ウクライナ情勢を巡るEUのエネルギー調達コスト負担増
天然ガスの約4割をロシアからの輸入に依存するEUは、3月25日に米国からの液化天然ガス(LNG)輸入を増やすことで合意しております。同時に再生可能エネルギー導入を加速する方針を明らかにしました。米国産LNGの供給量は2022年中に150億立方メートルに留まり、昨年EUがロシアから輸入したLNGは1,550億立方メートルと米国からの供給増で賄えるのはロシアからの輸入量の僅か10%程度に留まることになります。
さらに、EU各地の輸入基地で貯蔵後に気化してパイプラインで送らないといけないこと、さらに輸入するための専用船コスト増も含めると、EUのLNG調達コストはロシア産からのパイプラインでの調達と比べコスト増につながります。
ウクライナ情勢の長期化懸念のほか、仮に停戦協議に進展が見られた場合でも、対ロシア制裁の緩和や解除には相当の時間を要することが想定されることから、EUのエネルギーコスト負担増とともに物価上昇や景気下押し圧力が継続すると思われます。
複数のECB幹部から年内利上げに前向きな見方が示され、ドイツでも金利上昇が明確になる中、変動利付債を発行している欧州の電力会社のコスト負担増により、再生エネルギーへの投資が当初計画通り進まないと見られるだけに、化石燃料に依存せざるを得ない状況は当面続くと見られます。
先週30日に発表されたドイツ3月消費者物価指数は前年比+7.3%となったほか、4月1日発表のユーロ圏3月消費者物価指数も前年比+7.5%まで上昇するなど、ウクライナ情勢の影響が顕著に表れています。
- ※出所:SBIリクイディティ・マーケット
3月10日のECB理事会では資産購入プログラム(APP)の縮小を加速させ、第3四半期にも終了させる意向を示した一方、物価見通しの変更や、インフレ率が目標(2.0%)と整合しない場合には、計画を変更する可能性に言及しております。加えて、ラガルドECB総裁は、30日に、「短期的にインフレ上昇と成長鈍化が見込まれること」「ウクライナ情勢が成長の重大なリスクとなっている」と発言しております。金利調整は段階的に行うと述べるなど、利上げについての見解も示したほか、複数のECB高官からも、年内利上げを支持する発言が相次ぎました。ECBは、3月の理事会でパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の下での資産買入れを終了し、4月にはAPPの下での資産買入を一時増額するものの、5月からはそれも段階的に縮小するとしました。
こうした中、ウクライナ情勢の影響もあり、今週7日に公表されるECB理事会議事要旨、さらに来週14日のECB理事会で景気見通しやスタグフレーションへの懸念に関して、どのような見解が示されるか注目されます。内容次第では再び1ユーロ1.1000ドルを下回る一段安となるかもしれません。
豪ドルの堅調は続く?
- ※出所:SBIリクイディティ・マーケット
豪ドルはウクライナ情勢を巡る欧米各国を中心にした対ロシア制裁の影響によるエネルギー価格の高騰を受け3月7日に1豪ドル0.7441ドルへ上昇後、14日の中国・深圳での感染拡大防止に向けたロックダウンの影響から原油価格の下落とともに15日に0.7165ドルへ反落しております。しかし、こうした影響は一時的に留まり、EUによるロシア産原油禁輸措置の検討のほか、サウジアラビアの石油精製施設の攻撃の影響によるエネルギー価格の反発を受け、先週28日には0.7540ドルへ上昇し、その後も0.74ドル台後半から0.75ドル台前半での堅調な値動きを継続しています。こうした中、明日5日の豪中銀政策委員会が注目されます。
前回、3月1日の豪中銀政策委員会の声明で、ウクライナ情勢を巡り、世界経済の新たな不確実性を指摘。資源価格の上昇やサプライチェーンの問題などとともにインフレが急速に加速していると指摘。そうした状況においても個人消費や労働市場の回復を評価した一方、賃金はコロナ前の歴史的な低い水準にあるとの見解に変化は見られず、豪中銀が利上げの条件としている消費者物価指数が、前年比+2.0%〜3.0%の目標の範囲内に、持続的に収まっていると結論付けるのは時期尚早と慎重な見方を示しました。
しかし、3月11日の講演で豪中銀ロウ総裁は「資源価格の高騰やサプライチェーンの混乱の動向により、インフレ目標に近づきつつあり、今年中に金利が上昇する可能性が高く、資金の借り手は金利上昇に備えることが妥当」との考えを明らかにしました。明日の中銀政策委員会で早期利上げにより前向きな表現が示されるか注目されます。また、4月27日に発表される1-3月期消費者物価指数に向けて、ウクライナ情勢の影響から強めの結果が予想されることに言及があるか注目されます。
- ※出所:SBIリクイディティ・マーケット
・2月4日の高値(1.6225豪ドル)と3月15日の高値(1.5328豪ドル)を結んだライン①
・3月31日の高値(1.4942豪ドル)を起点に真横に引いたライン②
ライン①(現状:1.4883豪ドル)やライン②(1.4942豪ドル)を上抜けることができるか上値メドとして注目される一方、これらを回復できないまま、下落基調が続いた場合、3月7日の安値(1.4563豪ドル)や3月28日の安値(1.4536豪ドル)で下げ止まるか下値メドとして注目しております。
- ※出所:SBIリクイディティ・マーケット
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