リスク回避の円買い・・・過去のこと?
- ※出所:SBIリクイディティ・マーケット
2/24、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻からしばらくの間、115円台を中心に膠着した値動きを継続。3/4発表の米2月雇用統計でも115円台前半からの上値が重く、114円台後半で取引を終えていました。
しかし、ウクライナ情勢の長期化による商品市況の高騰が当面続くとの観測が高まり、3/8に発表された日本1月経常収支が原油価格や原材料の高騰を背景に貿易赤字の拡大とともに、2ヵ月連続の赤字となるなど、構造的に円高が進みにくい状況が定着しております。
世界的なコロナ感染が収束に向かいつつあり、主要各国が金融政策の正常化を急ぐ中、日本経済停滞によるデフレ脱却の遅れといったファンダメンタルズを背景に日銀の緩和政策の継続の流れが変わらない状況下、リスク回避の円買いは過去のことになりつつあるのが現状です。こうした動きを象徴している一つがスイス円での円安進行かもしれません。
過去、リスク回避 の流れが強まる際に、円買いとともにスイスフラン買いが優勢になる流れが続いていました。 しかし、ウクライナ戦争後の円とスイスフランの動きに低リスク通貨としての連動性が失われています。3/7にユーロが対スイスで1.0を下回り急落し、その後の反発は1.0400へ留まっています。
一方ドル円は、115円00銭から3/28の高値123円16銭まで上昇しています。2015年にスイス中銀が1ユーロ=1.20スイスフランの上 限を撤廃した「スイスショック」の際に、スイスフランが急騰し、スイス円は一時 155円に迫る水準まで円安が進行。こうした特殊要因を除くと現状のスイス円での円安進行 は「低リスク通貨」としてのスイスフランと円との違いを浮き彫りにしていると言えそうです。
ウクライナ情勢で浮き彫りとなりました
1)日本のエネルギーおよび食糧自給率が世界的な低水準にあること
2)貿易赤字、経常赤字といった双子の赤字からの脱却が難しくなるとの見方
3)日銀の緩和政策の継続とともに主要各国との金利差拡大
4)日銀は円安が日本経済にとってプラスとの認識を明確にしたこと
など、円は「安全通貨」であるとの神話が崩れかけており、一連の材料とともに円の適正価格がどの水準にあるのかを模索する流れが続いており、歯止めのかからない円安基調の継続が当面続くと思われます。
日本は、これまで財政黒字化を最優先に財政出動や減税を行わなかったことで低インフレを継続、それに伴い円の実質実効レートの低下につながったとの見方もあり、こうした認識のもと、政策転換を図ることが重要かもしれません。
今週4/1発表の米3月雇用統計に向けて125円86銭を目指す円安が加速するか?
米雇用統計 | 11月 | 12月 | 1月 | 2月 | 3月予想 |
就業者数 | 64.7万人 | 58.8万人 | 48.1万人 | 67.8万人 | 49.0万人 |
失業率 | 4.2% | 3.9% | 4.0% | 3.8% | 3.7% |
時間給賃金(前月比) | 0.4% | 0.5% | 0.6% | 0.0% | 0.4% |
時間給賃金(前月比) | 5.1% | 5.0% | 5.5% | 5.1% | 5.5% |
- ※出所:SBIリクイディティ・マーケット
3/4発表の米2月雇用統計では就業者数の増加や失業率の改善を確認するなど、米労働市場の強さを確認。一方、時間給賃金は1月から鈍化が確認されました。
しかし、3/15-16のFOMCで政策金利を0.25%引き上げ、その後もパウエルFRB議長をはじめ複数のFRB要人から一段の金融引き締めに前向きな発言が相次いで聞かれています。
先週、米債券市場では20年債利回りが30年債利回りを上回ったほか、5年債及び7年債利回りがいずれも10年債利回りを上回る、長短金利差逆転(逆イールド)が確認されたことで米長期金利の上昇が景気後退に陥る可能性を指摘する見方も聞かれました。
しかし、利上げ決定後も、NY株式市場の堅調地合いが続いていることに象徴されるように、NY連銀によると景気後退の前に10年債と3ヵ月物T-Billとの利回り差が逆転した際に景気減速に陥った例が過去数回にわたって起こった事象があり、FRBが景気後退の予測に使うのは10年物と3カ月物の利回り差にあるとされ、昨年末時点と比べ、利回りと格差は拡大しているのが現状です。パウエルFRB議長も優れたFRBスタッフ予測として3ヵ月物T-Bill利回りと18ヵ月先のスプレッドに言及したほか、FOMC後の会見で「米経済は力強く、金融引き締めに対応できる」と発言した根拠の一つかもしれません。
さらに、21日の講演でも「1965年、1984年、1994年の景気後退が金融引き締めによってもたらされたものではないことは明らかである」と利上げによる景気悪化への懸念を払拭。過去最高水準で推移する求人件数、さらに住宅ローン金利の上昇にもかかわらず、3/17に発表された2月住宅着工件数は前月比+6.8%と堅調を持続。インフレの要因は、供給制約ではなく、需要の強さであるとの認識がFRB内での共通した認識なのかもしれません。
そのため、今週末4/1発表の米雇用統計では、就業者数や失業率への注目はもちろん、前月鈍化傾向が確認された時間給賃金が再び上昇基調にあることが確認されれば、5月FOMCで0.50%の利上げ観測が一段と高まることにつながると思われます。
ウクライナ情勢を巡る不透明感は残るものの、米経済の強さやインフレ高進圧力は続くとの認識が強いことから、あらためて日米金利差拡大、日米景況感の違いとともに、日本経済のファンダメンタルズの脆弱性などを含め、ドル円は既に2016 年1月29日に付けた121円69銭を突破。それだけに、米3月雇用統計をきっかけに2015年6月5日に付けた125円86銭を目指して一段高となるか注目されます。
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