IMFによる景気見通し
先週の日米欧各国中銀による金融政策の発表を終え、今後の為替市場の行方を占う上で9月以降の各国の金融政策の行方が焦点となります。こうした中、7月25日にIMFが最新の世界および主要各国の世界経済成長率見通しを発表。。米債務上限問題が解決し、また3月の米国やスイスの銀行部門の混乱は両国の強力な対応により、金融部門の混乱に関する当面のリスクは抑制されていると指摘しています。そして、今年の世界経済成長率見通しを4月時点の2.8%から3.0%へ上方修正したものの、コロナ禍前の成長率(2000〜2019年平均:3.8%)を取り戻すには時間がかかるとし、1)インフレの高止まり 2)中国経済の緩慢な景気回復 3)地政学的分断化の進行などをリスク要因として挙げ、依然として下振れリスクがあるとの認識を示しました。
- ※出所:SBIリクイディティ・マーケット
米7月雇用統計に向けて
IMFは、米国について、コロナ禍期に消費者が蓄積した過剰貯蓄の大半を既に使い果たしていることを考えれば、FRBによるこれまでおよび今後の更なる利上げによって個人消費の伸びが持続する見込みはないと指摘。実際、7月20日にコンファレンスボードが発表した6月の米景気先行指数は前月比-0.7%と15ヵ月連続で低下し、2007‐09年の景気後退期以来最長となりました。さらにコンファレンスボードは、物価上昇や金融引き締めに加え、政府支出の削減などにより成長が鈍化するリスクを指摘するとともに、米経済が7‐9月期から2024年1‐3月期にかけて景気後退に陥る可能性を警戒しています。
そのほか、先週24日にS&Pグローバルが発表した米7月製造業PMIが6月から改善したものの3ヵ月連続で好不況の節目とされる50.0を下回り、サービス業PMI/総合PMIも、いずれも2月から6ヵ月連続で50.0を上回る52.4/52.0となったものの、2ヵ月連続で伸びが鈍化。サービス部門の数値は海外顧客による需要増によるもので、米国内の需要は低迷し、製造業も落ち込んだ状況にあるとして、ここでも年内の景気後退のリスクがあると指摘。
- ※出所:米統計局/商務省
一方、0.25%の利上げを決めた先週のFOMCでパウエル議長は「FRB委員の予測では、年後半からの成長鈍化が目立つものの、直近の経済の回復力を考えると、もはや景気後退は予想していない」との考えを明らかにしており、コンファレンスボードやS&Pグローバルの見通しとは違い米経済はソフトランディングに落ち着くとの楽観的な見通しを示しています。
こうした中、9月FOMCを前に8月下旬に予定されているパウエル議長のジャクソンホール(カンザスシティー連銀経済シンポジウム)での講演で金融政策の具体的な方向性を示す可能性があるだけに、8月4日に発表される米7月雇用統計や10日発表の米7月消費者物価指数が注目されます。
- ※出所:米労働省
先週のFOMCでパウエル議長は「6月の消費者物価指数は軟化したものの、単月のみであり、今後のデータ次第で9月は利上げも現状維持の可能性も両方あり得る」との考えを示しており、ジャクソンホールでの講演前最後の雇用統計として注目されます。
また、先週の日銀金融政策決定会合では、長期金利の変動幅について「±0.5%程度」を「目途」としたうえで、10年債を指定した利回りで無制限に買い入れる「指し値オペ」の買い入れ利回りを0.5%から1.0%へ修正。また、展望リポートで示された2024年度と25年度の物価見通しは2.0%を下回る水準とし、金融緩和策の大枠に変化はないとしました。さらに、植田総裁がYCCの運用見直しについて「政策の正常化へ歩み出すという動きではない」と発言。こうしたことも材料視され、先週末の海外市場でドル円は141円18銭まで上昇、その流れを受けて、週明けの東京市場では、午前9時の140円70銭を下値に正午前には141円75銭まで上昇する堅調な値動きを続けています。(7月31日正午時点)
- ※出所:SBIリクイディティ・マーケット
3月24日の安値(129円64銭)と7月14日の安値(137円25銭)を結んだライン(1)を下回ることなく、日足・雲の上限(141円13銭)や基準線(141円15銭)を下値支持線として7月21日の高値(141円95銭)を回復するか、雇用統計の結果とそれに対する反応が注目されます。
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