先週末、各メディアが揃ってバイデン候補が306人の選挙人を獲得し、トランプ大統領の獲得した232人を上回る過半数を獲得したと発表しました。こうした結果を受けてトランプ大統領の熱狂的な支持者ら1万人あまりが首都ワシントンで大統領選の不正行為に対する抗議デモを行いました。トランプ大統領は側近に対し、2024年の次期大統領選に立候補を表明すると伝えたと報じられています。

また、昨晩にはトランプ大統領が「バイデン候補が勝利したのは、選挙の不正があったため」とツイートしました。不正があったとしたものの、バイデン候補の勝利に初めて言及しました。しかし、依然として敗北を認めず、我々は勝利する、一切敗北を認めていない、との姿勢を貫いている一方、不正選挙を訴えて各州で訴訟を提起しましたが、具体的な証拠を示せず、次々と敗訴しているのが現状です。

議会下院選（定数435）では民主党の現職議員が共和党の擁立した女性候補などを中心に相次いで敗退しました。改選前の232議席から議席を減らし、219議席と過半数ギリギリを確保するに留まりました。また、議会上院（定数100）では共和党が50を確保、民主党はジョージア州での2議席を巡る1月5日の決選投票で2議席を勝利すれば50対50となり、上院議長を務めるハリス副大統領が1票の投票権を持つことから、上院でも辛うじて過半数を確保することができます。民主党が政権、上下両院での過半数を確保すればバイデン政権の政策の遂行がスムーズに行われることになると見られます。現状では依然として共和党が上院での過半数を確保すると見る政権と議会との「ねじれ」を前提にしたNY株式市場の上昇につながっているだけに1月5日の決選投票の結果が注目されています。
ジョージア州の大統領選はバイデン候補が49.5%の得票率を獲得したのに対し、トランプ大統領も49.2%と両社の票差は僅か1.4万票あまりです。議会下院選ではジョージア州の14選挙区で共和党が8議席、民主党は6議席に留まったほか、決選投票となる上院選では現職のパデュー共和党候補がオソフ民主党候補を8.6万票余りリードしました。もう１議席の上院特別選挙では民主党のウォーノック候補が現職のレフラー共和党候補を34.4万票をリードしました。いずれの2議席も共和党が決選投票で勝利を収めるか注目されます。

バイデン候補は大統領選を前にした公約でトランプ政権の政策の多くを逆転させると主張、オバマケア、環境対策、感染対策などでの違いを訴えてきました。しかし、トランプ政権が2017年12月に成立させて税制改革法に盛り込まれているOpportunity Zone(オポチュウ二ティーゾーン＝税制上優遇し、キャピタルゲインの低所得地域への再投資を促進）を引き続き継続する意向を示唆しました。
さらに、16日（日本時間17日午前3時45分）、バイデン候補はコロナ後の景気回復プランを公表します。バイデン候補は共和党のマコネル上院院内総務との協力を経て、12月中の追加景気対策をまとめたい考えを示すと思われるほか、クリーンエネルギーやインフラに対する2兆ドル規模の投資、さらには7,000億ドル相当の米製品の優先的購入、高齢者向け、子育て世帯に向け7,750億規模の支援策が盛り込まれると見られています。
こうした発表が1月5日のジョージア州の上院議会選の決選投票に影響を及ぼし、政権・上下両院ともに民主党が過半数を占める「ねじれ」からの脱却につながるか、残された1ヵ月半にバイデン候補の主張によって米経済の回復や分断の拡大阻止などへの期待を高めることにつながるか注目されます。