政策正常化に向けた思惑が高まれば先週29日の安値(149円21銭)を試す可能性もあるかもしれません。
先週、150円台後半で神田財務官が急速な円安進行に牽制発言を行っていること、さらにFRBは単月の指標の振れに過度に反応せず、データ次第(継続的な)とのスタンスを示しているだけに2月13日の高値(150円89銭)を上抜けるほど予想以上に強い米労働市場の逼迫やインフレの高止まりを示す内容とならなければドル円の下押し圧力に注意が必要です。
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