其の壱 就業者数を巡る季節調整の影響は?
- ※出所:SBIリクイディティ・マーケット
米国では6月初旬から8月下旬まで3ヵ月近い夏休みとなり、9月から新学期が開始されます。
そのため、6月から7月にかけて臨時職員など教育関連の雇用が減少し、9月に増加する傾向があり、米労働省はこうした点に配慮して、6月、7月の政府系教育関連の数値を引き上げ、9月に引き下げる季節調整を行うとされます。
実際、政府系雇用では5月から7月にかけて5.0万人前後の雇用が示されているのに対し、8月から3月にかけて減少傾向にあることが確認されます。実際、昨年6月雇用統計(速報値)では就業者数が85.0万人増と市場予想を大きく上回りましたが、政府系雇用者数が5月(6.7万人増)から18.8万人増と大幅に増加しました。その後7月、8月の発表で修正されましたが、金融市場は発表時の数値に反応するだけに注意が必要かもしれません。
其の弐 時間給賃金(前年比)低下はインフレのピークアウトの示唆につながるか?
- ※出所:SBIリクイディティ・マーケット
パウエルFRB議長は、1)6月FOMC後の会見 2)上下両院での議会証言 3)先週のECBフォーラムでいずれも「インフレの鈍化を確認するまで、景気減速に多少の犠牲を払いつつもインフレ抑制を最優先する姿勢」に言及。そのほか、ボウマンFRB理事や複数の地区連銀総裁からも7月の0.75%が適切であるとの積極的な金融引き締めが必要であるとの考えが聞かれています。こうした中、6月雇用統計の時間給賃金(前年比)は昨年12月以来の+5.0%と3月(5.6%)をピークに3ヵ月連続で低下すると予想されています。
6月24日に発表された米6月ミシガン大消費者景況指数(確報値)50.0と速報値(50.2)から下方修正されたほか、1年先と5年先の期待インフレ率も+3.1%速報値(+3.3%)から低下。6月のFOMCで0.75%の利上げを決めた根拠の一つとなった期待インフレが低下したことに続き、6月30日に発表された5月個人消費支出(PCE)、さらにPCEコアデフレーターの予想を下回っており、今回の時間給賃金(前年比)が予想通り低下することになれば、コストプッシュインフレに翳りが見られることとなり、ディマンドプルインフレへの警戒が和らぐことにつながるか注目されます。さらに、7月26-27日のFOMCに向けて来週7月13日に発表される米6月消費者物価指数への注目度が一段と増すことになります。また、同日発表される米地区連銀経済報告(ベージュブック)にインフレ見通しに対する変化が見られることになるか注目されます。
其の参 ドル円の上昇に限界説? 来週12‐13日のイエレン財務長官の来日に影響?
仮に米6月雇用統計が予想を大きく下回った場合、金融引き締めの影響により、堅調に推移してきた米労働市場に翳りが見られるとの懸念が高まるかもしれません。さらに、時間給賃金の低下によるインフレのピークアウトへの警戒が高まった場合、米長期金利の低下につながりかねず、ドル円の上昇に一服感が見られるか注目されます。
一方、堅調な労働市場が確認された場合でも来週12-13日にはイエレン財務長官の来日を控え、鈴木財務相との会談を控えて円安牽制への思惑が円安進行にブレーキを掛ける可能性もあり、戻り売りが優勢となるかもしれません。4月に鈴木財務相が訪米した際、イエレン財務長官と為替相場について話し合いが行われた経緯がありますが、今回の来日で鈴木財務相のほか、黒田日銀総裁との会談が行われる可能性(現在は未定)など、来週以降のイベントへの影響も含め、雇用統計への反応が注目されます。
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