米10月雇用統計

- ※出所:SBIリクイディティ・マーケット

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就業者数は15.0万人増と市場予想(18.0万人増)及び9月改定値(29.7万人増)を下回ったものの、全米自動車労働組合(UAW)に賃金交渉を巡るストライキにより賃金未払いとなった一部労働者が失業者にカウントされたことが影響したとされます。しかし、UAWのストライキは労使間交渉を経て暫定合意しており、11月の雇用統計ではこうした影響が取り除かれること、さらに年末商戦に向けてネット販売などで人材確保に動くことも想定されます。
そのため、米労働市場は逼迫状態が解消されつつあるものの、大幅な悪化には至らないとの楽観的な見通しもあり、労働市場の底堅さは、新規失業保険申請件数や企業人員削減数が低位に留まるなど複数の指標にも裏付けられています。また、およそ2週間前に5.0%台へ上昇した米10年債利回りも一時9月下旬以来の4.48%台へ低下。FRBが12月12‐13日の次回FOMCで政策金利を引き上げる確率は10.0%程度へ低下しています。こうした基調が続くことになれば企業のコスト負担増の緩和、さらに収益増への期待とともに労働市場の安定に寄与すると推察されます。
米経済は依然堅調

- ※出所:SBIリクイディティ・マーケット
昨年11月の失業率は3.7%(その後改定され3.6%)だったにもかかわらず、昨年12月のFOMCで示された今年10-12月期の失業率は4.4〜4.7%と大幅な失業率の悪化を予想。
また、成長率見通しも0.4〜1.0%とし、インフレの高止まりとともに金利上昇が続く影響から景気後退を想定していたと推察されます。
さらに、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が昨年10月に実施したエコノミスト調査では、2023年末時点の失業率の予想値は平均4.7%として、1年以内に景気後退に陥る確率を63%と見込んでいました。しかし、今回の失業率は9月FOMCで示された年末時点の失業率予想の上限に留まっているほか、先月時点の調査で示された1年以内の景気後退確率は48%へ低下しており、米経済の先行きも引き続き強いとの楽観的な見通しがあります。
まだ来週14日に発表される10月消費者物価指数を見極める必要がありますが、今回の平均時給も前年比+4.1%と2021年6月(+3.7%)以来の低水準へと鈍化したとはいえ、当時の状況(対前年比消費者物価指数(=インフレ率:5.4%)と異なり、 9月時点の賃金上昇率(+4.3%へ上方修正)はインフレ率(+3.7%)を上回っています。

- ※出所:SBIリクイディティ・マーケット
また、今年に入ってから就業者数が240万人近く増えたにもかかわらずインフレ率は鈍化し、国内総生産(GDP)はエコノミストの予想をはるかに上回るペースで拡大しています。一方でFRBによるこれまでの利上げの企業活動への影響が労働市場のさらなる減速をもたらす可能性、あるいは、インフレ率が再び上昇してFRBに追加引き締めを促す可能性もあります。加えて中東情勢を巡る先行き不透明感のほか、17日に期限を迎える「つなぎ予算」の再延長を巡る米議会での民主・共和党の攻防次第では政府系機関が閉鎖に追い込まれる可能性など米長期金利が再び上昇する材料もあります。しかし、米経済が本格的な景気後退に陥るとの懸念は大幅に後退しているため、FRBが政策金利を据え置いたとしても金融緩和はかなり先になると見られるほか、来年の大統領選に向けて景気後退を避けるべく対応策を期待する声も聞かれます。
これに対し、日本の新発10年債利回りは先週の日銀金融政策決定会合前に0.955%へ上昇したものの一時的な動きに留まりました。また、日銀はYCCに関し、7月時点の「0.5%を目途に上限1.0%」から「1.0%を目途」へ修正しましたが、柔軟な運用に変化がないと見られ、政策会合の結果発表後の利回り曲線(イールドカーブ)は10年債利回りが1.0%を超えるような動きには至らず、落ち着きを取り戻しつつあります。
さらに、植田日銀総裁は必要に応じて追加緩和の用意があるとしたこと、実質賃金が低下基調にあり、脱デフレの象徴ともいえるマイナスの解除は来年4月以降になるとの見方が有力視されています。そうした中、日米金融政策を巡る方向性の違いという観点から、6日午後の植田日銀総裁の会見と9日(日本時間10日、午前4時)のIMF総会でのパウエルFRB議長の講演が注目されます。
ドル円は日足・転換線(150円25銭)が基準線(149円50銭)を上回っている状況が続く限り、雲の上限(147円87銭)を目指す動きにはならず、底堅い値動きを続けると見られます。
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