今年前半を振り返ると・・・
- ※出所:SBIリクイディティ・マーケット
(1)トルコリラはエルドアン大統領による度重なる中銀総裁の更迭や利下げ要求など大統領による中銀政策への牽制により、中銀の独立性や財政面での懸念のほか米国との関係や地政学リスクなどの問題も取り沙汰され対ドルでの最弱通貨となりました。
(2)ドル円は年初の103円台から取引を開始し、多くのエコノミストらが100円台前半への円高加速を予想したのに反して、6月30日には111円11銭まで円安が進行(7月2日には111円66銭まで)するなど、景気回復期待を背景にNY株式市場での主要3指数が史上最高値を更新するなどリスク選好の動きを反映する結果となりました。
また、FRBのテーパリング議論開始など金融政策正常化への道筋が見え始めたこともあり、米10年債利回りは一時1.77%台へ上昇するなど米長期金利の上昇が進んだことも円安の進行につながる一因となりました。
(3)米国ではバイデン政権が大規模な財政刺激策を発表するなど景気回復期待やインフレ加速を見込む「リフレトレード」が台頭しました。資源や資材などの供給不足などを背景に商品市況が上昇するなど、ブラジルレアルが対ドルで4.6%上昇したほか、南アランドも2.9%上昇するなど資源国通貨の上昇も顕著となりました。
こうした中、ブラジル中銀が3会合連続で利上げしたほか、カナダ中銀が4月の政策会合で緩和解除の可能性に言及した一方、豪中銀はECBとともに金融正常化に慎重な姿勢を継続したことで豪ドルは資源国通貨の中でもブラジルレアルやカナダドルとは一線を画し、対ドルでの上昇は一時的に留まり、下落に転じました。
昨年末から6月末までトルコリラ以外は円安が進行、年後半はどうなる?
- ※出所:SBIリクイディティ・マーケット
(1)一時1.77%台まで上昇した米10年債利回りが7月に入り1.30%割れまで低下しました。その要因として挙げられるのが大規模な景気刺激策による一時的な需要拡大効果が一巡することで、調整につながるのではとの思惑を背景にした米債券市場でのポジション調整です。
さらに変異株による感染再拡大が景気回復にブレーキを掛ける可能性などが考えられます。年末に向けて米長期金利は再度上昇し3月の1.77%を上回るのか、あるいは1.5%からの上昇は限定されるのかFRBの金融政策の行方が最大の焦点になりそうです。
(2)6月のFOMCではタカ派的なスタンスに傾き、想定される利上げ時期の前倒しが示唆されました。また、5月、6月の米消費者物価指数の大幅な上昇にもかかわらず、パウエルFRB議長は依然として物価上昇は一時的との姿勢を継続しました。
(3)FRBのインフレ目標を上回る物価上昇がいつまで続くのか、パウエルFRB議長の物価上昇は一時的との認識が否定されるタイミングが訪れるのかが焦点になりそうです。実際、財やサービス価格の上昇が続いており、今後は議長発言の微妙な変化を注視する必要があるかもしれません。8月26日から28日に開催されるジャクソンホールでのカンザスシティ連銀主催のシンポジウムがFRBの金融政策を予測する上で重要視されそうです。市場がテーパリング開始のタイミングを探っているだけにパウエルFRB議長の講演が注目されます。
さらに、米労働市場では求人件数が過去最高を記録する一方、9月まで継続される失業給付の追加加算により高賃金を求める人が多く、雇用統計での就業者数も予想以上の増加にはつながっていないのが現状で、こうした数値が9月以降に大きく変化するか、さらにFRBの金融政策がタカ派色を強めるのか注目されます。
市場では年内にもテーパリングを決定し、今秋から来年春先までにテーパリングを開始し、来年の秋あるいは再来年にも利上げといった大方のシナリオがどのように変化するのか年後半に向けた最大の注目になるかもしれません。
(4)FRBの政策とともにカナダ、NZ中銀が緩和策の終了に向けた方向を示す中、次に金融正常化を示唆すると思われる英中銀、さらに遅れてECBや豪中銀がどのタイミングで政策変更を示唆するのか、そのきっかけも合わせて注目されます。
こうした中で周回遅れという安定的な地位にある日銀の緩和継続が円安につながるのか、リスク回避の円高を加速させるのか注目されます。また、今秋の衆院選の結果のほか、ドイツの総選挙など政治的な動きも円やユーロの動向に影響を及ぼす可能性があり年後半の動向を占う上で注目すべき材料となりそうです。
(5)新興国通貨の上昇が続くのか、ブラジルや南アでの政局を巡る不透明感がレアルやランドに及ぼす影響が注目されます。
さらに減速が懸念される中国経済の行方も新興各国からの対中輸出を含め、国内産業にどの程度影響を及ぼすのか注目されます。
さらに、米長期金利の行方次第では新興国への資金流入の増減に影響を及ぼすだけに注目されます。一方、メキシコは米経済との影響を最も受け易い通貨であり、米国経済の動向が引き続きペソの行方を左右することになりそうです。
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